クラウド化の事例を10個まとめました!働き方改革への貢献などのメリットも解説

クラウド化の事例を10個まとめました!働き方改革への貢献などのメリットも解説

目次

「クラウド化を検討しているが、どのような事例があるのかな」
「メリットを具体的に知りたい」

クラウド化を検討している方の中には、上記のような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。 クラウド化の事例は、官民問わずあります。事例を確認するとわかりますが、クラウド化することで、業務の効率化や生産性の向上などを実現できます。また、クラウドサービスは他システムと連携させて、データの共有や活用ができるのも特徴です。自社の課題解決や改善にも役立つでしょう。

ただし、自社に最適な形でクラウド化を進めるには、クラウドに対する理解を深めることが大切です。各事例を通して、クラウド化で実現できることを把握しましょう。

本記事では、一般企業および自治体のクラウド化の事例・クラウド化させるメリット・クラウド化に関するよくある質問を解説いたします。クラウド化の効果や成功事例を知りたい方は、ぜひご参考ください。

クラウド化の事例【一般企業編】

一般企業におけるクラウド化の事例として、以下を解説いたします。

  • クラウド会計への移行
  • クラウド共有による⽣産性向上

クラウド会計への移行

クラウド会計へ移行し、会計業務の自動化や効率化に役立てられている事例があります。中小企業庁が中小企業へ聞き取り調査を行った結果、クラウド会計の利用について以下の回答がありました。

当社はクラウドの会計システムに移行したが、預金データと連動出来ており、その仕様は非常に使いやすい。現在、各金融機関とのAPI連携を進めているようだが、セキュリティ面を担保しながら運用出来れば非常に手間が減ると思われる。

引用元:中小企業庁|中小企業のデジタル化に向けて|32ページ目(2024年2月19日時点)

上記回答を行った企業では、クラウド会計システムとインターネットバンキングを連携させています。クラウド会計は、主に売上管理や請求書の発行・受領などの会計業務全般ができるものです。インターネットバンキングと連携させることで預金データをリアルタイムで把握できるため、収支管理がしやすくなります。

なお、上記の事例ではセキュリティ面の懸念が指摘されています。企業の経営を支えるシステムのため、不正アクセスや情報漏洩などへのセキュリティ対策が必要です。クラウド会計システムを導入する際には、機能だけではなくセキュリティ面も考慮しましょう。

クラウド共有による⽣産性向上

クラウド共有によって生産性向上を実現した事例もあります。東京都に拠点を置く建設関係の企業ではクラウド共有システムの活用により以下を実現しています。

「⼯事情報のクラウド共有機能」については、本社・現場職員間での最新版の図⾯を共有でき購買発注業務の⼿戻りが削減できたこと。
また、施⼯管理体制台帳の作成においては下請業者との共有により時間削減と⼀部ペーパーレス化が可能となった。
「LINEWORKS」については、本社・現場職員間でスマホによる情報共有(社内資料・写真・図⾯等)が即座に実施できることで業務の効率化が図れた。
また、BCPの対応策として年に数回模擬訓練を実施し、緊急時において全社員の安否確認等の把握することが可能となった。

引用元:国土交通省|建設業における働き方改革推進のための事例集|22ページ目(2024年2月19日時点)

※LINEWORKSは、LINE株式会社およびLINE WORKS株式会社の商標または登録商標です。

上記の事例では、クラウド共有システムとともに施工管理アプリを活用しています。この企業では図面の修正が多い場合に、最新版の図面がわからなくなる問題を抱えていました。

そこで、施工管理アプリで現場の工事情報を管理し、その情報をクラウド共有システムで共有することで最新版の図面を確認できるようにしました。システム上で適切に図面を更新することで、最新版の図面の共有が容易になり、図面間違いなどといったミスの防止が可能です。また、図面に基づいた購買発注業務も正確に行えるようになり、図面間違いによる手戻りの削減にもつながっています。

さらに、スマホでの情報共有によって誰もがすぐに社内資料や図面を確認できます。情報共有のスムーズ化を実現し、業務の効率化にもつながっているのです。

このように、クラウド共有システムではリアルタイムでの迅速な情報共有ができます。ビジネスにおいて、情報は日常業務や経営判断などあらゆる場面で必要なものです。クラウドサービスの活用により、正確かつ迅速な情報共有を実現できるでしょう。

クラウド化の事例【自治体編】

自治体におけるクラウド化の事例として、以下の5つを解説いたします。

  • 静岡県富士市・富士宮市
  • 愛知県岡崎市・豊橋市
  • 大阪府高石市・忠岡町・田尻町
  • 山口県4市1町自治体クラウド
  • 佐賀県市町基幹情報システム

静岡県富士市・富士宮市

静岡県富士市・富士宮市が行政事務のクラウド化を行った事例があります。富士市・富士宮市では、独自システムを利用していたことによりさまざまな課題を抱えていました。その課題と解決手段として考案された内容は以下になります。


富士市・富士宮市の課題課題解決手段

システム側面

汎用機利用によるシステム改修時のコストと人材

標準パッケージへの移行・スリム化

業務側面

データ整合性の確保とシステム連携

情報化コンサルティング

運用側面

システム乱立による運用保守の複雑化

運用維持のアウトソーシング

参考元:内閣府|富士市及び富士宮市共同電算化事業~ 自治体クラウドの導入 ~|5ページ目(2024年2月19日時点)

上記の課題を解決し、コスト削減やシステムの最適化などを目指してクラウド化を進めています。システムも全体的に見直しました。これによりシステムのパッケージ化・スリム化だけではなく、システムの乱立も防げます。

システム運用体制の見直しでは、外部の事業者も組み込んだ体制を考え、保守・運用や故障時の対応なども明確にしています。保守・運用を外部の専門事業者に委託することで、行政職員の負担軽減や専門知識をもとにした適切な運用が可能です。

クラウド化によるシステムの最適化は、住民情報や福祉関係を扱う基幹系システムや公務員の人事を管理する内部情報システムで利用されています。幅広い業務のクラウド化を進め、使いやすいシステムを、コストを抑えて使用できる体制を構築しているのです。

愛知県岡崎市・豊橋市

愛知県岡崎市・豊橋市では情報システムを共同化する取り組みが行われました。法改正対応のための改修によるシステムの複雑化や、保守・運用費の高騰などの問題を抱えていました。市職員ではシステム開発や運用ができない、市の財政が逼迫しているなどの問題も相まって、コスト削減や業務改善のためのシステムの見直しを迫られていたのです。

そこで、以下の問題と解決策に基づき、システムの共同化を行いました。

【問題】

①目的の共有化。実務面、その他の問題(共同化方式、業者選定、契約等)。
②システム稼働のスケジュールの統一。
③実現に向けた推進体制の構築。
④共同化の相手との距離等(地理、コミュニケーション)。

【解決策】

①課題解決の実効性について事前の効果測定(費用対効果等)を実施。
②実績のあるパッケージシステムを選定し、カスタマイズを極小化、期間短縮。
③業務主管課に管理部門を設置し共同化の推進体制を構築。ベンダーにも共同化調整。
④Web会議システム、情報共有ツールの活用。

引用元:内閣府|【愛知県岡崎市・豊橋市】中核市における情報システムの共同化(2024年2月19日時点)

岡崎市と豊橋市は隣接しておらず、地理的に離れています。物理的な距離が離れていることもあり、システムの共有化にはスケジュール調整やコミュニケーションなどの連携に問題がありました。

そこで、システム共有化を推進する体制を構築し、システムの導入目的の共有や方法の整理を行います。さらに、Web会議や情報共有ツールなどを活用して距離が離れていてもスムーズな連携を実現しました。

また、導入するシステムは実績あるパッケージシステムを導入している点もこの事例の特徴です。極力カスタマイズしないことで、導入までにかかる期間を短縮しました。

こうしたクラウド化により、システム運用にかかるコスト削減や業務改善につなげています。

大阪府高石市・忠岡町・田尻町

大阪府の高石市・忠岡町・田尻町が災害リスクに備えて基幹業務システムを共同化した事例もあります。高石市・忠岡町・田尻町はそれぞれ地理的に離れている自治体です。いずれも大阪湾に面した自治体であり、南海トラフ巨大地震が起これば地震だけではなく津波のリスクもあります。そこで、災害に強い街作りの一環として自治体同士が連携して基幹系業務システムを共同化する取り組みが行われました。

共同化により、以下の効果が得られています。

【災害に強いシステム】

・安全なデータセンターを利用することにより、重要情報の保全性が向上。大規模災害時等の業務継続性を確保し、迅速な復旧・復興作業の一助となるシステム構築を実現。

・データセンターを関東(メイン)と西日本(サブ)に配置し、災害リスクを分散。

引用元:内閣府|【大阪府内3市町】中心市主導型の情報システムの共同化(2024年2月19日時点)

クラウドサービスは、自社ではサーバーを設置する必要がありません。クラウドサービスのための物理的なサーバーはデータセンターに設置されています。自治体の庁舎にはサーバーがないため、万が一庁舎が被災しても重要なデータが失われることはありません。

ただし、データセンターが被災するおそれもあります。そのため、地理的に距離が離れている関東と西日本にそれぞれ配置することで、災害リスクの分散を実現しています。

このように、クラウド化によって災害時に早期復旧できるシステムを構築しているのです。

山口県4市1町自治体クラウド

山口県の4市1町が自治体クラウドを共有利用した事例もあります。この取り組みに参加した自治体は以下の5つです。

  • 周南市
  • 下松市
  • 光市
  • 柳井市
  • 阿武町

このうち、周南市は以下の背景や課題を抱えていたことから自治体クラウドの共有利用に参加しました。

(1) 厳しい財政運営、情報システム関係経費負担増と人員確保
(2) 地震・火災等に対する業務継続性
(3) 新たな市民サービス提供の要請
(4) 老朽化、耐震性の低い庁舎の建て替え

参考元: 内閣府|山口県4市1町自治体クラウドについて|3ページ目(2024年2月19日時点)

情報システム関係の経費負担の増加や、災害時にも業務が継続できる体制の構築などの課題解決のために自治体クラウドに参加しました。また、災害時の相互応援体制などを検討し、自治体クラウドのさらなる有効活用を目指しています。

佐賀県市町基幹情報システム

佐賀県が主導して市町基幹情報システムを導入した事例もあります。先の事例では市や町単位の自治体でしたが、佐賀県では県が主導してクラウド化を進めました。県が主導した背景にあったのは、財政状況が厳しい中での情報システムコストの高止まりや住民サービス・業務効率の向上が進んでいないという課題です。そこで全市町で情報システムを共同利用し、コスト削減や業務の効率化などを目指しました。

この事例における効果は以下の通りです。

①南部地区自治体クラウド(武雄市、鹿島市、嬉野市、大町町、江北町、白石町)
 基幹系:40%削減(▲約 6 億 5,000 万円)

②北部地区自治体クラウド(唐津市、玄海町)
 基幹系:51%削減(▲約 6 億 7,000 万円)、内部系:55%削減(▲約 7,500 万円)
・手続きに要する住民の待ち時間が約 31%の削減、職員の業務処理時間が約 30%の削減
・ライフサイクルコスト(稼働後 10 年間の費用総計)が約 27%の削減(※導入一時費用をすべて含んだ場合)

引用元:内閣府|【佐賀県市町基幹情報システム】県主導による情報システムのクラウド化(2024年2月19日時点)

この事例では県南部と北部に分けて自治体クラウドを導入しています。各自治体のシステム更新時期などを考慮しているため参加自治体数は限られますが、どちらの地区でも6億円以上のコスト削減を実現しました。

さらに、北部では職員の業務処理時間の短縮も実現しており、それが住民の手続き時の待ち時間短縮にもつながっています。業務効率化と住民サービスの利便性向上を実現しているのです。

基幹システムなどをクラウド化させるメリット

基幹システムなどをクラウド化させるメリットとして、主に以下の2つが挙げられます。

  • 働き方改革に役立つ
  • 導入しやすい

働き方改革に役立つ

基幹システムをクラウド化すると、働き方改革に役立てられます。業務の自動化や効率化ができるだけではなく、リモートワークの推進なども可能です。

クラウド化すれば、業務に関わる情報を一元管理できます。必要な情報へのアクセスが簡単になるため、データや資料を探す手間を省けます。さらに、関連する業務のデータを紐付けておけば、関係部署へ出向いて直接確認したり紙資料を探したりする手間も省けるでしょう。

例えば、会計と受発注に関するデータを紐付けておけば、1つの受注に対する経費や売上をまとめて管理できるでしょう。業務の自動化や効率化ができれば、社員の負担を減らし、生産性向上にもつながります。

さらに、クラウドサービスはインターネットがあればどこでもアクセスできるため、自宅でのリモートワークでも利用可能です。働き方の選択肢が増え、リモートワークの推進もできるでしょう。

導入しやすい

導入しやすい点もクラウド化におけるメリットです。クラウドサービスはインターネットにつながる環境があれば利用でき、環境構築やシステム開発などが必要ありません。

従来のオンプレミス型では、自社にサーバーを設置したり独自システムを開発したりする必要がありました。機器やシステム開発などの費用が発生するだけでなく、導入完了までに長い期間がかかる傾向にあります。そのため、導入時には事前に費用を確保したり、導入計画の立案から実際に導入完了するまでの長期的なスケジュールを考えたりする必要がありました。

クラウドサービスはインターネットにつながる環境であれば、契約後すぐに利用できます。導入時にはサーバーなどの機器を購入する必要はなく、コストも大幅に抑えられるでしょう。また、システムはパッケージ化されているため開発する必要もありません。サービスによってはオプションで機能を追加したりセキュリティ対策を強化したりもできるため、自社に最適なシステムにカスタマイズできるでしょう。

ただし、あくまでも提供されている機能内でのカスタマイズです。サービスの基本機能やオプションにない機能は追加できません。導入時には自社が希望する機能が備わっているか、オプションでの追加ができるかなどを確認しましょう。

クラウド化させる際によくある質問

クラウド化させる際によくある質問を解説いたします。

  • クラウド化とは何ですか?
  • クラウドの種類を教えてください

クラウド化とは何ですか?

クラウド化とは、自社の情報を管理している独自システムやサーバーを、インターネット経由で利用できるサービスへ移行することを指します。クラウド化すると、主に以下を実現できます。

  • システムの導入・管理コストや手間の削減
  • 業務の効率化・自動化
  • 業務データの一元管理
  • 災害時のデータ保全

クラウドサービスは、クラウドサービス提供事業者が提供するパッケージ化されたシステムを利用します。先述したように、インターネットにつながる環境であれば利用できるため、短期間・低コストでの導入が可能です。

システムの保守やトラブル発生時の対応はクラウドサービス提供事業者が行うため、自社で行う必要がありません。これにより、自社独自のシステムやサーバーの管理における負担を軽減できるでしょう。

また、システム同士を連携させてデータを一元的に管理できる点も特徴です。必要な情報を必要なタイミングで活用できるため、業務の効率化ができます。サービスによってはデータ内容に基づき自動処理も可能です。

さらに、自社内にサーバーを設置しないため、自社が自然災害や火災などに被災した場合でもクラウド上のデータが保全されます。経営に必要なデータが守られることにより、被災後の迅速な復旧が可能です。

このように、クラウド化にはさまざまなメリットがあります。自社の課題解決やコスト削減などに役立てられるでしょう。

なおクラウド化の詳細は以下の記事をご参考ください。
クラウド化とは?オンプレミス型との違い・メリット・デメリット・導入事例を解説

クラウドの種類を教えてください

クラウドには主に以下の3種類があります。

クラウドの種類特徴

パブリッククラウド

企業・個人を問わずオープンに提供されているクラウド

プライベートクラウド

特定の企業が占有するクラウド

ハイブリッドクラウド

異なる種類のクラウドの組み合わせ

パブリッククラウドは、企業・個人などのユーザーを問わず提供されているクラウドのことです。ストレージやネットワーク回線などのリソースを共有しており、クラウドサービス提供事業者側での管理をしやすく、低コストでのサービス提供ができます。ユーザー側のコストや管理面での負担も軽減できる一方、トラブル対応などはクラウドサービス提供事業者の対応を待つ必要があります。

プライベートクラウドは特定の企業が占有するクラウドのことです。自社に最適なクラウド環境を構築できます。ただし管理も自社で行うため、管理のためのコストや人材の確保も必要です。

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドやプライベートクラウドといった異なる種類のクラウドを組み合わせて利用することを指します。異なるクラウドのそれぞれのメリットや用途に合わせ、柔軟にクラウド環境を構築できます。ただし、クラウドの種類ごとに必要なコストや管理項目などが異なるため、管理が複雑化する可能性がある点に注意が必要です。

なお、クラウドサービスには以下のようなサービス形態があります。

サービス形態特徴

SaaS(Software as a Service)

アプリケーションやソフトウェアを提供

PaaS(Platform as a Service)

アプリケーションやソフトウェアの開発に必要な環境を提供

IaaS(Infrastructure as a Service)

仮想ハードウェアやネットワークなどのインフラを提供

SaaSは、クラウドサービス提供事業者がインターネット経由で提供するアプリケーションやソフトウェアを利用できるサービスです。システムがパッケージ化されており、提供される機能内で活用します。

PaaSは、インターネット経由で開発環境を提供するサービスです。アプリケーションやソフトウェアを開発するには、OSやネットワークなどが必要です。こうした開発環境をセットで提供するサービスのため、すぐに開発を始められます。

IaaSは、ITインフラをインターネット経由で提供するサービスです。物理的な機器を購入することなく、自社に最適なインフラ環境の整備が可能です。

クラウドの種類とクラウドサービスの形態は混同しやすいですが、厳密には異なりますのでご注意ください。

まとめ

ここまでクラウド化の事例を解説してきました。 クラウド化すれば情報の一元管理や業務の効率化が可能です。導入コストを抑えられるため、システム管理にかかるコストの削減にもつながるでしょう。また、インターネットにつながれば場所や端末にかかわらず利用できるため、働き方改革にも役立ちます。

クラウドサービスを有効活用するには、自社に必要な機能や性能が備わったサービスを選択することが大切です。クラウド化によって実現したいことや欲しい機能などを整理したうえで、自社に最適なクラウドサービスを選択しましょう。クラウド化にお悩みの方は、ぜひ当社へご相談ください。

残してきた実績

設立から48年。
大切なものにフォーカスしてきたからこその実績があります。
公共・民間ともに多数の実績を残してきました。

年間プロジェクト数

500PJ

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