ERP

ERPのSAPとは?導入メリット・デメリット・2027年問題などを解説

ERPのSAPとは?導入メリット・デメリット・2027年問題などを解説

目次

「SAPとERPは何が違うのかな」
「SAPのERP製品を導入することで、どのようなメリットがあるのかを知りたい!」

『SAP』と『ERP』という言葉を耳にしたとき、このような疑問を抱くことがあるかもしれません。詳しくは本文で解説しますが、両者の特徴を端的にまとめますと以下の通りです。

  • SAPとはドイツに本社を置くソフトウェア開発会社のこと
  • ERPは経営資源と企業内の情報を一元管理する考え方のこと

SAPとはシステム名ではなく、社名を表します。そしてERPは考え方やシステムのことを指します。 そのためSAPとERPはまったくの別モノです。両者は比較対象にはならないことを覚えておきましょう。

そうなると、今度は各詳細が気になるところですよね。そこで本記事では、SAPとERPの違いだけでなく、SAP社製品を導入するメリット・デメリットからERPの選び方までご紹介いたします。「SAP・ERPをイマイチ理解しきれない……」という方は、ぜひご参考ください。

SAPとは?ERPとの違いも解説

ERPなどITツールの導入について調べた際、ネット上で見かける『SAP』とはどのようなものなのでしょうか。

  • SAPとは?
  • そもそもERPとは?
  • 比較対象ではない?SAPとERPの違い

SAPとは?

SAPとはドイツに本社を置く、ヨーロッパ最大級のソフトウェア開発会社のことです。SAP社は1972年にドイツで創設された会社であり、当初は『System Analysis Program Development』という名前でした。後に頭文字を取り『SAP』に変わります。

SAPが開発したERPシステムは世界中で高い評価を受けており、日本国内でも多くの企業が生産性向上のために導入しています。事実、日本国内では以下の企業がSAP社製品を導入しています。

なお同企業が販売しているERP製品の中には、SAPという単語が入っている商品もあります。そのためSAPという単語には、それらERP製品を指し示す場合もあります。

そもそもERPとは?

ERPとは、経営資源や情報をより効率的に活用しようとする考え方や、それを実現するシステムを指します。ERPは会計・調達・プロジェクト管理・リスク管理・コンプライアンス・サプライチェーン操作など、多様なビジネスプロセスを1つのシステムで管理することを可能にします。異なる部門間での業務プロセス効率化を促進し、業務の統一性と透明性の向上を期待できます。

またERPと言いますと統合システムのイメージが強いですが、以下のように個別のシステムとして各機能のみを利用することも可能です。

  • 会計システム
  • 製造管理システム
  • 供給チェーン管理システム
  • 顧客関係管理
  • 人事管理システム

これらのシステムはそれぞれ特定のビジネスプロセスに焦点を当てています。導入することで各部門の業務プロセスの効率化もしくは自動化、リアルタイムでの情報取得が実現するでしょう。「統合型ERPだと不要な機能が多いな……」と気になる場合は、各部門に特化されたERPを導入するのがおすすめです。

なおERPの詳細は以下記事をご参考ください。
ERPとは?基幹システムとの違い・形態・メリット・導入時の流れを解説

比較対象ではない?SAPとERPの違い

先ほど簡単に解説しましたが、SAPとERPの違いは以下の通りです。

SAP
(System Analysis Program Development)

ソフトウェア会社および同社の商品

ERP
(Enterprise Resources Planning)

経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を有効活用する計画や考え方、およびそれを実現するシステム

同じ3文字の英単語であるためややこしいところではありますが、SAPとはドイツに本社を置くソフトウェアの開発会社のことです。そして同社が開発した以下の商品もSAPと呼ばれることがあります。

  • SAP Business Network
  • SAP Signavio
  • SAP Business Technology Platform
  • SAP S/4HANA Cloud
  • GROW with SAP
  • RISE with SAP
  • SAP S/4HANA Cloud for Service
  • SAP Service Cloud
  • SAP Ariba
  • SAP Fieldglass
  • SAP Concur
  • SAP Supply Chain Management
  • SAP Sustainability Control Tower

※SAP Business Network・SAP Signavio・SAP Business Technology Platform・SAP S/4HANA Cloud・GROW with SAP・RISE with SAP・SAP S/4HANA Cloud for Service・SAP Service Cloud・SAP Ariba・SAP Fieldglass・SAP Concur・SAP Supply Chain Management・SAP Sustainability Control Towerは、ドイツおよびその他の国におけるSAP SEの商標または登録商標です。

一方ERPは、経営資源や企業内の情報を効率的に活用しようとする考え方であると同時に、昨今ではシステムそのものを指すこともあります。

SAP社の製品を導入するメリットを解説

SAP製品に限った話ではありませんが、ERPを導入するメリットとして以下が挙げられます。

  • 経営資源の見える化
  • 業務効率の向上
  • ガバナンスの強化

経営資源の見える化

SAP社のERP製品を導入するメリットの1つが、経営資源の見える化です。経営資源を見える化することで、以下を実現できます。

  • 意思決定の支援
  • リスク管理の強化

各データを見える化することにより、意思決定の支援を期待できます。正確な情報に基づいた迅速な経営判断が可能です。リアルタイムのデータを用いた分析により、より合理的で戦略的な決定が行えるようになります。

それだけでなく資源の可視化により、リスク要因の早期発見と対応が可能です。従来は気づけなかった小さな変化も、数値化することで発見しやすくなります。在庫過多・資金流出・人材配置の不均衡などの問題を予防・最小化できます。

長期的な視点に立ったとき、このような仕組みを構築できることは大きなメリットと言えるでしょう。

業務効率の向上

業務効率の向上を期待できる点も、SAP社のERP製品を導入するメリットとして挙げられます。部署間の連絡を最小限に抑えることが可能になるからです。

例えば営業部署が大きな仕事を取れたとします。従来であれば、一定以上の規模の仕事になると、部署間でのすり合わせがある程度必要になります。在庫状況や製品を製造するための材料は仕入れられるのか、納品するまでにどのくらいの時間がかかるのかなど、幅広い面で確認をしなければなりません。

このような確認を疎かにすれば仮に受注できたとしても、納品できないというケースが考えられます。場合によっては、現場に必要以上の負荷をかけることも考えられるでしょう。このような事態を引き起こさないためにも、事前に関係各部署とのすり合わせが必要になります。しかし確認を行うには、その都度メールや電話などで連絡を取らなければなりません。効率的とは言えないでしょう。

このようなときに役立つのがERPです。ERPを導入していれば、上記で触れた情報を瞬時に把握することが可能です。各部署の情報がシステムに集約化および見える化されているからです。確認作業を効率化することで、浮いた時間をコア業務に充てることが可能になるでしょう。

ガバナンスの強化

SAP社のERP製品導入によって、ガバナンスの強化を期待できる点も大きなメリットになります。導入するシステムにもよりますが、アクセス権限機能があるからです。

アクセス権限により、特定のデータやシステム機能へのアクセスを制御できます。これにより、不正アクセスやデータ漏洩のリスクが低減され、企業の機密情報を保護することができます。企業の運営をより透明かつ信頼性の高いものにすることでしょう。

仮に不正アクセスがあったとしても、ERPシステムによっては監査機能もあります。監査機能によりシステムの利用状況をいつでも確認可能です。この監査機能の存在が、不正行為の防止に役立つことでしょう。

SAP社の製品を導入するデメリットを解説

SAP製品を導入する際に考えられるデメリットは以下の2つです。

  • 導入費用が高いかもしれない
  • 使い慣れるまでに時間がかかるかもしれない

導入費用が高いかもしれない

SAP社のERP製品は、導入費用が高いかもしれない点が1つ目のデメリットです。SAP社の公式サイトに導入費用は公表されていません(2023年1月15日時点)が、多種多様な機能が搭載されていることを鑑みますと、それ相応の費用がかかると推測されます。

 もちろん、統合型ではなくConcur Expense※のように1つの部門に特化した製品を選ぶことで、ある程度コストを抑えることも可能です。

 ※Concur Expenseはドイツおよびその他の国におけるSAP SEの商標または登録商標です。

 しかしどちらにせよ、導入費用は不明なままです。気になった方は、SAP社やSIer※に問い合わせてみることをおすすめします。

※SIer(System Integrator)とは、システムインテグレーション業務を請け負っている企業のことです。企業にもよりますが、顧客の要求に応じたシステム設計・開発・導入・サポート事業を展開しています。

使い慣れるまでに時間がかかるかもしれない

使い慣れるまでに時間がかかるかもしれない点も、SAP社のERP製品を導入するデメリットと言えます。SAP製品、特にSAP ERPシステムは機能が豊富だからです。

SAP ERPシステムは多様な業務プロセスをサポートするため、機能は非常に広範囲で複雑です。特に大規模な組織や複雑な業務を持つ企業では、システムの全範囲を理解しマスターするのに時間が必要でしょう。

この問題を解決するには、従業員の適切なトレーニングが不可欠です。専門的なトレーニングプログラムやサポートを利用することで、早い段階で使いこなせるようになるかもしれません。導入をする前に、SAP社やSIerにサポート内容などを問い合わせるのが良いでしょう。

ERP製品を選ぶ際のチェックポイント

SAP社製品に限らず自社にERPを導入するには、まず導入すべきERPを選ばなければなりません。ツールを選定する際には以下のポイントを意識してみましょう。

  • 製品のセキュリティレベル
  • 導入実績の数
  • サポート体制の充実度
  • 無料トライアルの有無

製品のセキュリティレベル

ERPを選択する際には、まず製品のセキュリティレベルを確認しましょう。ERPは従業員の個人情報や企業の内部情報など、機密情報を扱うことが多いからです。

セキュリティを考えずERPを導入すると、情報が漏洩するなどのリスクが考えられます。情報漏洩を引き起こしてしまえば、企業の信頼を揺るがすことにもつながるでしょう。その結果、ビジネスに悪影響があるかもしれません。

このような事態を引き起こさないためにも、製品のセキュリティレベルは非常に重要なポイントです。ベンダーが提示したセキュリティ案を確認することは必須でしょう。不明な点がある場合は、問い合わせるのがおすすめです。

導入実績の数

選択候補であるERPの導入実績数も確認してください。導入実績が豊富なERPであるほど、一定の品質を期待できる製品である可能性が高いです。

ERPに限らず多くの製品で言えることですが、誰も利用したことがない製品の場合、本当に役立つ製品なのかがわかりません。仮に製品ページで多くの利点が上げられていたとしても、実際にはメリットを感じられないケースもあり得ます。

しかし導入企業の事例をチェックすることで、製品ページで語られていたことが本当なのかを確認できます。導入実績の数が多ければ、その信頼性は増すと言えるでしょう。

なお導入実績数を確認する際は、以下の点を確認してみてください。

  • 同業種の企業が導入しているか
  • 課題や目的が似ている企業の導入実績があるか
  • 自社に類似した規模の企業が導入しているか

自社に似た企業が導入しているようであれば、実際に導入した場合のイメージも湧きやすくなります。導入による感想や口コミがあれば、そちらもしっかりチェックしてみましょう。

サポート体制の充実度

導入・運用時のサポート体制の充実度も重要なポイントになります。ERPの導入には専門的な知識が必要なうえに、何かしらのトラブルが起こるかもしれないからです。

導入時のトラブルとして、手順に沿って進めていたはずなのに正常に動かないといったケースが考えられるでしょう。また導入そのものはスムーズだったが、運用を始めてからフリーズすることが多く、業務が滞ってしまうなどのトラブルも考えられます。

このような状態になった際、サポート体制が充実したERP製品を選んでいれば、迅速な助けを期待できます。オプションのケースもありますがチャットや電話だけではなく、実際に現場に駆けつけてくれるかもしれません。

また運用を始めた後であっても、会計経理などバックオフィスに関する業務は法改正の可能性があります。法改正があったことでERPの設定を見直す、そのためのサポートが必要になることもあるでしょう。

以上のことから、サポート体制に関する確認はマストと言えます。


無料トライアルの有無

無料トライアルの有無も確認しておきましょう。実際の使い心地を事前に確認できた方が、安心して本格導入できます。

例えば「操作性が悪く一部の人しか使いこなせない……」といったトラブルが、導入後に発覚するかもしれません。これでは現場からはもちろん、経営陣からも不満が出てくることでしょう。システムを使いこなせない場合、当初に設定した目的や目標の達成が難しくなるからです。少なくとも業務の効率化は困難でしょう。

このような事態を回避するには、無料トライアルで実際の使用感を確認するのが一番手っ取り早いです。事前に確認をして、問題なく使用できる製品を選んでいきましょう。

モジュールなどSAP社製品でよくある質問

こちらではSAP製品に関するよくある質問、以下2点について回答いたします。

  • SAPのモジュールを教えてください
  • SAPの2027年問題とは何ですか?

SAPのモジュールを教えてください

SAPモジュールとは、業務ごとに必要な機能をまとめたプログラムの集合体を指します。以下は、SAPの主要なモジュールの一部です。

  • 経理・財務
  • 人事管理
  • 調達・購買
  • 販売
  • 製造
  • ロジスティクス・サプライチェーン管理
  • サービス
  • 研究開発・エンジニアリング
  • 設備資産管理

これらのモジュールは互いに統合されており、企業の様々な業務プロセスをシームレスにサポートします。業種や企業の特定のニーズに合わせて、これらのモジュールをカスタマイズしたり、追加機能を提供したりすることが可能です。

また、これらのモジュールは連携して機能し、企業の異なる部門間でのデータの一貫性と透明性を保ちます。この統合されたアプローチにより、企業は効率的かつ効果的に業務を遂行することができるようになります。

SAPの2027年問題とは何ですか?

SAPの2027年問題とは、SAP社の一部ERP製品のメインストリームメンテナンス(いわゆる標準サポート)が2027年までに終了すると発表されたこと、およびそれに関連する問題を指します。2027年に終了するのはメインストリームサポートのみとなっているため、サポート終了後もERPの利用自体は可能です。2027年以降のSAP ERP 6.0の状況は以下のようになります。

  • セキュリティプログラムは継続して更新
  • 新たな機能は追加されない
  • システム障害による業務停止の保証なし

セキュリティプログラムは従来通りに更新されるため、使い続けることでセキュリティが脆弱になることはありません。しかし新しく機能が追加されることはないため、現状のSAP製品で満足できていない場合は使い続けるメリットが少ないと言えるでしょう。

この問題に対処するには、最新のERP製品に移行もしくは新規導入を行う必要があります。SAP社製品の利用を検討している場合は、覚えておきましょう。

まとめ

ここまでSAPとERPについて解説いたしました。 SAP社製品に限らず、ERPは企業内の情報を一元管理できます。経営資源の見える化・生産性向上・ガバナンス強化などさまざまなメリットを期待できます。

ただSAP社のERP製品を導入するには、費用が高くつくかもしれない、使いこなすまでに時間がかかるなどのデメリットもあります。SAP製品にこだわりすぎることなく、自社に合ったERPを選択することが重要になるでしょう。ERP製品のことであれば、当社にぜひお声がけください。

残してきた実績

設立から48年。
大切なものにフォーカスしてきたからこその実績があります。
公共・民間ともに多数の実績を残してきました。

年間プロジェクト数

500PJ

年間取引先・顧客数

200

最長取引年数

47

延べ資格取得者数

1,870