フォーカスノート
ERPの導入手順は?具体的なプロセス・進め方・失敗を回避する方法も解説
目次
「ERPの導入にはどのような工程があるのか」
「ERPの導入を検討しているが、事前に決めておくことはなんだろう?」
ERP導入について、まず初めに何をすればいいのか。お悩みの方も多いのではないでしょうか。ERPの基本的な導入ステップには4つがあります。
- ERPの導入企画を立てる
- ERPの要件を定義する
- ERPを実装する
- ERPの運用を始める
ERPの導入は事前準備が非常に重要です。ERPの導入を成功させるためにも、万全を期して臨みましょう。
そこで本記事ではERPの大まかな導入スケジュールから、導入プロセス・失敗回避の方法まで詳しく解説します。ERP導入の手順を把握しておきたい方は、ぜひ参考になさってください。
ERPの導入手順(スケジュール)を解説
ERPの大まかな導入スケジュールとして、以下4つの段階があります。
- ERPの導入を企画
- ERPの要件を定義
- ERPを実装
- ERPを運用
1.ERPの導入を企画
まずはERP導入の企画から始めます。企画段階で決定することは以下が挙げられます。
実施することの例 | 具体例 |
---|---|
導入目的の設定 | 業務の効率化 コスト削減 データ管理の改善 |
現状の分析 | ビジネスプロセスの確認 システム状態の把握 問題点を分析 |
予算やリソースの確認
| 資金の捻出 人員の確保 時間(スケジュール)の確認 |
ERPシステムを導入する目的、つまりは成し遂げたいことを設定するのが代表例です。例えば『業務の効率化・コスト削減・データ管理の改善』などが挙げられるでしょう。明確な目的を設定することで、ERPに求める機能にぶれが生じにくくなります。
続いて、現状を分析していきます。ビジネスプロセスや現在利用しているシステムの機能を洗い出し、設定した目的を達するために必要な要素を導き出しましょう。
ERPシステム導入の目的が明確になった後は、システム導入時に必要なコストや人的リソースが取れるかを確認しましょう。リソースがあまり割けない場合はオンプレミスではなくクラウドが候補になるなど、今後の大まかな方針も立てやすくなります。
なおERPの詳細に関しては、以下記事をご参考ください。
ERPとは?基幹システムとの違い・形態・メリット・導入時の流れを解説
2.ERPの要件を定義
続いてERPシステムの要件定義※を行います。
※要件定義とは、導入するERPに求める機能や改善したい課題を定義することを指します。
要件定義にて実施することは、以下の通り。
実施することの例 | 具体例 |
---|---|
基本機能の要件定義 | 財務管理機能 人事管理機能 在庫管理機能 |
カスタマイズ機能の要件定義 | 各業界特有の慣習に基づいた機能 ダッシュボードに表示させる項目 リモートアクセス機能 |
セキュリティ要件の定義 | データ暗号化 アクセス制御 監査ログ機能 |
まずERPにおける基本機能の要件定義を行いましょう。基本機能と一言で言っても、表の通りさまざまな機能があります。事業特性によって取捨選択が必要です。本当に必要な基本機能を選べるように確認しておきましょう。
基本機能の要件定義を終えたら、次はカスタマイズ機能の要件定義です。基本機能では足りない部分を洗い出す工程です。業界特有の慣習に基づき、あれば便利な機能などを考えましょう。
最後にセキュリティに関する要件定義です。ERPは企業内の情報を一元管理するシステムになるため、セキュリティには妥協しないことが重要です。
3.ERPを実装
要件定義が終わったあとはERPの実装です。基本的な例は下記の通りです。
実施することの例 | 具体例 |
---|---|
ERPシステムの設定 | 基本システムの設定 ユーザーインターフェースの設定 レポートの設定 |
データ移行・統合の実施 | 既存データの確認 移行・データ変換におけるルールの策定 バックアップ作業の実施 |
ERPシステムの試運転 | プロセスのテスト 既存システムとの連携テスト ユーザー受け入れテスト |
初めは、ERPにおける基本システムの設定です。用意したハードウェアに、OSやデータベースシステムなど、ERPの基本システムをインストールしていきます。インストールを終えたら、パラメータの設定に移ります。ERPのパラメータとは、新しく導入するERPを自社システムに適合するように調整する工程と言えるでしょう。
ユーザーインターフェース・レポート設定などの下準備を終えた後は、データを移行します。既存のデータを新しくつくった環境に動かすことになるため、最初は単体データから動かして、徐々にシステム全体のデータ移動へと移っていくことになるでしょう。
データ移行が完了した後は、試運転です。業務プロセス・既存システムとの連携・ユーザーテストを行い、問題がなければ運用フェーズへと移ります。
4.ERPを運用
すべての準備を終えたら、実際にERPを運用することになります。運用フェーズで実施することの具体例は以下の通りです。
実施することの例 | 具体例 |
---|---|
運用状況のモニタリング | データ処理速度のチェック サーバーへの負荷のチェック 各機能の使用状況のチェック |
パフォーマンスの改善 | フィードバックやデータの分析 ビジネスプロセスの最適化 ユーザーのトレーニング |
メンテナンスの実施 | 各機能のアップデート 管理データの整理 セキュリティの確認 |
運用が始まった後は、運用状況をモニタリングします。データの処理速度が十分か、ピーク時でのサーバー負荷が高すぎないかなど、日々の運用を行う上で問題がないかを確認しましょう。
またERPソフトウェアではなく、ビジネスプロセスの不備やユーザー側の知見不足などによってパフォーマンスが低下しているケースもあるでしょう。この場合は、ビジネスプロセスの見直しやユーザー教育の徹底などでパフォーマンスの低下リスクを取り除くことが求められます。
また運用開始後は、定期的にメンテナンスすることも重要なポイントです。必要なセキュリティなどを定期的に確認することで、安心して運用することができます。
ERP導入の工程(プロセス)を具体的に解説
先ほどはERP導入の大まかな流れを解説しましたが、ここではより具体的なプロセスについて解説します。
- 導入目的の明確化
- 既存業務フローの確認
- 自社に必要なシステムの明文化
- 変更する必要がある業務・ない業務への仕分け
- 導入計画の作成
- 導入製品の選択
- ベンダーへの問い合わせ・相談・相見積もり
- ベンダーとの契約
- ベンダーとの綿密な打ち合わせ
- 目標値の設定
- 新業務プロセスの作成
- 運用規定の作成
- 業務マニュアルの作成
- 関係者への周知
- ユーザーおよび管理者の教育
- システムの初期設定(パスワードの設定など)
- 試運転の開始
- 効果の検証
- 機能の追加または見直しもしくは削除
- 本格運用の開始
1.導入目的の明確化
最初のステップで行うことが、ERPを導入する目的の明確化です。導入目的を考える際には、中長期的な経営戦略と現状を照らし合わせ、自社の課題を洗い出すことから始めましょう。ERP導入の目的で例に挙げられやすいのは以下です。
- 業務プロセスの改革がしたい
- 分野ごと・部署ごとにバラバラに運用しているシステムを統合したい
- 内部統制を強化したい
自社の課題に沿ったERPを選択するためには、まず導入目的をしっかりと明確にしておくことが重要です。
目的が明確にならない場合は、すべての関係者と話し合いをしましょう。各関係者からポジティブなものもネガティブなものも含めて詳細なフィードバックを収集することで、業務上の課題・システムに期待する機能・改善希望点が判明します。これらが明らかになれば、導入目的も見えてくることでしょう。
また、この話し合いの時に、予算やリソースについての確認も必ずしておきましょう。
2.既存業務フローの確認
既存の業務フローを確認・分析することも重要です。実際の現場をよく確認することで、解決すべき課題が見つかることでしょう。
このときに役立つのが業務フローのマッピングです。これは組織全体で動いている現在の業務プロセスを徹底的に理解し、それをERPシステムの機能と照らし合わせる作業です。既存の業務フローを詳細に分析し、業務の流れ・関与する部門・使用されているツールやシステム・関連する業務ルールを明確にします。
その結果、話し合いでは浮上しなかった問題点や改善の余地が見えてくるでしょう。それらを解決するために必要な機能も見えてくるはずです。
3.自社に必要なシステムの明文化
続いて、目的達成や課題解決に必要なシステムの明文化を進めます。一言でERPと言っても、製品によって利用できる機能は異なります。ネームバリューだけで選んでしまうと、必要な機能が搭載されていなかったなどということも生じ得るでしょう。このような選択ミスを起こさないために、初めから必要な機能を明文化しておく必要があります。
この際に役立つのが前掲の要件定義です。各要件を予め明確に定義しておくことで、必要な機能が見えてきます。
4.変更する必要がある業務・ない業務への仕分け
既存の業務フローを徹底的に確認することで、変更する必要のある業務とない業務が判明したかもしれません。その場合は各業務を仕分けましょう。仕訳の結果によって、必要な機能も変わってくるかもしれません。
仕訳ポイントはいろいろとありますが、基準にすべきは重要性と緊急性と言えるでしょう。ここでいう重要性とは『効率化・自動化することによって得られるメリットやリターン』を指します。どれだけコストを浮かせられるか、意思決定を迅速にできるようになるかなどを基準に考えると良いでしょう。
その一方で、緊急性とは『問題を防ぐことで回避できるデメリットやリスク』を指します。リソースの過不足・コンプライアンス違反や不正アクセスの防止にどれほど貢献できるかという視点で判断すると、仕分けやすくなるでしょう。
5.導入計画の作成
次に、ERPの導入計画を作成します。導入計画を作成することで、運用までの大まかな流れを把握できるでしょう。
なお、導入計画を作成するときは段階的アプローチが役立ちます。段階的アプローチとは、あるプロジェクトを複数の段階に分けて実施するアプローチのことです。段階ごとに、目標や成果物を明確にして、計画的に進めていきます。
段階的アプローチによってERP導入の複雑さとリスクを管理しやすくなり、組織内での受け入れを容易にすることができます。また、プロジェクト全体の進捗をより効果的に掌握し、必要に応じて迅速に調整できるようにもなります。
6.導入製品の選択
実際に導入する製品を選択します。最初から1つに絞るのではなく、まずは幅広く情報を集めることから始めましょう。最初から1つの製品に絞ると、選んだ製品が本当に自社にとって最適な製品かがわかりません。
候補のベンダーにRFI(Request For Information、情報提供依頼)を発行し、より詳しく製品の詳細を確認していきます。製品の情報をより詳しく知ると同時に、ベンダーの対応も確認できるでしょう。素早いレスポンスがあるか、的確な情報提供をしてくれるかなど、製品情報と併せて確認できます。
7.ベンダーへの問い合わせ・相談・相見積もり
導入する製品をさらに絞り込めたら、ベンダーに問い合わせ、相談し、相見積もりを取ります。複数のベンダーから見積もりを取ることで、コストや製品の詳細を比較できるでしょう。
例えば、導入費用がダントツに安いベンダーがあったとしても、連絡や対応までに時間がかかるようでは、トラブル時のサポートも遅くなるおそれがあります。逆に、驚くほど安くはないが、見積もりを出すスピードが速く、対応も的確であれば長く付き合う相手として申し分ないかもしれません。
ベンダー同士を比較することで、自社のプロジェクトに最適な、契約すべきベンダーを見つけやすくなることでしょう。
8.ベンダーとの契約
相見積もりで契約したいベンダーが見つかったら、契約を結びます。契約後に費用やトラブル対処などで揉めることがないように、契約時にはしっかりと話を詰めておくことが重要です。双方が納得する契約になるよう、時間をかけてでも話し合う必要があるでしょう。
またベンダーとの契約内容は、担当者だけが確認して終わりとするのではなく、プロジェクトに関わる当事者全員で確認することをおすすめします。複数の目で確認することで、重要な留意事項などを見落とすリスクを低減できるでしょう。
なお導入時だけではなく、運用後の契約がどうなっているのかも要チェックです。導入後の運用に不安があるのであれば、この時点で必ず適切な先に相談をするようにします。
9.ベンダーとの綿密な打ち合わせ
契約が終われば、ベンダーとの綿密な打ち合わせが始まります。ERPの導入で、課題をどのように解決したいのかなどの情報を共有してください。
ここで重要になる点は、利用者が改善したい問題を言語化・数値化して、明確にベンダーに伝えられるかです。「なんとなく良い感じにしたい・今より便利にしたい」といった伝え方では、ベンダーはERPに何を実装させれば良いのかわかりません。フォーカスシステムズは伴走しながら発注者の望みを実現するために丁寧に聴きとりますが、発注者はより明確に説明できるよう、準備する必要があります。
そのためにも要件定義を厳密に済ませておきましょう。これだけでも言語化・数値化が捗り、リスクの抑制も図れます。
10.目標値の設定
次は目標値の設定を行います。運用後に目標値を確認し、ERP導入の成功判定を行うためです。
目標値の設定で気を付けるポイントは、理想を追い求めすぎないことです。高い目標を掲げることは大事ですが、明らかに達成が困難である場合は、掲げた目標が形骸化するおそれがあります。このような事態を避けるためにもベンダーや現場担当者などと確認をしながら、適切な目標値を設定します。同業他社の成功事例などを参考にすれば、理想的な目標値を設定しやすくなるかもしれません。
11.新業務プロセスの作成
目標値を設定した後は、新業務のプロセスを作成しましょう。ERPを導入すると、多くの場合で業務プロセスが変更になるからです。そして何より、ERPの機能を最大限活用して、より効率的で効果的な業務プロセスを設計する必要があります。
このときに役立つ考え方がリーン管理の原則です。リーン管理の原則とは、ムダを排除して効率性と価値を最大化することに焦点を当てたアプローチのことです。ERP導入に適用することで、より効率的で合理的な業務プロセスを設計し、組織全体の生産性を向上させることができます。
それだけでなく、リーン管理の原則における価値の定義を『顧客満足度の向上』に設定することで、顧客のニーズに焦点を当てたプロセスになります。最終的には、より効率的で顧客中心のプロセスを実現できるでしょう。
12.運用規定の作成
続いては運用規定や業務規定を作成します。運用開始後の混乱を招かないためです。運用規定を作成しておくことで、管理責任や説明責任の所在が明瞭化できます。
このときに役立つ手法の1つがワークショップです。関係者を集めて議論や検討を行うことで、より現場目線の運用規定を作成できます。運用規定の抜け漏れを防ぐことはもちろん、合意形成も同時に進められるのが大きなポイントです。運用開始後に不満が出る確率を下げられることでしょう。
13.業務マニュアルの作成
併せて業務マニュアルの作成も進めていきましょう。新たな業務フローに合わせたマニュアルがあることで、従業員がERPを使いやすくなるためです。マニュアルの有無で、掲げた目標の達成率が大きく変わるかもしれません。
なお業務マニュアルを作る際のポイントは、『5W2H』を徹底的に明確にすることにあります。
5W3H | 内容 |
---|---|
What(何を) | 行うべきタスクは何か |
Why(なぜ) | そのタスクを行う理由は何か |
When(いつまでに) | タイムラインはどうなっているか |
Where(どこで) | どこで作業を行うべきか |
Who(誰が) | どの個人やチームが関与するか |
How to(どのようにして) | タスクの具体的な手順や方法は何か |
How many(どのくらい) | 必要な数量や頻度はどれくらいか |
対象・必要性・時間・TODO・数などを明確にすることで、実行可能性・成功確率をグンッと高められます。また、チーム内でのコミュニケーションと理解を促し、関係者間の認識のズレを防ぐことにも役立つでしょう。
14.関係者への周知
この段階で、変更される業務内容・運用規定・マニュアルなどを関係者へ周知します。現場の方に理解を促すことで、ERP運用をスムーズに進められます。
ERPを導入した後、実際に運用するのは現場の方々です。変更前の業務フローと変更後の業務フローを前もって理解しておけば、業務の変更時に無用な混乱が起きません。
なお業務の変更対象が大人数・複数部署にまたがる場合は、より早い段階での周知や疑問点・懸念点の解消が必要でしょう。
15.ユーザーおよび管理者の教育
ユーザーおよび管理者の教育も重要です。システムの使い方を理解していくことで、ERPの運用がスムーズに始められます。
基本的な操作方法やデータ入力に関するルールなどのほか、セキュリティに関する教育も必要です。ERPは企業の情報を一元管理できるシステムであるため、個人情報や経営情報など機密度の高い情報も扱われます。「個人情報が流出してしまった!」といった事態を引き起こさないためにも、事前に徹底した教育が必要だと言えるでしょう。
なお実際に利用するユーザーだけではなく、管理者にも教育は必要です。組織全体で適切な情報管理ができるように徹底しましょう。
16.システムの初期設定(パスワードの設定など)
システムを利用するためのパスワードなど、初期設定を進めていきます。システムを利用する人数だけIDとの紐づけが必要になるため、初期設定にも一定の時間がかかることを考慮しましょう。
初期設定は、オンプレミス型・クラウド型のどちらも必要な工程です。マニュアルを読みながらの作業になりますが、望めば初期設定もベンダーがサポートするケースがあります。あまりに時間がかかる、慎重に決めたいのでアドバイスが欲しいと考える場合は、積極的にベンダーに相談してみましょう。
また、データ移行・統合を自社で行うのが面倒な場合は、代行サービスを利用するのもおすすめです。このときに併せて相談をしてみるのも方法です。
17.試運転を開始
初期設定を終えたら試運転を開始します。試運転時にトラブルを確認した場合、速やかに修正を行えるでしょう。
なお試運転の種類には以下のようなものがあります。
- 単体テスト
- 結合テスト
- 統合テスト
単体テストは1つの機能だけをテストするもの。結合テストは2つ以上の機能を立ち上げ、うまく動くかをテストするもの。統合テストは完成形に近い状態で、業務に耐えられるかをテストします。
それぞれのテストでは、機能を立ち上げるだけではなく、大きな負荷をかけるなどのテストも行います。これらの試運転で問題が生じなければ、本格運用時のトラブル低減につながります。可能な限り実行すると良いでしょう。
18.効果を検証
試運転が一通り完了した後は、効果を検証しましょう。導入したシステムが期待通りの成果をもたらすか、また追加の改善や調整が必要ではないかを判断できます。
効果を検証する際の方法と具体例(対象)としては、以下のようなものがあります。
検証方法の例 | 検証対象の例 |
---|---|
KPI分析 | 在庫回転率 販売リードタイム 顧客満足度 |
コストの改善分析 | システムの運用および保守コスト メンテナンスコスト 人件費 |
業務プロセスの改善分析 | プロセスの所要時間 エラー率 手動業務(レポートの作成など) |
ユーザー調査 | ユーザビリティ システムに対する満足度 職場環境の状態 |
上記はあくまで一例です。基本的には当初に定めた目的・目標・要件・KPIなどに基づき、効果を検証するのが良いでしょう。
19.機能の追加もしくは削除
効果を検証した結果、機能の過不足があるかもしれません。 その場合は、追加や削除を行います。必要な機能を事前にどれだけ話し合っても、実際に使ってみると物足りない・不要だったというケースは十分に起こり得ます。
本格運用を始める前に適切な機能を揃えておくことで、ERPの効果をより高められます。それだけでなく現場からの不満や不要なトラブルの回避にもつながるでしょう。
20.本格運用を開始
すべての準備が整えば、本格運用の開始です。運用規程・業務マニュアルに基づき運用を進めていきましょう。
現場の関係者が実際に運用することで、業務プロセスの改定が再度必要になるケースも起こり得ます。運用直後はマニュアルにとらわれすぎず、柔軟な対応を心がけましょう。より使いやすく業務効率を向上できるシステムの使い方を模索し続けることが重要です。
ある程度の運用実績が蓄積されたら、事前に決めておいた目標数値と照らし合わせてERPの導入効果を判断します。目標値を達成していない場合は使用状況などを確認・改善・検証を繰り返し、業務効率をどんどん向上させましょう。
もちろん業務効率だけでなく、セキュリティ面の確認も必須です。個人情報管理などが適切かを、定期的に確認・教育・アップデート・メンテナンスします。
ERPの導入失敗を回避する方法を解説
ERPの導入失敗を回避するには、以下5つのポイントが重要になります。
- 運用部門と綿密に打ち合わせる
- 要件定義を明確にする
- 発注側と受注側の双方が納得できる契約内容にする
- 本格運用後にもベンダーからのサポートを受けられるようにしておく
- 考えられるリスクに備えたリソースを事前に準備しておく
運用部門と綿密に打ち合わせる
ERP導入の失敗回避には、運用部門との綿密な打ち合わせが欠かせません。実際にERPを利用するのは運用部門になるためです。
ERPのネームバリューだけで選ぶと、実際に運用を始めた際に不要な機能ばかりのERPになっているおそれもあります。本当に必要な機能が使えないことで、ERPを導入した意味がなくなってしまうことも考えられるのです。
また社内間でERPに関する認識が異なっている場合、ERPの必要性を理解できない従業員が多くなります。結果的にERPを利用せず、既存の業務フローのままで業務を進めるケースもないとは言えません。
しかし現場の人間がERPの必要性やメリットを理解することで、活用に前向きになるでしょう。導入時は、現場の声を無視しないよう意識的に気を付けましょう。
要件定義を明確にする
要件定義は単に定めるのではなく、可能な限り明確にしておきましょう。明確にすることで、ベンダーは何を実装すべきかをはっきりと理解できます。要件定義を明確にしたうえでベンダーに相談すれば、非常にクリアな状態で話し合いを進められます。結果的に、実装されたERPと想定していたERPとのズレを埋める役割も果たすことでしょう。
また状況によっては、適切な機能の追加や削除を提案してくれるかもしれません。そうなれば目標の達成率向上やコスト削減に役立ちます。要件定義を明確にする作業は時間がかかるかもしれませんが、結果的にスムーズなERP導入・目標達成を叶えてくれることでしょう。
発注側と受注側の双方が納得できる契約内容にする
発注側と受注側の双方が納得できる契約内容にすることも、ERP導入の成功に必要なことです。双方が納得できない状態ではお互いを信頼できず、二人三脚でERPの導入を進められなくなるおそれがあるためです。
受注側に無理な契約を押し付けてしまえば、相手方は難色を示すでしょう。いくら仕事と言っても納得できない契約内容を押し付けてきた相手に対して、快く対応することは難しいかもしれません。長期的なプロジェクトであるほど、このような事態を招くことは好ましくないでしょう。
もちろん発注側が一方的に我慢を強いられるような契約もNGです。双方が納得できるまで話し合い、落としどころを見つけられるよう努めましょう。
本格運用後にもベンダーからのサポートを受けられるようにしておく
本格運用後も、ベンダーからのサポートを受けられるようにしておくことも重要です。なぜならERPの運用直後にも、トラブルが起きる可能性があるためです。
運用直後など、まだERPになれていない状態でトラブルが起きた場合、自社社員のみで対応ができるとは限りません。ERPは基幹システムも兼ねているため、ERPが使えないことで最悪、業務が止まってしまうおそれもあるでしょう。
しかし運用後もベンダーからのサポートを受けられるようにしておけば、トラブルへの迅速な対応が可能です。その結果、業務が止まる事態を回避できたり、被害を最小限に抑えたりすることができるでしょう。
考えられるリスクに備えたリソースを事前に準備しておく
考えられるリスクに備え、リソースや費用を準備しておきましょう。事前に準備しておくことで、いざというときの備えになるためです。
ERP運用後に考えられるリスクとは、以下のようなものが挙げられます。
- 保守・運用にかかるコスト
- 情報漏洩などセキュリティリスク
- ERPに詳しい社員が存在しない
保守・運用にかかるコストは、オンプレミス型のERPを選択した場合に必要なリスク管理です。保守・運用には一定の人的リソースが必要になるため、導入を検討した時点から考慮しておくと良いでしょう。
また情報漏洩などのセキュリティリスクについては、社員への徹底した教育が不可欠です。導入が決まった時点で、セキュリティに関する事前セミナーなどを実施しておくことが望ましいでしょう。
その他にもERPに詳しい社員が退職してしまうといったケースもあるでしょう。特定の人物1人だけに依存しないよう、IT人材の積極的な育成が必要になります。社内での育成が難しい場合は、IT人材の中途採用を視野に入れる必要も出てきます。
想定されるリスクに対して可能な限り対策を施しておくことで、安心して運用できることでしょう。
まとめ
ERPの導入スケジュール・プロセスについて詳しく解説いたしました。工程が多いことから「こんなに行うことがあるのか……」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
この記事で解説した手法を実行すれば、ERP導入の成功確率の向上を期待できます。可能な限り実行することをおすすめします。
しかし通常業務をこなしながらERPを導入する場合、時間の確保がなかなか難しいかもしれません。確認しておきたいことがあったとしても、実行できないことが多々あることでしょう。そのような場合は、ぜひ当社に一度ご相談ください。