乳牛管理のIT化で、アニマルウェルフェアを目指す
目次
はじめに: 「美味しい」だけでなく「乳牛にも優しい」牛乳生産を目指して
当社は、株式会社イヴケア(以下「イヴケア」)、国立大学法人滋賀大学(以下「滋賀大学」)、有限会社藤井牧場(以下「藤井牧場」)と、乳牛のストレス評価および管理システムの開発によるアニマルウェルフェアに資する牧場経営に向けて、産学連携の4者共同研究(以下「本共同研究」)を開始しました。
背景:家畜のストレスや疾病を減らす重要性
アニマルウェルフェアとは「動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態*¹」とされており、日本では農林水産省より、快適な飼育環境下で家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であるという指針が提示されています。
アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼育環境を構築し、家畜のストレスや疫病を減らすことは、安全・安心な畜産物の生産につながるだけではなく、生産者にとっても治療費等のコスト削減や生産性の向上につながることとなります。
我々はこの指針に賛同し、「美味しい」だけでなく「乳牛にも優しい」牛乳の生産および生産環境の構築による新たな価値創造を目指します。
(*¹)国際獣疫事務局(OIE、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関)の勧告
内容:“血を抜かない”乳汁のストレス評価実現に向けて
本共同研究のファーストステップとして、イヴケアの「乳汁中のストレス関連ホルモンの定量分析技術」を活用し、乳汁中のストレスホルモンの濃度が、乳牛の日常的なストレス評価の指標となる可能性について検討を行います。
現在、乳牛のストレスを評価する方法として、血液中のストレスホルモン濃度を測定する技術が挙げられますが、採血は乳牛への負担が大きく、日常的なストレスの指標として、牧場経営者が活用することは難しいと考えられています。
乳汁中からストレス関連ホルモンを分析することを証明した研究はありますが、血中の同ホルモンとの相関性は安定的ではなく、どのようなストレスを反映しているのかは明らかにされていません。
本共同研究では、乳汁中のストレス関連ホルモンを定量的に測定し、血液中の同ホルモン濃度との相関性を含めて、複数の指標との関連性を調査することで、乳汁中のストレス関連ホルモンの濃度が日常的なストレス評価のツールとなる可能性を探します。
その中で我々は、アニマルウェルフェアを評価するべく、①生産者の経験的評価、②動物行動学に基づく家畜の行動指標の評価、③生理学・生化学の知見に基づく自律神経やホルモン分析によるストレス評価、という3つの重要項目をあげました。
これらの項目のうち、4者の役割分担として、生産者の経験的評価および動物行動学に基づく行動評価は藤井牧場が実施、生理学・生化学の知見に基づく自律神経やホルモン分析によるストレス評価はイヴケア・滋賀大学が実施、3つの評価項目の統合的な結果のシステム化および評価のIoT化を当社が実施します。
期待:乳牛に優しい生産環境の構築
本共同研究が進むことで、乳牛のストレスを最小限にしながら、乳牛のストレスを評価することができるようになり、「乳牛に優しい」かつ「より美味しい」牛乳の生産の実現が期待されます。
また、当社においては、今まで培ってきたITの知見を活用し、産業イノベーションにも繋げていけるよう挑戦の幅を広げてまいります。
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