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【日本初】フォーカスシステムズとイノカ、オフィス環境でサンゴの複数コロニー同時産卵に成功〜サンゴ産卵の共同研究にIoT水槽管理システム“MONIQUA”を活用〜
株式会社フォーカスシステムズ(東京都品川区、代表取締役社長:森啓一、以下「フォーカスシステムズ」)と株式会社イノカ(東京都文京区、代表取締役:高倉葉太、以下「イノカ」)は、2023年4月にフォーカスシステムズの本社ビル内に設置した閉鎖水槽内で、共同で進めてきたIoTを活用したサンゴ産卵実験に成功しました。本実験では、2025年4月28日より2020年の沖縄県海域の水温データ*¹と同期させることで、2025年6月4日・6月5日・6月7日に、石垣島産のウスエダミドリイシ(Acropora tenuis)の複数コロニーでの産卵を同時に確認できました。
人工環境下でのウスエダミドリイシの複数コロニー同時産卵の成功は日本初です。(イノカ調べ)
この成果は、20年後には70~90%が消滅すると言われているサンゴ礁を対象に、都市部での研究の可能性を広げる画期的な一歩です。
サンゴの生態・胚発生*²・定着の研究において産卵実験は極めて重要ですが、サンゴは非常に繊細な生き物で、人工環境下での産卵実験は困難とされています。
IoT水槽管理システム「MONIQUA」を活用したサンゴの研究が進むことで、今までサンゴ礁が近くにある場所で行われていたサンゴの卵の研究が、都市部のオフィスや学校等、様々な場所で可能となり、サンゴの基礎研究が大きく進むと共にサンゴ保全に寄与すると考えられます。
<ウスエダミドリイシ産卵の様子>
(*¹)琉球大学 熱帯生物圏研究センター 波利井佐紀 教授 提供
(*²)受精卵から成体または幼生になるまでの多細胞生物の発生過程
サンゴ産卵実験の概要
フォーカスシステムズがサンゴ保全と環境啓発の意義に賛同し、イノカと共同でサンゴの人工産卵実験に取組んでいます。
本実験では、イノカ独自の環境移送技術を用いてサンゴ礁生態系の環境を水槽内に再現し、沖縄県瀬底島の過去の海水温データを参考に、IoT水槽管理システム「MONIQUA」を用いて実際の海で産卵が行われている時期の水温変化を人工的に再現・管理をしてきました。その結果、2025年6月4日・6月5日・6月7日に石垣島産のウスエダミドリイシの産卵を確認いたしました。
産卵後の取組みについて
産卵したサンゴの卵や幼生の成長過程を詳細に観察し、サンゴの繁殖メカニズムの解明を目指すと共に、都市環境下でのサンゴ飼育・研究のノウハウを蓄積し、将来的には教育機関や研究機関への技術展開も検討していきます。
今回はあらかじめ卵を持ったサンゴの産卵に挑戦しましたが、次は卵を保有していない状態からの産卵実験に挑戦していく考えです。
更に、「MONIQUA」のアップデートを通じて、場所にとらわれず、サンゴの産卵に挑戦できる環境の構築を目指します。また、水温をはじめとした閉鎖環境を繊細にコントロールできる本技術を、養殖場等、サンゴ以外へも展開してまいります。
<産卵成功時の様子>
サンゴと閉鎖環境下でのサンゴ研究の意義について
サンゴは、約4億年前に誕生し、熱帯地域を中心に生息している動物です。生物多様性において非常に重要な存在であり、海の表面積のわずか0.2%に過ぎないサンゴ礁海域に、海洋生物の25%が暮らしています。また、サンゴは人間の社会生活を支えるうえで必要な、護岸効果や漁場の提供、建築材料や生活の道具の材料としての利用に加え、近年では医薬品への活用も期待されています。
生物多様性の担保や環境保全から市場経済や社会生活に必要不可欠なサンゴは、年間で推定3,750億ドル(日本円で約43兆円)以上の経済価値があると言われています。*³また、日本は、世界で800種類存在するサンゴのうち約450種類が生息しており*⁴、領海が領土の12倍にもなる海洋大国です。
一方で、20年後には気候変動に伴う海水温の上昇によりサンゴ礁の70~90%が消滅する可能性が高いと言われており、海の生物多様性やそこからうまれる経済価値を守るためにサンゴ礁の保全は最重要課題の一つとなっています。*⁵
閉鎖環境下でのサンゴの産卵実験は、サンゴの産卵・胚発生・定着といった初期ライフサイクルの研究を場所にとらわれず可能にするため、海洋生物多様性の保全や研究への重要な貢献となります。
(*³)IUCN(国際自然保護連合) Coral Reefs
https://www.iucn.org/theme/marine-and-polar/get-involved/coral-reefs?fbclid=IwAR2x9LnMAHTRNr2BGmlO364w2ePrkgA_sovBts_cziMI8L4rLdSz88Du6_8
(*⁴)環境省 日本のサンゴ礁1-1 日本の造礁サンゴ類
https://www.env.go.jp/nature/biodic/coralreefs/reference/mokuji.html
(*⁵)国連気候変動に関する政府間パネル (IPCC = Intergovernmental Panel on Climate Change)Global Warming of 1.5°C (2018), p8. B.4.2
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/sites/2/2019/06/SR15_Full_Report_High_Res.pdf
MONIQUAについて
フォーカスシステムズとイノカが共同で開発しているIoT水槽管理システムで、人間と自然環境をつなぐ環境移送技術を支える基幹システムです。MONIQUAは、リアルタイムでの水温の確認やコントロール、水生生物の飼育に必要となる水質や水温等のパラメータの管理を行えます。特に、サンゴやマングローブ・アマモ等、長期飼育が難しい生態系を人工の閉鎖環境で再現するためには、繊細な環境管理が求められます。そうした環境を再現・維持するための制御を自動で行い、水槽内のデータ収集やアクチュエータ*⁶の制御を一括で担うことが可能です。今後はサンゴにとどまらず、養殖場等、幅広く展開していく計画です。
(*⁶)電気・空気圧・油圧等のエネルギーを機械的な動きに変換し、機器を正確に動かす駆動装置のこと
東京大学 大学院農学生命科学研究科 安田仁奈 教授 コメント
サンゴを数ヶ月にわたって室内水槽で安定的に飼育し、自然下と同様に産卵させることは、海洋生物学の専門家にとっても非常に高いハードルです。サンゴは光合成を担う褐虫藻と共生しているために、厳密な水質管理、温度・照明の制御等、わずかな環境の乱れで共生関係がくずれて健康を損ねるほど繊細だからです。実際、多くの研究が「サンゴを1か月以上健康に維持することさえ難しい」と報告しています。そうした中でイノカが行った数ヶ月にわたる飼育は、最新の水質制御技術や飼育ノウハウを駆使した成果であり、そのサンゴが健康を保って2ヶ月以上も飼育されたあとに実際に産卵した事実は、研究面でも保全面でも画期的な意義を持ちます。室内でサンゴが産卵できるまでの環境を整えられることは、今後のサンゴ礁の保全や繁殖研究にさらなる展開が期待できます。生き物の飼育を愛するアクアリストによる学術の専門家をこえる市民科学が、今後の学術的な発展はもちろん、気候変動や人為ストレスで危機的状況にある海洋生態系の保全に役立って行くことが大きく期待されます。
フォーカスシステムズ 森代表 コメント
イノカ様との共同研究により、日本で初めて都市部の水槽で複数コロニーでの国産サンゴの産卵に成功し、大変誇らしく思います。この成果は、多くが消滅する可能性があると言われているサンゴ礁の保全にとって大きな一歩であると考えています。フォーカスシステムズは今後も技術革新を通じて、豊かな海の実現と持続可能な社会に貢献してまいります。
イノカ 高倉代表 コメント
今回、フォーカスシステムズ様との共同実験において、都市部の閉鎖環境下という難しい条件下でサンゴの複数コロニー同時産卵に成功したことは、まさに画期的な成果だと考えております。この成功は、私たちイノカが培ってきた環境移送技術と、フォーカスシステムズ様の技術力、そしてサンゴ保全への熱意が結集した結果です。海洋国家である日本が、この「ジャパンブルー」を象徴するサンゴの研究をリードし、世界のサンゴ保全に貢献できると確信しています。今後は、この技術をさらに発展させ、サンゴの有性生殖研究の促進や、ひいては創薬・生物多様性といった分野での応用、さらには本技術を応用した養殖業への展開も視野に入れ、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
株式会社イノカについて
株式会社イノカは、2019年創業の自然環境の総合的プロフェッショナル集団です。サンゴやマングローブ、海藻などの海洋生物から、ゲンゴロウやメダカなどの淡水生物まで、水圏の生態専門家を中心に、大学教授をはじめとする自然科学の研究者、そして環境ビジネスの専門家が在籍しています。
「人類の選択肢を増やし、人も自然も栄える世界をつくる。」というミッションを掲げ、産官学と連携し、共に持続可能な豊かな地球を目指し、自然関連の新規事業創出を行っています。
イノカは様々なバックグラウンドの人材が在籍しておりますが、一つの共通項があります。
それは全員、自然や生き物が好きということ。
「自分たちが好きな自然をみつづける。」というフィロソフィーのもと、一人一人が自分が好きな自然や生き物をもっと探究したい、そして未来に繋げたいという想いを持って活動をしております。
また、イノカでは2022年2月に産卵の時期をコントロールすることで世界初、真冬の人工環境下でのサンゴの産卵に成功しております。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000047217.html
株式会社フォーカスシステムズについて
株式会社フォーカスシステムズは、1977 年に設⽴され、公共・通信ほか、社会性の⾼い分野におけるシステム開発・運⽤に携わるだけでなく、IoT、クラウドや AI 等、時代の流れを⾒据えたビジネス展開も積極的に推進しています。コーポレートスローガンは “テクノロジーに、ハートを込めて。”⼈と⼈とを技術でつなぐ私たちフォーカスシステムズの仕事に、社員ひとりひとりが、情熱と誠意を持って臨む姿勢を込めました。
HP︓https://www.focus-s.com/
本件に関する問い合わせ先
株式会社フォーカスシステムズ
コーポレートマネジメント本部 IR・広報部
E-MAIL:koho@focus-s.com
T E L:03-5421-7790
株式会社イノカ
E-MAIL:pr@innoqua.jp
T E L:03-6776-7842