フォーカスノート
IoTの問題点(課題)はセキュリティ対策・電力供給など!導入メリットも解説
目次
「IoTは便利だと聞くけれど、問題点や課題はある?」
「IoTを導入する前にデメリットを知って対策したい」
IoTの導入を検討している方の中には、上記のような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。IoTはモノとインターネットをつなぐ技術であり、さまざまな分野で導入されています。IoTは遠隔での操作やデータ収集などの機能により、業務の効率化やコスト削減などができるというメリットがあります。
一方で、IoTはインターネットに接続して利用するため、サイバー攻撃の標的になるおそれがあります。通信障害や機器の故障などの理由によって機器が使えなくなることもあるでしょう。稼働するために電力を消費するため、電力供給が途絶えた場合の対策も必要です。このように、IoTにはさまざまな課題があります。
本記事では、IoTの問題点やIoTに関するよくある質問を解説します。IoTのデメリットも理解すれば、起こりうるリスクへ導入段階から対策できるでしょう。IoTの導入を検討している方は、ぜひご参考ください。
課題は?IoTの問題点(デメリット)を解説
IoTの問題点には、主に以下の8つが挙げられます。
- セキュリティ対策問題
- IoT人材不足問題
- 取得した個人情報の取り扱い問題
- 通信障害問題
- 複数クラウド下の通信環境におけるデータ遅延問題
- 電力供給問題
- 機器の故障問題
- システムダウン時の対策問題
セキュリティ対策問題
IoTの問題点として、セキュリティ対策問題が挙げられます。インターネットに接続するため、サイバー攻撃を受けるおそれがあるのです。
例えば、インターネットを介したサイバー攻撃として以下の事例があります。
アルミニウム工場のマルウェア感染(2019年、ノルウェー)
事象
✓ノルウェーのアルミニウム製造大手で大規模なマルウェア感染
✓「LockerGoga」と呼ばれるランサムウェアに感染
✓発生直後、プレス加工等の一部生産、オフィス業務に影響
✓プラントは影響拡散防止のためシステムから分離
✓被害は、最初1週間で3億~3億5000万ノルウェークロネ(4000万ドル相当)と推定
引用元:経済産業省|最近の産業サイバーセキュリティに関する動向について 令和4年2月|4ページ目(2024年1月23日時点)
この事例では、プレス加工などの生産活動が直接影響を受けました。『LockerGoga』と呼ばれるランサムウェアによる攻撃は、製造業における生産プロセスやオフィス業務に深刻な影響を与えるおそれがあります。事実、この攻撃によって生じた経済的損失は莫大であり、最初の1週間で約4,000万ドルと推定されています。これは、サイバーセキュリティの欠如が組織に与える経済的影響が甚大であることを示しています。
この事例から察するに、IoTを利用する(インターネットにつなげる)のであれば、セキュリティ対策は必須と言えるでしょう。セキュリティ対策はもちろんですが、従業員の教育・バックアップの準備・事後の対応計画も必要です。一部門ではなく、組織全体で取り組むことをおすすめいたします。
IoT人材不足問題
IoT人材が不足していることも、IoTの問題点の1つです。IoTを適切に運用するために、ITやデータ分析に関する専門知識を有した人材の確保が求められます。
ITに関する知識が薄いとIoTを導入してもうまく活用できないおそれがあります。例えば、システムの利用方法がわからず、機能を使いこなせないなどの事態に陥る場合もあるでしょう。トラブルが発生した際にもどのように対応すべきかわからず、トラブル解消までに時間がかかるかもしれません。
また、IoTではさまざまなデータを収集し、そのデータを分析することで課題解決や業務の効率化に活用できます。データ分析の知識がなければ、データを集めても有効活用できません。IoTを活用し適切に運用するためには、IT技術だけではなくデータ分析の専門知識も必要です。
取得した個人情報の取り扱い問題
取得した個人情報の取り扱いもIoTの問題点の1つです。収集した情報内に含まれる個人情報を適切に管理することが求められます。
IoTは機器に取り付けたセンサーからさまざまな情報を取得します。例えば、小売店で販促のためにIoTを活用している場合で考えてみましょう。顧客に合った商品の提案や販促を行うために取得していると考えられる主な個人情報は、以下の通りです。
- 名前
- 年齢
- 性別
- 住所
- 購入した商品
- 顧客が訪れた店舗の情報
上記の情報は顧客のニーズを分析し、効果的な販促を行うために活用されます。しかし、顧客側にとっては自身の個人情報がどのように管理されているかわからず、不安に感じるかもしれません。先述したセキュリティの問題もあり、企業側は個人情報を適切に管理し守るための対策が求められます。
対策としては、個人情報の取り扱いに関する明確なプライバシーポリシーの策定・社内共有・トレーニングが挙げられます。このポリシーには、どのようなデータを収集し、どのように使用するか、第三者との共有はあるかなどを含めます。法律や規制に準拠したプライバシーポリシーを社内にて作成し、このプライバシーポリシーと関連する法規制のトレーニングを実行、かつ遵守を徹底してください。
なお、事業内容によっては海外の個人情報を取り扱うこともあるでしょう。その場合だと状況にもよりますが、EUのGDPR(一般データ保護規則)やアメリカのCCPA(カリフォルニア消費者プライバシー法)を守る必要が出てくるかもしれません。この辺りは自社で解決するのが難しいことが予想されます。専門家に相談するのが良いでしょう。
通信障害問題
通信障害もIoTでは避けられない問題です。インターネットに接続して利用するもののため、通信障害が起これば誤作動などのトラブルが発生するかもしれません。
IoTはモノをインターネットにつなぎ、インターネットを介してデータを取得したり機器へ指示を出したりします。通信障害が発生した場合、データの送受信や処理がうまくできません。これにより誤作動やシステムの停止などのトラブルにつながってしまうでしょう。
具体的な対策方法としては、複数の通信経路の確保が挙げられます。例えば有線ネットワークと並行して、衛星通信などの無線ネットワークを設定するなどがあるでしょう。ネットワークのスイッチオーバー機能を設定し、通信障害が発生した場合に自動的に別の経路に切り替わるようにするのがおすすめです。
複数クラウド下の通信環境におけるデータ遅延問題
IoTには複数クラウド下の通信環境におけるデータ遅延に関する問題もあります。複数クラウド間でのデータの共有や送受信では、ネットワークに負荷がかかり遅延する可能性を否定できません。
IoTでは機器に取り付けたセンサーによって取得したデータを、インターネットを介してクラウドに保存します。クラウドとはインターネット経由で提供されるサービスであり、取得したデータを蓄積する役割を担っているものです。
1つのクラウドでデータを管理していると、保存容量に限界がきたりクラウドの不具合によってIoT機器が正常に作動しなかったりします。こうしたリスクを避けるために、複数のクラウドへデータを分散しての保存が望ましいです。
しかし複数のクラウドを利用すれば、その分通信が必要です。多くのネットワークノード※やスイッチを経由する必要もあるでしょう。
※ネットワークノードとは、ネットワークにおいてデータの送受信が可能な任意のデバイス、およびデータ通信ポイントを指します。
通信の頻度やデータ量などによっては、やりとりに遅延が発生するおそれがあります。
この問題の対策としてはデータ送信や同期をする際に、データ転送の効率化が挙げられます。例えば変更が少ないデータや重要度が低いデータの同期頻度を減らすなどです。データ転送に圧縮技術を利用し、転送データ量を減少させます。
これで問題が解決しない場合は、IoTデバイスとクラウド間の通信に効率的なプロトコル・専用ネットワーク接続サービスを選択するなど、根本的な施策が必要となります。詳しくは専門の事業者に相談するのが良いでしょう。
電力供給問題
電力供給もIoTでは避けては通れない問題です。 ここでいう電力供給問題とは、IoT機器が効率的かつ持続的に動作するための電力を確保することに関連した課題を指します。
例えばIoT機器はしばしばバッテリーで動作するため、長期間にわたる電力供給が課題です。特にリモートエリアやアクセスが困難な場所で使用されるデバイスにおいては重要でしょう。そのような環境では有線電源による電力供給が困難なこともあるため、長期間かつ安定的な電力供給の実現が重要になります。またデータ量・送信頻度などによっては、より多くの電力が必要になるでしょう。
電力に関する具体的な対策方法としては、IoTデバイスの選択時に、低消費電力設計の製品を優先して選ぶのが一番でしょう。オペレーティングシステムやファームウェアが、電力消費を最小限に抑えるように設計されていることを確認してください。スリープモードや低消費電力モードが搭載されていれば、さらに長持ちすることでしょう。
またソーラーパネルなどをIoTデバイスに組み込むことで、バッテリー性能に依存せずに長期間運用することが可能になるかもしれません。このような施策が電力供給問題の解決に役立つことでしょう。
機器の故障問題
機器が故障するおそれがある点もIoTの問題点の1つです。機械である以上、故障リスクは避けられません。
例えば工場の機械の監視や稼働を行うIoT機器の場合、利用環境が過酷だと故障しやすいでしょう。高温環境であればオーバーヒートを起こしやすいですし、低温環境であればバッテリーの性能低下や機器の脆弱化を引き起こすかもしれません。仮に温度に問題がなかったとしても、埃や汚れが機器に蓄積し、故障の原因となる場合もあります。場合によっては、電磁干渉を原因とした故障もあり得ます。このようなリスクを考えますと、故障に対する対策も必要でしょう。
対策としては、リモートモニタリング機能を機器に組み込み、リアルタイムでの性能追跡と診断を可能にする方法が挙げられます。各データを分析し、故障の兆候やパフォーマンスの低下を早期に特定できれば、故障を未然に防げるかもしれません。
故障を完全に防ぐことは難しくても、迅速に対応できるようにしておくことで影響を最小限に抑えられます。故障によるトラブル発生のリスクをできる限り低くできるよう、日頃からの対策を行いましょう。
システムダウン時の対策問題
システムダウン時の対策も、IoTの問題点として挙げられます。機器の故障や通信障害などと同じく、システムダウンのリスクは避けられません。
システムに何らかの不具合が生じた場合、システムが稼働しなくなるおそれがあります。例えば機器の故障・セキュリティ攻撃・通信障害以外にも、以下の原因が考えられます。
- 人的ミスが発生した
- 天災が発生した
- ソフトウェアにバグが発生した
システムがダウンしていれば機器や通信環境に異常がなくても、データ処理ができません。場合によっては、データを失うかもしれません。システムダウンに対する対策は必須と言えます。
対策としては、定期的なバックアップを実施するのが良いでしょう。万が一のシステムダウン時にもデータを保護できます。また災害復旧計画を策定し、システムダウンやデータ損失時の具体的な復旧手順と責任者を明確にするのも良いでしょう。より迅速に復旧できるかもしれません。
IoTにてよくある質問を解説
IoTに関するよくある以下の4つの質問を解説します。
- IoTにはどのようなメリットがあるのですか?
- エネルギーハーベスティングとは何ですか?
- エッジコンピューティングとは何ですか?
- IoTはどのような現場で使われていますか?
IoTにはどのようなメリットがあるのですか?
IoTには以下のようなメリットがあります。
- ユーザーの利便性の向上
- 業務の効率化
- 人件費などのコスト削減
- データ収集の容易化
IoTを導入すれば、モノの遠隔操作や遠隔監視などができます。こうした機能を活かし、家電や住宅など日常生活の中にある、さまざまなものにすでに導入されています。例えば、スマートフォンで操作できる照明やエアコンなどのスマート家電が代表的です。IoTの活用により、日常の不便を解消できるでしょう。
また、ビジネスでは業務の効率化やコスト削減効果が期待できます。例えば、工場の機械の稼働状況を常時監視し、異常があれば遠隔で操作して対処するといった活用ができます。人が機械の点検をし、異常時には直接工場へ出向いて対処していた業務を機械で行うことが可能です。
これにより、人が点検したり直接異常へ対処したりする必要がなくなります。トラブルへの対処を効率良く迅速に行えるようになるだけではなく、トラブル対応にかかる人件費などのコスト削減にもつながるでしょう。
また、センサーを通してさまざまな情報を常時取得できる点もIoTのメリットです。人であれば収集に時間がかかったり見落としてしまったりする情報も、IoTではセンサーで取得できます。取得したデータをもとに、自社の課題発見やユーザーニーズの分析が可能です。
このようにIoTは私たちの生活やビジネスを、より便利・効率的にするメリットがあります。
エネルギーハーベスティングとは何ですか?
エネルギーハーベスティングとは、身の回りにある光や熱などのさまざまなエネルギーを電力に変換する技術のことです。ハーベストとは『収穫』を意味する言葉です。電力に変換するエネルギーは、主に以下が挙げられます。
エネルギーの種類 | 具体例 |
---|---|
光 | 太陽光・照明 |
熱 | 人や動物の熱・機械の発する熱 |
振動 | 人やモノが動くときの振動・水洗トイレの流水 |
電波 | テレビやラジオなどの電波・無線LAN |
上記のようなエネルギーは、再生可能エネルギーと呼ばれます。再生可能エネルギーを電力に変換するため、エネルギーハーベスティングは環境発電とも言われます。
化石燃料に依存した発電では、いずれエネルギー資源が枯渇してしまうでしょう。そこで少量の再生可能エネルギーを活用しようとする、環境に優しい技術がエネルギーハーベスティングというわけです。
エッジコンピューティングとは何ですか?
エッジコンピューティングとは、データを収集した機器や機器周辺のコンピューターなどでデータ処理を行う技術のことです。エッジとは『周辺』を意味し、IoT端末や周辺に設置したサーバーなど、ネットワークの周辺を意味します。周辺に設置したサーバーはエッジサーバーと呼ばれます。
従来のIoT機器では、取得したデータをクラウドやサーバーなどに送信、データ処理を行っていました。しかし、データをすべて1箇所に集約すればクラウドやサーバーに負荷がかかるほか、通信回数も増えてしまいます。これにより、ネットワーク回線に負荷がかかり、通信遅延や処理速度の低下が発生するかもしれません。
エッジコンピューティングでは、IoT端末などで一部のデータ処理を行います。クラウドには特定のデータのみを集約するため、その分通信回数の低減が可能です。また、データ処理を端末に近い距離で行うため、レイテンシ※の低減もできます。
※レイテンシとはデータ転送のリクエストから実際に送られてくるまでに生じる、ネットワーク通信における遅延時間のこと。
リアルタイムでの監視やデータ収集のためにIoT機器を使用している場合、レイテンシが大きいと業務に支障が出るおそれがあります。レイテンシの低減をする際に、エッジコンピューティングが役立つことでしょう。
IoTはどのような現場で使われていますか?
IoTはさまざまな現場で活用されています。IoTが活用されている業界例は以下の通りです。
- 医療
- 物流
- 農業
医療現場に関して言えば、患者が身につけているウェアラブル端末での血圧や呼吸数などのバイタルサインのデータの取得です。仮に医師が離れていたとしても、バイタルサインをもとに患者の健康状態を把握でき、疾患の早期発見や治療にも活用されています。
物流の現場では、貨物や車両にIoTデバイスを取り付けて、リアルタイムでの位置追跡や配送状況を監視します。その他にもシステムによっては利用状況やメンテナンスの必要性を数値化し、監視することが可能です。
そして農業の現場では、土壌の湿度・温度・栄養素レベルなどをIoTセンサーで測定し、作物の成長に最適な条件を維持します。例えば土壌の湿度に基づいて自動で灌漑システムを調整し、水の使用効率を最大化できることでしょう。
このように、IoTはさまざまな現場で活用されている技術です。今後、より多くの業界や現場で活躍するかもしれません。
まとめ
IoTは、デメリットも把握したうえで導入・活用しましょう。IoTにはセキュリティ対策や通信障害、故障などによるトラブルリスクがあります。トラブルによってIoT機器が利用できなくなった際、さまざまな影響が起きかねません。
そのため、あらかじめ考えられるトラブルを想定してシステムを設計したり、運用環境を整えたりすることが必要です。デメリットを把握したうえで、安定して運用できるように準備しましょう。
IoTは遠隔操作や遠隔監視などができ、業務の効率化やコスト削減などのメリットも数多くあります。デメリットへの対策を十分に行えば、メリットを享受できる可能性も高まります。
IoTへの対策でお悩みの場合は、ぜひ当社へご相談ください。