フォーカスノート
IoTの開発に必要な技術・プログラミング言語は?セキュリティや流れを解説
目次
「IoTの開発には何が必要なのかわからない」
「IoT開発の手順を知りたい」
上記のような疑問や悩みを持っている方もいるのではないでしょうか。IoTは、モノをインターネットにつなぎ、収集したデータをさまざまな方法で活用する技術です。 開発時にはデータ収集や送信技術などを実装する必要があります。そして、センサーやゲートウェイなどを組み合わせてシステムを構築します。
ただし、センサーなどは製品によってできること(データ収集方法など)が異なるため、実現したいIoTシステムに最適なものを選ぶことが大切です。そのためには、IoTに関する専門知識が欠かせません。さらに、スムーズに開発を進めるには開発手順や手法を知ることも大切です。
本記事ではIoTシステムの開発に必要な技術・モノ・開発の流れ・開発手法を解説いたします。IoTの開発でお悩みの方は、ぜひご参考ください。
セキュリティなど!IoTの開発に必要な技術を解説
IoTの開発に必要な技術は主に以下の4つです。
- データの取得技術
- データの送信技術
- データの蓄積技術
- セキュリティ技術
データの取得技術
IoTを開発するには、まずセンサーやカメラなどのデータの取得技術が必要です。IoTはさまざまなデータを取得し、取得したデータを最適な方法で使用します。そのため、必要なデータを取得できるようにセンサーやカメラなどを取り付ける必要があります。
開発時には取得したいデータの種類を検討し、そのデータを取得できるセンサーを取り付けます。ケースによっては、映像や画像を取得するためにカメラを取り付ける場合もあります。
センサーやカメラでは、周辺の環境やモノの動きなどの検知が可能です。さらに、検知した内容をコンピューターが扱えるデータへ変換できます。これにより、効率的なデータ収集が可能です。IoT開発時には取得するデータにあったセンサーやカメラを選定しましょう。
データの送信技術
IoTの開発には取得したデータを、インターネットを介して送信する技術も必要です。取得したデータはインターネットを通してサーバーやクラウドへ集約し、データの分析や活用を行います。また、機器へ指示を出す際にもインターネット通信が必要です。
データを送信する通信機器には、IoTデバイスやIoTゲートウェイなどが挙げられます。また、通信の種類は以下の2種類があります。
- 有線通信
- 無線通信
有線通信は機器同士を通信ケーブルでつないで通信する方法です。一方、無線通信は主に電波を用いて通信します。ケーブルを必要としないため機器の設置箇所の選択肢が広がることから、IoTには無線通信の方が適しているケースもあるでしょう。
また、データ送信を行うには通信プロトコルも必要です。通信プロトコルはコンピューター同士が通信するための決まりのことです。通信プロトコルが異なる場合、データの送受信ができません。IoTデバイスやサーバー・クラウド間での通信プロトコルを決めておくことで、円滑な通信ができます。
IoT開発時には用途や使用環境にあった通信機器や通信プロトコルを選びましょう。
データの蓄積技術
IoT開発には、収集したデータを蓄積する技術も必要です。データを蓄積する場所としては、主に以下の3つが挙げられます。
- サーバー
- クラウド
- エッジコンピューター
サーバーの場合、自社やデータセンターなどに物理的にサーバーを設置してデータを蓄積します。クラウドはインターネット経由で利用できる仮想化されたサーバーです。サーバーは設置にコストや期間がかかる一方、クラウドであれば短期間で導入できます。拡張しやすいため、データ量が膨大になりやすいIoTではクラウドの方が適しているケースもあるでしょう。
エッジコンピューターはIoTデバイス周辺に設置した、データの蓄積や処理を行うコンピューターのことです。エッジコンピューターではサーバー・クラウドへ送るデータとエッジコンピューターが処理するデータを分別して対応できます。IoTデバイスに近い場所でデータの蓄積や処理を行うため、送受信の回数を減らせます。さらに、送受信にかかる時間を短縮することで高速処理の実現が可能です。
データの蓄積技術を選択する際には、導入にかかるコストや期間のほか、データ処理の迅速性なども考慮して選びましょう。
セキュリティ技術
IoTの開発にはセキュリティ技術も欠かせません。インターネットにつながるため、IoT機器がサイバー攻撃を受けるおそれがあります。サイバー攻撃を受けると、情報漏洩や機器の乗っ取りなどの被害が発生するかもしれません。場合によってはIoT機器がサーバーや別サービスへの攻撃に使用されることもあります。
IoTのセキュリティ対策方法の例としては、以下が挙げられます。
- 二段階認証
- 不正アクセス検知
- 異常動作の検知
外部からの侵入を防ぐ対策のほか、攻撃を受けた際にすぐに検知できるような対策も必要です。さまざまなリスクを想定したうえで、必要なセキュリティを施しましょう。
IoTシステムの開発に必要なモノを解説
IoTシステムの開発に必要なモノは主に以下の6つです。
- センサー
- ゲートウェイ
- ネットワーク
- プロトコル
- 専門知識に精通した人材
- 開発言語
センサー
IoT開発にはデータを取得するためセンサーが必要です。IoTデバイスにセンサーを組み込むことで、データの収集ができます。センサーで取得できる代表的なデータは以下になります。
- 温度
- 湿度
- 光
- 音
- 圧力
- 加速度
- モノの動き
温度や湿度などを検知するセンサーは、主に環境の変化を測定するために使用されます。産業機器の稼働状況の監視や異常の検知が可能です。光・音・圧力などを検知するセンサーをスマホやヘルスケア機器などに組み込めば、音声での操作やバイタルサインの検知などに活用できます。加速度やモノの動きを検知するセンサーであれば、ドライブレコーダーや産業用ロボットなどに活用できるでしょう。
ゲートウェイ
IoT開発時にはゲートウェイも必要です。ゲートウェイとは、異なる機器間のネットワーク通信を中継する役割を担うものです。IoTにおけるゲートウェイの主な役割は以下になります。
- IoTデバイスとサーバーやクラウド間の中継
- センサーが取得したデータの変換
- IoTデバイスの動作制御や監視
IoTデバイスには、インターネットに接続する機能が搭載されていないことがあります。ゲートウェイを導入することで、サーバーやクラウドとのインターネット通信ができます。また、センサーが取得したデータを集約し、通信できるプロトコルへ変換することで、円滑な通信が可能です。さらに、サーバーやクラウドから出された指示通りにIoTデバイスの動作制御や監視も行います。
ゲートウェイによってはデータ処理機能も備えたものもあります。データ処理ができる場合、サーバーやクラウドとデータの送受信をする手間を省き、処理内容をもとにしたデバイスの動作制御が可能です。
ゲートウェイの機能や対応している通信プロトコルなどは製品によって異なります。製品ごとの特徴を比較し、使用環境や目的にあった製品を選びましょう。
ネットワーク
IoTを開発するには、ネットワーク環境の構築も必要です。ネットワーク環境を整えることで、円滑な通信・データの蓄積・活用ができます。IoTで用いられるネットワークは大きく分けて以下の2種類があります。
- 直接通信方式
- デバイスゲートウェイ方式
直接通信方式はIoTデバイスやセンサーが直接サーバーやクラウドと通信する方法です。デバイスやセンサーを、直接ネットワークに接続します。無線LANや大手通信会社の回線などを使用するため通信可能な範囲が広いのが特徴です。ただし、消費電力が大きい傾向にあり、回線の利用料も必要なためコスト面での負担が大きいかもしれません。
デバイスゲートウェイ方式はゲートウェイが通信を中継する方法です。デバイスが収集したデータを集約して、ゲートウェイがサーバー・クラウドに送信します。接続時に消費電力が少ない通信方式を利用するため、運用時のコストは抑えられるでしょう。利用する通信方式は、主に以下があります。
- Bluetooth
- LPWA
- Z-Wave
- ZigBee
通信方式によって通信可能な範囲や通信速度は異なります。ネットワークの種類によっても消費電力量やコストが異なるため、導入するIoTにあったネットワークを導入しましょう。
プロトコル
プロトコルもIoT開発時に必要なモノです。プロトコルを決めることで、さまざまなデータを円滑に通信できます。IoTで利用される代表的なプロトコルは主に以下の3つです。
- HTTP(S)
- MQTT
- CoAP
HTTP(S)はWebサイトにも使用されているプロトコルです。汎用性が高く、テキスト・音声・動画などさまざまな種類のデータの送受信ができます。大量のデータのやり取りも可能です。ただし、通信時には機器同士が同期している必要があり、同期できていなければデータの送受信はできません。
MQTTはMQTTブローカーという中継地点を設けて通信するプロトコルです。少量のデータの送受信に特化しており、HTTP(S)のような大量のデータのやり取りはできません。ただし、高速通信や同期していない状態での通信ができ、データのリアルタイム性に優れています。
CoAPはIoTに用いることを想定している軽量のプロトコルです。HTTP(S)と似た仕組みを持っていますが、UDP(User Datagram Protocol)※を使用しているため軽量で高速な通信が可能です。
※UDPは、最小限の仕組みで迅速なデータの送受信ができるプロトコルの一種です。リアルタイム性が保持できる一方、外部からの攻撃に弱い傾向があります。
プロトコルを選択する際には、扱うデータの種類・量・リアルタイム性なども考慮したうえで適切なものを選びましょう。
専門知識に精通した人材
IoT開発時には専門知識に精通した人材の確保も必要です。専門知識に精通した人材がいれば、開発をスムーズに進められます。
IoTを開発するには、ネットワークの構築やシステムのプログラミングなどの知識が必要です。専門知識がない状態で開発しては、最適な機器の選定やネットワークおよびプログラムの構築などができません。希望する機能が備わったIoTの開発は難しいでしょう。
専門知識に精通した人材がいれば、知識をもとにネットワークや通信プロトコルなどを適切に選定できます。ソフトウェアやアプリケーションなどの設計や開発もスムーズにでき、開発を円滑に進められるでしょう。
人材を確保するには、開発にあわせて採用したり外部に委託したりする方法があります。ただし、採用や育成の場合は戦力になるまでに時間がかかるおそれがあります。一方、外部委託の場合は期間をかけずに人材確保できますが、一定のコストが必要です。
人材確保にかけられるコストと開発期間を考慮したうえで、自社にあった人材確保を行いましょう。
開発言語
IoTを開発するには、開発言語も必要です。開発言語とは、ソフトウェアやアプリケーションを開発する際に用いるものです。開発内容や状況によって使われる言語は変わりますが、主に以下のような言語が使用されます。
- Java
- C言語
- Python
Javaはさまざまなシステムやアプリケーションの開発に利用されている言語です。応用力があり、IoTにも利用されています。
C言語は開発言語の中でも長い歴史を持つ言語です。電子機器や産業用機器の制御プログラムに使用されており、IoTでの活用もできます。ただし、複雑なプログラミングになるおそれがある点に注意が必要です。
Pythonは汎用性が高く、短いコードでプログラムが書ける開発言語です。JavaやC言語よりも制約が少なく、柔軟な開発ができます。
開発言語によってプログラミングの難易度や得意分野が異なります。各言語の特徴を把握し、開発するIoTシステムに最適な言語を選びましょう。
IoTシステムを開発する際の流れを解説
IoTシステムを開発する際の流れを以下の5つに分けて解説いたします。
- 要件定義
- 各種設計
- 開発
- テスト
- 運用
1.要件定義
IoT開発時には、まず要件定義を行います。要件定義とはIoTシステムにどのような機能を盛り込みたいかを明確にする作業です。
具体的には以下のような内容を洗い出します。
- 取得したいデータの種類
- データの処理方法
- データの蓄積方法
- ネットワークの接続方法
- セキュリティ対策
洗い出した内容を精査し、システムの全容を決めましょう。要件が固まったら、その内容に基づき導入完了までの各フェーズで行う内容の詳細を決定します。
なお、要件定義を行う際には、システム導入の目的やIoTで実現したいことを明確にしておくことが大切です。目的や実現したいことが曖昧なまま開発を進めると、希望通りのIoTが開発できないおそれがあります。要件定義の段階で、IoTシステムの目的や盛り込みたい機能などを明確化しましょう。
2.各種設計
要件定義の次に、各種設計を行います。設計は大きく分けて以下の2つがあります。
- 外部設計
- 内部設計
外部設計は、IoTデバイスが外部環境とどのように相互作用するかを定義する設計プロセスです。例えば、デバイスの外観・サイズ・色・材質・ユーザビリティ・アクセシビリティなどを決定します。
一方で内部設計では、外部設計の内容に基づきプログラミング内容を細かく指定します。具体的には、プロセッサー・オペレーティングシステム・アプリケーションソフトウェアなどを決めます。詳細に指定することで、プログラミングを行う担当者が取り組みやすくなるでしょう。
3.開発
各設計ができたら、設計内容に基づき開発を行います。主に以下のような取り組みがあるでしょう。
- ファームウェア開発
- バックエンドシステム開発
- フロントエンド開発
ファームウェアの開発であれば、IoTデバイスの基本的な操作と制御を担うファームウェアのコーディングを行います。センサーからのデータ収集機能・アクチュエーターの制御ロジック・デバイスのスリープモードなどを開発します。
バックエンドシステム開発では、データ処理・ストレージ・分析機能を提供するサーバーサイドのアプリケーションなどを開発します。ユーザー管理・デバイス管理・APIエンドポイントの設定などを行うでしょう。
フロントエンド開発では、ユーザーが直感的かつ便利に扱えるようなインターフェイスの開発を目指します。ダッシュボードのデザイン・レスポンシブデザイン・リアルタイムデータの視覚化などを行うでしょう。
ただし、プログラミング時には、設計通りにプログラミングできないケースもある点に注意が必要です。設計内容と開発できることに齟齬がないかを確認しながら、開発を進めましょう。
4.テスト
開発が完了したらシステムのテストを行います。テストは主に以下の3段階で行います。
- 単体テスト
- 結合テスト
- 運用テスト
単体テストでは単一の処理ごとに動作をチェックします。単体テストで問題なく動作すれば、複数の処理を組み合わせて動作確認をする結合テストを実施します。
運用テストは実際の使用環境でシステムの動作確認を行う、最も実用的なテストです。システムの不具合や動作の異常などが発生しないかなどのチェックを行いましょう。
5.運用
テストが完了したら実際に運用します。運用開始時にはユーザー登録やシステム設定などを行いましょう。
運用開始後には、安定した稼働ができるようにシステムの稼働状況を定期的に確認してください。運用中には何かしら不具合やトラブルが発生するかもしれません。通信速度や処理速度などのパフォーマンスの状態が低下したり不具合が発生したりした際には、迅速に対応しましょう。
そして良い状態を維持するためには、定期的なアップデートも必要です。もちろん、サイバー攻撃への備えや監視も必要です。不審なアクセスや作動がないかなどを監視し、攻撃を受けた際には適切な対処ができるように備えておきましょう。
IoTなどのシステム開発における手法を解説
IoTのシステム開発における以下の2つの手法を解説いたします。
- ウォーターフォール型開発
- アジャイル型開発
ウォーターフォール型開発
ウォーターフォール型開発とは、上流工程から下流工程へと開発を進めていく手法です。
- 要件定義
- 設計
- プログラミング
- テスト
- 運用・保守
必要な機能やシステムの仕様などを最初に決め、要件定義の内容に基づき開発を進めます。システムの全容が決まっているため、計画や品質管理がしやすいのが特徴です。明確な要件定義に基づき、計画に則って着実に進められます。
ただし、はじめに計画をしっかりと立てるため、開発の途中で計画の変更をしづらい手法でもあります。また、1つの工程が完了してから次の工程に進めるため、開発期間が長期化しやすい点もデメリットの1つです。
ウォーターフォール型開発は、品質を担保したいプロジェクトに向いています。
アジャイル型開発
アジャイル型開発はスピーディーに開発を進め、随時修正や変更を行う手法です。
機能A | 機能B | 機能C | 機能D |
1.要件定義 | 1.要件定義 | 1.要件定義 | 1.要件定義 |
2.設計 | 2.設計 | 2.設計 | 2.設計 |
3.開発 | 3.開発 | 3.開発 | 3.開発 |
4.テスト | 4.テスト | 4.テスト | 4.テスト |
5.リリース | 5.リリース | 5.リリース | 5.リリース |
※アジャイル型開発では、同時進行で各機能を開発するのが一般的です。
機能ごとに、上記5つの工程を繰り返し行う中で、システムの仕様の変更や修正を行います。計画や仕様を臨機応変に変更できるため、開発しながらシステムのブラッシュアップが可能です。ただし、変更が自由にできる分、スケジュールや進捗の管理が難しいというデメリットがあります。
アジャイル型開発は要件が変化しやすいプロジェクトに向いているでしょう。
まとめ
IoTは、必要な要素やモノを把握したうえで開発を進めましょう。 希望通りのIoTシステムを構築するために、適したセンサーやゲートウェイなどを選定してください。
また、IoTの専門知識に精通している人材の確保も必要です。専門知識をもとに計画や設計を行わないと、希望通りのシステムが開発できないおそれがあります。開発に必要なモノや手順を理解し、専門知識に基づき、適切な方法で開発を進めましょう。IoT開発にお困りの場合は、ぜひ当社へご相談ください。