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IoTで位置情報を把握・管理・補正!測位サービスの活用事例も解説

IoTで位置情報を把握・管理・補正!測位サービスの活用事例も解説

目次

「IoTで位置情報を取得できると聞いたが本当だろうか?」
「IoTで位置情報を把握する際、どのようなセンサーが使われているのだろうか」

上記のような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。結論から言いますと、IoTシステムで位置情報を把握することは可能です。詳細は後述しますが、まず専用のセンサーが電波・音波などの情報を収集およびデータ化し、サーバーやクラウドに送信します。その後データ処理・分析がされ、専用のアプリケーションやウェブインターフェースを通じて位置情報が表示されます。システム・使い方次第では、業務効率化・コスト削減・顧客満足度向上を期待できます。

そこで本記事では、IoTを用いたデータの取得方法・実現できること・活用事例まで詳しく解説いたします。「IoTを用いて位置情報を把握したい」と考えている方は、ぜひご参考ください。 

センサーを活用!IoTで位置情報を把握

ここではIoTの基本情報や仕組みについて解説いたします。

  • IoTで位置情報を把握することも可能
  • 位置情報センサーとは?
  • IoTの仕組み

 IoTで位置情報を把握することも可能

先述したように、IoTで位置情報を把握することは可能です。位置情報センサーと組み合わせることで、ネットワークを介してセンサーの位置を特定できます。

まず、IoTシステムを大別すると以下の2つが挙げられます。

IoTの種類

役割

操作系IoT

特定のアクションや命令を物理的に実行する

センサー系IoT

環境や物理的なプロセスからデータを収集する

操作系IoTとは文字通り、IoTの活用によって離れた場所にあるものを操作することを指します。身近な例を挙げれば、外出先からエアコンの起動・空調機能を操作するなどです。ネットワークを介して遠方の機械類を操作できるため、ビジネスや日常生活でも幅広く活用されています。

一方でセンサー系IoTは、離れた場所の状況を確認できる機能です。温度・湿度などその場所の状況を測り、ネットワークを介して情報を受け取れます。センサー系IoTもさまざまな場所で活用されています。そして、位置情報の把握はセンサー系IoT、具体的には位置情報センサーが使われています。

位置情報センサーとは?

位置情報センサーとは、モノや人の位置を特定するためのセンサーです。物体の緯度・経度・高度・移動速度などを特定できます。緯度・経度などを特定できるということで、位置情報がわかります。そんな位置情報センサーには以下のような種類があります。

具体例

測定方法

GPS

人工衛星から発信される電波

Wi-Fi

Wi-Fiアクセスポイントの電波強度や周波数

Bluetooth

Bluetoothビーコンの電波強度や周波数

磁気センサー

地球の磁場

加速度センサー

対象の加速度

どれが最適かは、状況によって異なります。例えばGPSであれば、屋外での広範囲にわたる正確な位置特定に適しています。そのため車の位置情報を把握する際に適しているでしょう。

その一方でWi-Fiは、屋内やGPS信号が届きにくい場所で使用されます。具体的には、ショッピングモール・空港・病院など、広い施設内でのナビゲーションや位置追跡に適しています。

一言で位置情報センサーと言っても、このように得手不得手があります。ご注意ください。

IoTの仕組み

IoTの仕組みは、主に5つの要素から成り立っています。

要素

特徴

機器(センサーなど)

インターネットに接続するための通信機能を搭載

ネットワーク

収集されたデータはネットワークを通じて送信

ゲートウェイ

モノとネットワークをつなぐ出入り口として機能

サーバー・クラウド

機器が収集したデータを蓄積・分析・処理

アプリケーション

必要に応じてシステムを制御

機器とは、実際に動作を行ったり、情報を収集したりする機器を指します。本記事においては、位置情報センサーを指すものと考えて良いでしょう。

センサーで集めた情報はネットワーク・ゲートウェイを介して、サーバーやクラウドに送られます。情報を送信することが多いため、ある程度の通信強度が必要になるでしょう。そしてアプリケーションで位置情報を確認できるという仕組みになっています。

 IoTで位置データを取得する方法を解説

IoTで位置データを取得する方法は、大きく分けて以下4つがあります。

  • 電波
  • 音波
  • 磁気

電波

IoTは電波を活用して位置情報を取得できます。代表的な例は以下が挙げられるでしょう。

  • GPS
  • Wi-Fi

GPSは先ほど触れたように、人工衛星から送信される情報を用いてセンサーの位置情報を割り出します。人工衛星は基本的に全世界を網羅しているため、ネットワークが存在すれば場所を問わず利用可能な点が大きな特徴です。

Wi-Fiの場合だと、アクセスポイントに蓄積された統計データを活用して特定されます。街中などにある無料のWi-Fiは、それぞれポイントごとに識別番号があります。この識別番号がある場所と、Wi-Fiの電波を受信する端末間の距離によって位置を割り出しているのです。

どちらも無線で利用できるため、遮蔽物があっても利用できる点が大きなメリットになります。初期の導入コストを抑えられる点も魅力的です。

ただし、地下になると電波が届きにくくなるため利用できないケースもあります。またネットワークに接続するため、セキュリティ面で注意が必要な点も無視できないリスクと言えるでしょう。

音波

音波を利用する場合は、センサーから発信される音波を受信することでセンサーの位置を推定します。音波を用いた位置情報取得技術には、いくつかの方法があります。

  • 超音波測距
  • 音響信号のトライアングレーション

超音波測距は、超音波センサーを使用して、音波が障害物に当たって反射するまでの時間を測定し、そこから距離を算出する技術です。この方法は、特に近距離での精密な位置特定に用いられます。ロボットの障害物回避・自動車の駐車支援システム・物体の位置特定など、多くのアプリケーションで使用されます。

音響信号のトライアングレーションは、複数の音響センサーを使用して、発信源からの音波が各センサーに到達するまでの時間差を計測し、その情報を基に発信源の位置を特定する方法です。この技術はスマートスピーカーなど、複数のデバイス間での位置情報の共有に有効です。

音波を使用した位置情報取得は、電波を使用するGPSと比較して、異なる環境や条件下での利点があります。例えば、建物内や地下のようなGPS信号が届きにくい場所でも使用でき、精度の高い位置情報を取得可能です。しかし、音波を使用する場合は、音響の反響や障害物による影響を考慮しなければなりません。

光でも位置情報を取得できます。例えば以下の方法があります。

  • Li-Fi
  • 光センサーと太陽光

Li-Fiは、可視光通信(Visible Light Communication)を使用して高速データ伝送を行う技術です。この技術を位置情報サービスに応用することで、特定の光源からの信号を基にデバイスの位置を特定できます。特に屋内ナビゲーションシステムで有用で、LED照明が発する光を使って、デバイスの正確な位置を特定することが可能です。例えば、Li-Fi技術を利用してオフィス内の通信網を構築することで、従業員の位置情報に基づいた照明や空調管理が実現します。

 光センサーと太陽光は、外部環境でIoTデバイスが太陽光を利用する場合、光センサーを用いて太陽の位置からデバイスの位置情報を推定できます。この方法は、特に太陽が見える環境下での屋外デバイスに適しています。具体例としてスマート農業のIoTシステムが挙げられるでしょう。水や肥料の使用効率を向上させられます。

光を用いた位置情報測定は、どの方法も高い精度での測定ができるとされていますが、光は直線的にしか進めません。したがって可視光線・レーザーを用いた場合は、対象物の間に遮蔽物があると測定できない点がネックと言えるでしょう。

磁気

位置情報を取得する際、磁気が用いられることもあります。

  • 地磁気
  • 磁気フィンガープリント

地磁気とは、地球自体が生成する磁場のことです。地球が生成する磁場を検出し、その情報に基づき方向を特定できます。簡単に言いますと、コンパスと同じような仕組みです。ナビゲーションアプリケーションなどに利用可能です。

磁気フィンガープリントとは、特定の場所における地磁気のパターンを記録したデータのことです。地磁気とは地球がもつ固有の磁場のことで、地球の磁場は場所によって微妙に異なるため、これらの差異を利用して、特定の場所を識別可能です。屋内ナビゲーションや位置情報サービスにおいて重要な役割を果たす技術です。

磁気センサーを使用することの利点は、GPS信号が届かない場所でも位置情報を取得できる点にあります。しかし使用環境・センサーの品質・周囲の磁気ノイズなどにより、場所によっては誤差が大きくなるかもしれません。

磁気センサーはIoTデバイスの設計や目的に応じて、他の位置情報取得技術と組み合わせて使用されることが一般的です。これにより、より正確で信頼性の高い位置情報サービスを実現できます。

IoTの位置情報取得機能で実現できること

IoTの位置情報取得機能を活用することで、主に以下4つが実現できます。

  • 作業員・製造物・車などの場所を把握できる
  • 動線などを見える化できる
  • 探す時間を削減できる
  • リアルタイムでデータ収集できる

作業員・製造物・車などの場所を把握できる

IoTは、作業員・製造物・車などの場所を把握する際に便利な技術と言えるでしょう。対象にセンサーを貼付するだけで、位置を特定できます。

 IoTの位置情報取得データを用いれば、危険域に作業員が入った場合、アラートを鳴らして注意喚起を行えます。現場でのアラートが難しい場合は、管理室に情報を送り、現場管理人に連絡することも可能です。従来に比べて、安全確保が容易になるでしょう。

また製造物の位置情報を把握できれば、生産物の製造進捗・在庫管理が容易になります。現在どれだけの生産物が、どの製造工程にあるのかを確認できるため、不要な工程や製造過程のつまずきを発見しやすくなります。業務の効率化に貢献できるでしょう

車の位置情報の具体例としては、トラックの現在位置が挙げられます。顧客や運営管理者は、配送物が現在どこにあるかをその場で確認できます。これにより、配送プロセスの透明性が高まり、顧客満足度が向上するでしょう。また、運行状況をリアルタイムで把握することで、配送ルートの最適化・遅延の予測・緊急時の迅速な対応が可能になります。不要な走行距離を減らし、燃料費の削減につながるかもしれません。

動線などを見える化できる

IoTの位置情報取得機能を用いれば、動線などを見える化できます。工場や倉庫内での作業員や機械の動線をトラッキングすることで、作業プロセスの問題点を特定し、効率的な作業フローを設計できます

例えば、ある作業エリアへの物資の搬入ルートが頻繁に渋滞する場合、別ルートの確保や作業スケジュールの調整によって、全体の生産性を向上させることが可能です。

その他にも小売店であれば、小売店内での顧客の動線を分析することで、店舗のレイアウトや商品配置の最適化ができます。特定の商品の周辺に顧客が長く滞在する傾向がある場合、そのエリアを拡張したり、関連商品を近くに配置して売上を増やしたりできます。混雑を避けるためのレイアウト変更や、プロモーション活動の最適化に役立つでしょう。

探す時間を削減できる

何かを探す時間を削減する場合にも、IoTの位置情報取得技術が役立ちます。正確な現在地を事前に把握できるからです。

特に物流倉庫や大規模な製造工場では、建物内を横断するだけでも時間がかかるかもしれません。この広い建物の中から、目的のものを1つ探すのは大変でしょう。場合によっては、結局見つからないかもしれません。しかし1つ1つの備品や資材の場所を事前に把握できるのであれば、探す時間を大幅に削減することが可能です。

また、ものだけではなく、人を探す時間を削減することも可能です。従業員の居場所がわかれば、指示や判断を仰ぐ際に「○○さんはどこにいる?」と人に聞いたり、探し回ったりする時間を削減できます。

リアルタイムでデータ収集できる

リアルタイムでデータが収集できる点も大きな特長です。混雑状況をリアルタイムで把握し、安全対策を講じられます。

例えば、特定のエリアに人が過密に集まり始めた場合、追加の警備員を配置したり、一時的に入場制限をかけたりするなどの対策を速やかに実施できます。また、非常時の避難誘導にも有効です。

他にも、病院内での患者や高齢者の位置情報をリアルタイムで追跡し、必要な時に迅速に対応できます。システムによっては位置情報だけではなく、健康状態をモニタリングすることも可能です。患者にウェアラブルデバイスを着用させ、そのデバイスを通じて心拍数・血圧・体温などのバイタルサインをリアルタイムでモニタリングします。病状の悪化を未然に防ぎ、患者の健康管理しやすくなるでしょう。

IoTの位置情報取得サービスの活用事例

IoTの位置情報取得サービスの事例について解説いたします。

  • 園児の見守り
  • 豪雨発生地点の把握
  • 発送物の現在地確認

園児の見守り

園児の見守りにIoTが使えます。実証実験ではありますが、当社の事例に以下のようなものがあります。

保育園の散歩等、園外活動時に園児にFCS1301を装着し、スマートフォンからアプリを開始するだけで、保育士から⼀定距離以上離れたら、離れた園児の名前がアラート通知され、園児の置き去りを防止します。

引用元:株式会社フォーカスシステムズ|横浜市と「ICTを活用した子ども見守りサービス」の実証実験開始 ~園児・職員・保護者も安心できる保育現場へ~(2024年2月21日時点)

保育士と一定距離以上離れた園児がいる場合、その園児の名前をアラート通知として送信することで、リアルタイムでの監視と即時反応を可能にします。これにより、園児が迷子になるリスクや、置き去りにされる可能性を大幅に減少させることができます。

 豪雨発生地点の把握

豪雨発生地点の把握に、IoT技術が活用されています。

複数の前記ワイパー動作センサから、前記動作情報及び現在位置情報を収集する収集部と、前記収集された複数の動作情報のうち、ワイパーが高速に動作していることを示す動作情報に対応付けられた現在位置情報を統計的に分析することで、豪雨が発生している地点を特定する分析部とを有する、豪雨地点特定システム。 

引用元:特許庁|IoT関連技術に関する事例の追加について|27ページ目(2023年1月30日時点)

このシステムは、車両のワイパー動作センサー、動作情報と現在位置情報を収集する収集部、収集された情報を分析して豪雨発生地点を特定する分析部の3つに分けられています。ワイパーが高速に動作していることを示す動作情報を収集し、これに基づいて豪雨が発生している地点を統計的に分析します。つまり、複数の車両から送信されたワイパーの高速動作データと位置情報を集約し、これらの情報を統計的に分析することで、特定の地域で豪雨が発生していることを特定できるわけです。リアルタイムでの天気状況の監視、特に未予測の豪雨や急な天候変化を捉えるのに有効です。

豪雨地点の特定は、運転安全に関わる情報提供・交通管理・災害対応計画などに利用できます。気象レーダーや衛星データだけでは捉えにくい局所的な天候変化の検出に強みを持ちます。

発送物の現在地確認

送物の現在地確認にIoT技術を用いた事例もあります。

<具体例>
荷物に貼付されたセンサが、位置情報をサーバに送信する。サーバが、上記位置情報とWEB上の道路の混雑状況から、適切な配達経路を配送者に随時提供する。

引用元:特許庁|IoT関連技術に関する事例の追加について|4ページ目(2023年1月30日時点)

荷物に貼付されたセンサーが、リアルタイムで位置情報をサーバーに送信します。これにより、荷物の現在位置が常に追跡可能となり、配送プロセスの透明性が向上するでしょう。

また、サーバーは受信した位置情報と、インターネット上でアクセス可能な道路の混雑状況のデータを組み合わせます。この組み合わせに基づいて、サーバーは適切な配送経路を算出し、配送者に随時情報提供を行います。交通状況に応じた配送経路の最適化が可能になるでしょう。リアルタイムでの道路状況の考慮により、配送者は常に最適なルートを選択できるため、配送効率が向上します。配送時間の短縮や燃料コストの削減を期待できるでしょう。

まとめ

今回はIoTデバイスによる位置情報の確認・追跡について基本情報から事例まで解説いたしました。IoTとつながるデバイスは多岐にわたりますが、センサーも豊富な利用方法があります。「単純に位置がわかるだけ」と考えがちですが、活用方法によっては業務効率を大幅に向上させられます。

ただ、IoTはできることが多いからこそ、不明な点も多くなりがちです。「IoTを取り入れたいが、課題解決のためにどのような仕組みが必要なのかわからない…」とお悩みの方は、ぜひ当社にご相談ください。

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公共・民間ともに多数の実績を残してきました。

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