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未来企業探訪 Vol.11

社員の成長を促し、企業文化を育てる
株式会社シンクスマイル【前編】

掲載日:2017/4/14

社員の成長を促し、企業文化を育てる 株式会社シンクスマイル

「したことない。をへらす」を経営理念に掲げ、アプリやクラウドサービスなどを手がけている会社が「シンクスマイル」だ。CINQSMILE(シンクスマイル)という社名は、cinqサンク(フランス語の“5”)とsmile(笑顔)を組み合わせたもの。Cinqをシンク(think=考える)と読ませることで、「自分」「家族」「仲間」「顧客」「世界」の5つの笑顔を考える会社、という思いが込められている。さまざまなサービスを提供しているシンクスマイルの代表取締役・新子明希氏に、同社が何を目指しどんなサービスを手がけてきたのか、話を伺った。

  • 会社概要
  • 株式会社シンクスマイル「したことない。をへらす」という経営理念に基づき、日本初のお試しサイト「torakore(トラコレ)」の運営、リピーターファン創造ツール「Ziriri(ジリリ)」の販売など、ユニークなサービスを提供している。理念浸透・人材育成・インナーブランディングツール「HoooP(フープ)」はおよそ1000社に導入され、2017年3月からはHoooPをさらに進化させたシステム「RECOG(レコグ)」の販売を開始して注目を集めている。

    ▼シンクスマイルのホームページはこちら▼
    https://5smile.com/

いいチームが育つ、わくわくするオフィス

 東京・五反田にあるシンクスマイルの本社は、ドラマの撮影にも使われるほどおしゃれなオフィス。入り口の広々としたフリースペースにはソファやテーブルが配され、バーカウンターの奥にはウイスキーや焼酎のボトルが並び、スクリーンには映画が映し出されている。オフィススペースの一角にはお茶の間を思わせる畳敷きのスペースがあり、壁には「したことない。をへらす」と迫力ある筆文字が踊る。

 「したことない。をへらす」はシンクスマイルが創業後、1年かけて練り上げた経営理念だ。「“何のために働いているか”をつきつめていくと、“何のために生きているのか”を考えるようになった。そのころ、ほとんどの人が亡くなるときに“やった後悔よりやらなかった後悔のほうが大きい”と聞いて、これだ!と思いました」。

 後悔せずに生き抜くためには、いろいろなことに挑戦できる仕組みを作りたい。その思いを言葉にしたのが「したことない。をへらす」だった。「経営理念を決めたらすべてがうまく回り始めました」と新子さんは胸を張る。方向性が定まったことで経営理念を軸にさまざまなアイデアが出るようになり、「したことない。を減らしたいんです!」というチャレンジングな人材が応募してくるようになるなど、好循環が生まれた。

 さらに、新子さんは創業10年を経て「いいサービスはいいチームからしか生まれない」と気づいた。「いいチームはいい企業文化によって生まれる。そして社員同士のふだんのコミュニケーションが企業文化を決定づける」――つまり会社の価値観を社員間で共有することが大切だと考えた新子さん。さっそく4万人の社員全員がお客さまを喜ばせることを楽しんでいる「ザ・リッツカールトン」に話を聞きに行ったそうだ。

始終楽しそうに話す新子さんからは、仕事の面白さが伝わる

始終楽しそうに話す新子さんからは、仕事の面白さが伝わる

モチベーションを高めるツールを開発

 ザ・リッツカールトンでは「クレド」という10の行動指針を作り、社員に配布している。そこまではよく聞く話だが、ザ・リッツカールトンでのクレドの浸透ぶりに新子さんは目を見張ったという。「毎朝1時間朝礼を行い、“昨日の××さんの接客はクレドの8番と一致していた。素晴らしい”と社員を称える。違反には触れず、クレドに則った行動を徹底して褒める。それを100年続けることで、あんな素晴らしい会社になることが分かりました」。

 同じ効果を得られる手法として考え出したのがゲームスタイルだった。会社の価値観を表す10の行動指針をバッジで表現し、社員同士がお互いをほめ、評価してバッジを送りあう。その一連の流れをSNSで行うシステムを開発し、社内で導入したのだ。褒められて嬉しいだけでなく努力や強みが可視化され、ますますモチベーションが高まる仕組みだ。テレビなどで取り上げられるたびに「使いたい」という問い合わせが殺到したため、ポジティブなコミュニケーションの見える化を実現するSNSサービス「HoooP(フープ)」を開発し、2年前から販売を始めた。

 しかし、日本社会は「実績」が重視されるため、売り上げが伸びるまでには時間がかかった。営業に行くと「そのサービス、どこの企業が導入しているの?」と必ず聞かれる。しかし、苦戦する中でも徹底していたのは、新子さん流営業ルール「理と情」。サービスの良さをストーリーで伝え(理屈の部分)、共感を得ることで相手の心をつかめば(情の部分)、信頼を得ることができる。「熱血」「向上心」「アンテナ(気を利かす)」などシンクスマイルの10の行動指針を常に意識しできるよう、社内研修で社員の意識を高めた。

 そうした苦労が実り、HoooPは徐々に大企業にも採用されるようになった。2年の間に1000社に導入され、2017年にはさらに進化したサービス「RECOG(レコグ)」として世に送り出された。Recognition(承認する、称賛する)を意味するサービスで、ひとりひとりの活躍を見える化し、 職場のチームワークや従業員エンゲージメントを高めることができるツールだ。

左が「HoooP」、右が「RECOG」の画面

左が「HoooP」、右が「RECOG」の画面

強みの可視化で、楽しく働く人を増やす

 HoooPを導入した1000社で交わされた150万回のコミュニケーションを解析し、同志社大学教授の協力も得てビジネスパーソンの特性を6つに集約した。それは、アクティブ(主体的)、アイデア、タフ(責任を引き受けてやり遂げる)、スピード、ホスピタリティ(思いやり)、チームワークの6つ。RECOGは一緒に働くチームの中で、「信頼」「尊敬」「感謝」などの感情も交え、この6つの特性でお互いを称賛・評価し合う仕組みだ。

 RECOGに積み上げられたパーソナルデータは、自分のキャラクターを証明するツールにもなる。「私の強みはホスピタリティだ」と思っていても、周囲からは「彼(彼女)は仕事が速い」と評価されていることもある。自分の好きなことと強みを勘違いしている人もいるし、そもそもビジネスマンとしての強みは、自己評価より他者評価のほうが正しいものだ。

 たとえば同社に新卒で入社した女性社員は、入社30カ月で1000回称賛されたという。「入社して以来、2年半、毎日褒められている状態です。そこで分かったのは、彼女は気が利くうえに仕事が早いということ。そうすると、本人が“私は仕事の速さでチームに貢献している”と自覚して自走し始めるんです」。役に立っているという実感がやりがいや自信になり、強みをさらに磨くようになった。社員が自分から率先して強みを発揮できるようになれば、本人にとっても会社にとっても、ひいては社会にもプラスに働き、好循環が生まれる。

 開発への思いを、新子さんはこう振り返る。「“仕事”という言葉をwebで検索するとミス、ストレス、辛い、辞めたいなど目を覆いたくなるようなネガティブな言葉が並びます。僕たちはずっと楽しく働いてきたから、この状況をRECOGで変えたいと思ったんです」。楽しく生き、働く人を増やすための同社の取り組みは、歩を止めることがない。シンクスマイルの一歩一歩がこれからも日本に笑顔を広げていくだろう。

オフィスの壁にはシンクスマイルの行動指針が

オフィスの壁には行動指針が可視化されている

日本の閉塞した職場環境、ネガティブな働き方に一石を投じ続ける新子さん。
後編では、そんな新子さんの高校時代から現在までの生き方、足跡に迫ります。

vol.11 後編へ続く

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