フォーカスノート
ERPとは?基幹システムとの違い・形態・メリット・導入時の流れを解説
目次
「ERPって何だろう?」
「企業内情報を一元管理するためにERPを導入したいけれど、どうすれば良いのかわからない」
ERPの導入を考えている企業のご担当者のなかには、このような疑問やお悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。まずERPとは、企業の経営に関わる基幹情報をまとめて管理する概念やシステムのことを指します。ERPを導入することで、スピーディーな情報共有ができるようになり、迅速な経営判断や業務の効率化を実現できます。
活用することで多くのメリットを得られるERPですが、導入目的や導入後の業務フローをよく検討しなければ、うまく活用できないおそれがあります。そのため事前に、自社の課題や求める機能などを検討することが大切です。
そこで本記事ではERPとは何か、ERPの種類や導入するメリット、導入時の流れ、ERPに関するよくある質問を解説します。ERPの導入で悩んでいる人は、ぜひご参考ください。
ERPとは?基幹システムとの違いも解説
ERPは企業の基幹情報を一元管理できるシステムです。具体的にどのようなものなのかを以下の2点で解説します。
- ERPとは?意味や読み方をわかりやすく解説
- ERPと基幹システムの違い
ERPとは?意味や読み方をわかりやすく解説
ERPとは、企業の持つ資源を一元管理して有効活用する概念・手法・システムのことです。読み方は『イーアールピー』。正式名称である『Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)』の頭文字を取った略語であり、日本語では『企業資源計画』を意味します。
そんなERPの管理対象は主に以下の4つ。
- ヒト
- モノ
- カネ
- 情報
これらは企業が安定した経営を続け、さらに成長していくために欠かせません。企業全体の資源の適切な管理を目的として、ERPの考え方がさまざまな企業で導入されるようになりました。
そしてERPシステムで管理する情報の具体例としては、主に以下が挙げられます。
部門例 | 管理する情報例 |
---|---|
人事・給与管理 | 給与計算・勤怠管理・経費申請など |
財務管理 | 債権・債務管理・資産管理など |
生産管理 | 生産計画・工程管理・品質管理など |
在庫・購買管理 | 在庫管理・購買計画・発注管理など |
販売管理 | 納品・売上・見積もりなど |
従来は部門ごとに情報を管理しており、社内での情報共有に時間や手間がかかるという問題がありました。ERPでは基幹情報を1つのシステムでまとめて管理するため、情報の連携や活用がしやすくなります。
なお余談になりますが、ERPはMaterial Resource Planning(MRP)という生産管理の手法から派生した概念でもあります。MRPは日本語では『資材所要量計画』と呼ばれ、需要と供給のバランスを取りつつ、効率良く在庫管理をするための手法です。主に製造業で取り入れられている手法を、一般的な企業経営にも当てはめた考え方がERPとなっています。
ERPと基幹システムの違い
ERPと基幹システムの違いは『導入目的や管理する情報の範囲が異なる』点にあります。具体的には以下の通りです。
種類 | 目的 | 管理する情報の範囲 |
---|---|---|
ERP | 経営に関わる基幹情報の一元管理・迅速な経営判断・データ共有など | 企業全体 |
基幹システム | 部門に特化した情報の管理と業務の効率化 | 部門単位 |
ERPは企業全体の情報の一元管理や強力なデータ連携が目的です。簡単に言いますと、社内全体を最適化させるようなイメージですね。一括して情報を管理し、部門をまたいだリアルタイムでのデータ連携を実現することにより、業務の効率化を可能としています。
一方、基幹システムでは各部門に特化した情報の管理とそれぞれの業務の効率化を目的としています。こちらは部分最適のようなイメージです。各部門の業務を支えるためのシステムであり、扱う情報は個々の部門のものに限られます。
基幹システムは部門単位であれば業務の効率化に役立つシステムです。しかし、他の部署との連携や内部統制の観点からいえば、システム連携やデータ共有の面での課題がありました。ERPではこれらの課題を解決し、企業全体の業務効率化の実現が可能になります。
クラウド型などERPの形態を解説
ERPには主に以下の4つの形態があります。
- 統合型ERP
- 業務ソフト型ERP
- コンポーネント型ERP
- クラウド型ERP
形態によって対応している範囲が異なります。それぞれの特徴を解説します。
統合型ERP
統合型ERPは、企業の経営に関わる基幹情報をすべて統合し、網羅的に管理するシステムです。情報の一元化を実現できるため、部門ごとの情報の連携にかかっていた手間を省略できます。
例えば、1つの取引に関する情報を各部門の基幹システムで管理していた場合、それぞれの部門の担当者が入力する手間が発生します。統合型ERPでは1つのシステムに入力するだけで、社内全体で情報の共有が可能です。これにより、これまで発生していたシステムへの入力業務を大幅に削減できます。
また、システム内の情報をもとに、経営層が正確な経営状況をリアルタイムで把握ができる点も特徴です。売上や各業務の進捗状況など、各部門に分散していた情報がまとまっているため、経営判断に必要な情報を確認しやすくなります。企業全体の状況を正確に把握したうえで、迅速に最適な経営判断ができるようになります。
業務ソフト型ERP
業務ソフト型ERPは特定の部門の業務のみに対応している管理システムです。会計管理や生産管理など、1つの部門の業務に特化したシステムが業務ソフト型ERPに該当します。
例えば、会計管理部門であれば会計管理業務に関するデータのみを集約します。部署内の情報をすべてERPにまとめて管理できるため、情報の検索性が向上します。必要な情報へすぐにアクセスできるようになるため、部門単位での業務の効率化が可能です。
また、導入コストが抑えられる点も特徴です。複数の部門に対応するシステムを導入するには、相応の費用や期間がかかります。しかし業務ソフト型ERPであれば、対応する範囲が1つの部門に限られているため費用を抑え、かつ短期間での導入が可能です。
部門単位の課題に悩んでいる場合や、ERPの導入コストを抑えたい場合は業務ソフト型ERPが適しています。
コンポーネント型ERP
コンポーネント型ERPは必要な業務システムを選択し、組み合わせて導入できるシステムです。コンポーネントとは『部品』や『構成要素』などを意味する言葉であり、さまざまな業務のなかから必要なものだけをピックアップして導入できます。
例えばコンポーネント型ERPでは、会計・営業・総務など各部門に分かれている業務のなかから、一元管理したい業務を選んで組み合わせます。自社の課題解決のために必要な業務のみに対応したシステムが組めるため、導入コストを抑えたスモールスタートが実現できるでしょう。
また、必要に応じて組み合わせる業務の追加も可能です。例えば、最初は生産管理と在庫管理のみを組み合わせていたシステムに、会計や営業業務のコンポーネントを追加して運用することができます。予算や自社の状況にあわせた組み合わせができるため、導入コストやシステム移行の負担を軽減しながら自社の課題解決に役立てられるでしょう。クラウド型ERP
クラウド型ERPはインターネットを介して利用できるシステムのことです。サービス提供事業者が保有しているサーバーを利用するため、利用者はインターネットがあればどこでもサービスを利用できます。
そんなクラウド型ERPには以下の3種類があります。
タイプ | 特徴 |
---|---|
パブリックタイプ | インターネットを経由して提供されるSaaS型タイプ |
プライベートタイプ | インターネット上で提供されるサービスをもとにインフラやソフトウェアを導入するための環境を整え、自社内専用の環境へERPを構築するタイプ |
ハイブリッドタイプ | パブリックタイプとプライベートタイプ、またはクラウド環境とオンプレミス環境を組み合わせたタイプ |
パブリックタイプはインターネット上で利用できるSaaS型ERPのことであり、短期間で導入できるのが特徴です。プライベートタイプは、インフラなどのハードウェア部分をインターネット上で提供されるサービスで構築し、それをもとに自社専用の環境へERPを構築します。ハイブリッドタイプはパブリックタイプとプライベートタイプ、またはクラウド環境とオンプレミス環境を組み合わせたタイプのことです。
従来のERPは、自社内にサーバーやネットワーク環境を構築するオンプレミス型が主流でした。オンプレミス型は自社にあうようにカスタマイズができる一方、導入コストの負担や導入までの期間が長くなってしまいます。
しかしクラウド型ERPであれば、オンプレミス型ERPの課題をクリアし、コストやリソースを抑えて導入できます。また、メンテナンスやトラブル対応をサービス提供者に任せられるため、自社内でトラブル対応のための人員を確保する必要がありません。インターネットに接続できる環境であればどこでもアクセスできるため、リモートワークにも対応できるでしょう。
ただし、クラウド型はある程度パッケージ化されており、オンプレミス型ほどカスタマイズできない可能性があります。自社の導入目的にあった機能が搭載されているか、事前によく確認しましょう。
なおクラウド(SaaS)型ERPの詳細に関しては以下記事で詳しく解説しています。
SaaS型ERP製品とは?オンプレミス型や基幹システムとの違いも解説
ビジネスに必須!ERPの導入メリットを解説
ERPの導入メリットは以下の2つが挙げられます。
- 情報の一元管理が可能
- 業務の効率化が可能
ERPを導入すれば、企業のさまざまな課題解決に活用できます。具体的にどのようなメリットがあるのかを見てみましょう。
情報の一元管理が可能
ERPを導入すれば、情報の一元管理が可能になります。1つのシステムに情報を集約するため、企業内のすべての情報を把握・管理が可能です。
従来は部門ごとにシステムを使用し、部門内の情報のみを管理するのが一般的でした。例えば、1つの取引に対して経理ではお金の情報のみを扱い、在庫・購買管理では発注数や在庫数などを管理します。
一見すると問題ないように見えますが、状況や案件によっては、各部門が同じデータ(顧客情報など)を入力してしまうかもしれません。各部門がリアルタイムでデータを共有できていないからです。そうなると重複データがどんどん積み重なり、好ましくありません。
しかしERPを導入すれば、このような事態は回避できます。ERPによって各部門の情報を一元管理できるからです。相互に各情報を確認できることで、データの重複や不整合は一気に減少することでしょう。
またERPではリアルタイムでのデータ共有ができるため、最新の情報をもとに意思決定ができます。経営陣の最適な意思決定に貢献し、企業の成長に役立てられるでしょう。
業務の効率化が可能
ERPを導入すれば、業務の効率化が可能な点もメリットの1つです。データ共有がスムーズになるため、部門間で効率的に連携できるようになります。
そもそも従来のシステムは部門内情報の取り扱いに特化しているだけでした。そのため関係部門の情報を把握するには、メール・電話・チャットなどで関係者に直接確認をする必要がありました。企業や状況によっては、担当者に直接会いに行く必要すらあったかもしれません。この時点でかなりの手間がかかると言えます。
しかしERPを導入することで、関係部門の情報共有を迅速に済ませることが可能です。資材調達・生産状況・販売結果・在庫管理・原価などを、その場ですぐに確認することができます。連絡・確認のために数分かけていたことが、わずか数秒で済ませられるわけです。社内の全部門・全員がこのような恩恵を受けられることを考えると、業務を大きく効率化できると言えます。
またERPのその他メリットに関しては以下記事にて詳しく解説しています。ぜひご参考ください。
ERPの導入メリット・デメリット|業務効率化の実現など企業に必要な理由を解説
ビジネスの場にERPを導入する際の流れ
ビジネスの場にERPを導入する際の流れは以下の通りです。
- ERPの導入目的を確認する
- 業務フローを確認する
自社にあったERPの導入に向けて、導入時のポイントを把握しましょう。
ERPの導入目的を確認する
ERPを導入する際には、まずは導入目的を確認しましょう。導入目的を先に確認することで、自社に必要な機能を把握できます。
ERPはサービスによって搭載している機能や対応している業務範囲が異なります。目的を明確にせずに導入すると、後に欲しい機能がないことに気づき、うまく有効活用できないかもしれません。
そのためERPを導入する際には、日常的な業務での課題を洗い出しましょう。課題を明確にしたうえで、それを解決するにはどのような機能が必要かを検討します。検討した内容をもとにどのERPを導入するか決めることで、導入後のミスマッチを防げます。
また、導入目的を明確にしておくと社員への説明もしやすくなります。導入したERPを実際に利用するのは社員です。どのような目的で使用するのかが曖昧では、システムの利用が浸透しないおそれがあります。
自社にあったシステムを導入し、スムーズに利用を浸透させるためにも、導入目的を明確にしましょう。
業務フローを確認する
導入する目的を明確にしたら、次は業務フローを確認しましょう。ERPの活用を想定した業務フローを確認しておくことで、業務の効率化を進めやすくなります。
新しいシステムを導入する際、実際にどのように利用するのかをあらかじめ確認していないとうまく有効活用できない可能性があります。場合によってはシステムに慣れていないことで逆に業務負担が増えてしまい、社員が利用を避けてしまうかもしれません。そうなるとERPを導入しても宝の持ち腐れになってしまうでしょう。
あらかじめERPを活用した業務フローを確認しておくことで、どのように利用すると良いのかを把握しやすくなります。ERPを活用した場合の業務の進め方がイメージしやすくなり、社員の新しいシステムへの抵抗感を軽減できるでしょう。
なお業務フローを確認する際には、従来の業務フローにとらわれることなく新しい業務フローを構築することが大切です。従来の業務フローにERPを当てはめるだけでは、業務の効率化にERPを活かしきれない可能性があります。
ERPによる業務の効率化を進めるには、従来のフローを洗い出したうえで、ERPでカバーできる範囲を確認しましょう。どこまでERPでカバーするかを決めて業務フローに組み込むことで、業務の効率化が進めやすくなります。
なおERPの導入手順に関しては以下記事で丁寧に解説していますので、ぜひご確認ください。
ERPの導入手順は?具体的なプロセス・進め方・失敗を回避する方法も解説
費用や事例などERPにてよくある質問を解説
費用や事例など、ERPについてよくある3つの質問を解説します。
- ERPの導入費用はどれぐらいになるのですか?
- ERPの導入事例はどのようなケースがあるのですか
- ERPでよく出てくるSAPとは何ですか?
ERPへの理解を深めるために、ぜひご参考ください。
ERPの導入費用はどれぐらいになるのですか?
ERPの導入費用は製品によって異なります。例えば、とあるクラウド型ERP商品の導入費用は以下の通りです。
比較項目 | 商品A | 商品B |
---|---|---|
初期費用 | 10万円 | 30万~80万円 |
その他費用 | 6万円~/月 | 初期費用や利用期間で変化 |
導入費用の概算 | 16万円~ | 30万円~ |
商品AとBは同じクラウド型ERPなのですが、それでも一定の価格差があります。それに付け加えて利用形態、例えば利用期間や人数により料金が変化します。また、導入前コンサルティングなども考慮すると、一概に「ERPの導入費用は〇〇円です」とは言いにくいのが実情です。
そのような背景もあり、ERPの導入費用が気になった場合は企業に直接問い合わせることをおすすめいたします。その際は費用だけでなく、機能やサポート体制のことも質問すると良いでしょう。提示された価格が適正であるかの判断ができます。また相見積もりなどで、各製品の費用・機能などを比較するのもおすすめです。
ちなみにERPの費用に関しては、以下記事で細かく解説していますのでご参考ください。
ERPの費用相場は?オンプレミス型とクラウド型の価格や内訳をそれぞれ解説
ERPの導入事例を教えてください
ERPにはさまざまな導入事例があります。例えば当社の場合ですと府省様向け研究開発管理システムの導入事例があり、以下を実現いたしました。
紙での申請・承認業務を完全に電子化
常に最新の情報を把握
多種多様な申請書をフレキシブルな共通機能で統合化
引用元:株式会社 フォーカスシステムズ|府省様向け研究開発管理システム(12月25日時点)
この事例では、一連の研究開発に関わる申請業務(公募から成果報告に至るまで)を管理することを目的に、府省共通の完全電子化システムが開発されました。システム導入により、各申請書の進捗管理を自動化。Excelを用いた手動管理によるステータスの誤りや更新ミスが解消され、労力を軽減できました。
このように、ERPは自社の課題解決に役立てられます。システムを有効活用するには、解決したい課題を洗い出したうえで自社にあったシステムを選びましょう。
なおERPの導入事例に関しては以下の記事で詳しく解説していますので、チェックしてみてください。
ERPでよく出てくるSAPとは何ですか?
SAPとはERPシステムを販売している、ヨーロッパ最大のソフトウェア開発会社のことです。創設当初は『System Analysis Program Development』という名称でしたが、略称のSAP(エス・エー・ピー)と呼ばれるようになり、現在は『SPA SE』という社名になっています。ドイツを拠点にしており、多種多様な業界や企業にマッチするERPシステムを生み出しています。
SAPの主力事業はERP。ビジネスプロセス管理をデジタル化し、データの効率的な管理や社内全体の情報共有のスムーズ化が実現できるソフトウェアになっています。SAPのソフトウェアは世界中で使用され、業務の効率化や生産性の向上などに貢献中です。
またSAP社の製品にはSAPという単語を用いているものもあります。そのため、それらの商品のことをSAPと呼ぶ場合もあります。
SAPにつきましては以下の記事で詳しく解説しています。
ERPのSAPとは?導入メリット・デメリット・2027年問題などを解説
まとめ
業務の効率化を進めるためには、ERPの活用がおすすめです。ERPは企業の経営に関わるさまざまな基幹情報を網羅的に一元管理できます。これにより、部門間での情報共有やリアルタイムでの経営状況の把握が可能です。複数のシステムに同じ情報を入力する手間や時間を削減でき、スピーディーな情報共有が実現できるため、業務の効率化を進められます。
また、経営状況を見える化できることで経営陣が的確な企業戦略の立案や意思決定を下せる点もERP活用のメリットです。意思決定が迅速に行えることにより、企業が成長するために必要な戦略を、より最適なタイミングで実行できるでしょう。
もしもERPの導入を検討しているのであれば、ぜひ当社にご相談ください。