IoT

IoTは物流にも使える!業界の課題・配送効率化などのメリット・導入事例を解説

IoTは物流にも使える!業界の課題・配送効率化などのメリット・導入事例を解説

目次

「IoTは物流に役立つのかな」
「実際にどのようなシステムがあるんだろう」

 このような疑問を持つことがあるかもしれません。IoTは物流業界にも大いに役立つシステムです。 IoTを導入することで、自動倉庫システムなどの構築が可能であり、入荷・保管管理・出荷などを自動化できます。実際に業務を効率化できている事例もあり、IoTが物流業界における人手不足問題の解決策になるかもしれません。

 そこでこの記事では、IoTと物流業界の課題だけでなく、導入メリット・注目される技術・注意点・事例を解説いたします。ぜひご参考ください。 

 IoTで物流作業を効率化!業界の課題も解説

ここではIoTの基本情報と物流業界の課題を解説いたします。 

  • そもそもIoTとは?
  • 現在の物流業界の課題は?

そもそもIoTとは?

IoT(Internet of Things)とは、機器がデータを収集・送信・共有し、インターネットを通じて相互に連携する技術のことです。わかりやすく言いますと、モノとインターネットをつなげる技術です。

 一般利用だと、エアコンなどの機器がインターネットに接続され、リアルタイムで情報を取得する、スマホなどで遠隔操作できることなどが代表例になります。外出先からエアコンのオンとオフ・温度設定の調整・運転モードの変更などを行え、利便性の向上を期待できます。

 このIoT技術は、物流業界にも役立ちます。さまざまなセンサーやデバイスを利用して、物流プロセスをリアルタイムでモニタリングし、データ収集できるでしょう。例えば、トラッキングセンサーが荷物の位置・温度などを記録し、データをクラウドに送信できます。これにより、荷物の輸送状況を正確に把握し、適切な管理や効率的なルートプランニングを行えるでしょう。

 なおIoTの詳細は以下の記事をご参考ください。
IoTとはモノのインターネットのこと!仕組み・実現できること・導入事例を解説

現在の物流業界の課題は?

現在の物流業界における課題として、人手不足が挙げられます。実際に国土交通省の資料に、以下のような記述がありました。 

物流分野における労働力不足が近年顕在化。トラックドライバーが不足していると感じている企業は増加傾向。2017年は63%の企業が「不足」又は「やや不足」と回答。

 引用元:国土交通省|物流を取り巻く現状について|8ページ目(2024年2月7日時点)

 2017年の古いデータではありますが、63%の企業が、『トラックドライバーが不足』または『やや不足と感じている』と回答しています。これは、物流業界の人手不足が局所的な問題ではなく、多くの企業にとって共通の課題であることを意味します。深刻さを伺えます。

 それに付け加えて、日本は生産年齢人口※の減少が以下のように著しいです。

 ※生産年齢人口とは、15~64歳の人口のこと。

 労働力人口(15 歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は、2022 年平均 で 6902 万人と、前年に比べ5万人の減少(2年ぶりの減少)となった。男女別にみると、男性は 3805 万人と 22 万人の減少、女性は 3096 万人と 16 万人の増加となった。

 引用元:総務相労働局|第1就業状態の動向|1ページ目(2024年2月7日時点)

 2019年以降、生産力に直結する人口が減少し続けています。また先ほどの国土交通省の資料にて『2050年には総人口の約40%が65歳以上になる見通しであり、生産年齢人口は2010年比約3,000万人減となる見通し』と予想されています。このことを踏まえますと、ドライバー不足問題は時間が解決してくれるとは考えにくいでしょう。むしろ悪化するかもしれません。自発的に、何かしらの対策を行うべきです。

 そして、先述したIoTが この課題の解決策になるかもしれません。その理由は次で解説いたします。

 配送業務の効率化など!IoT導入メリット      

ここではIoTの導入メリットを解説いたします。 

  • 配送を効率化できる
  • 作業進捗をモニタリングできる
  • リアルタイムで在庫状況を確認できる

 配送を効率化できる

IoTを導入することで配送業務を効率化できます。トラックにIoTセンサーやGPSを搭載することで、配送車両の位置情報をリアルタイムで把握できるからです。 

どういうことかと言いますと、IoT技術を使って収集される大量のデータを分析することで、配送ルートの最適化が可能です。交通状況や天候情報をリアルタイムで分析し、最も効率的な配送ルートを算出することで、配送時間の短縮が実現します。1人でより多くの配送が可能になり、人手不足の解消に貢献するかもしれません。

 他にも、IoTセンサーやAIなどの技術を活用することで、荷物の積載状況などを把握し、配送トラックの空車率(貨物を積んでいない状態でトラックが走行した距離の割合)を低減させられます。各車の配送効率を最大化できるでしょう。それだけでなく、車両の運転や荷物の積み下ろしなどの作業を自動化することも可能です。これにより、人手不足の解消を期待できます。

作業進捗をモニタリングできる

物流のIoT導入メリットとして、作業進捗をモニタリングできることが挙げられます。収集したデータを活用すれば、作業効率を最適化できます。 

例えば、IoTデバイスは作業者がタスクを開始し終了する時間を正確に記録できるため、作業時間の管理が容易です。これにより、作業効率の分析や改善が可能になり、生産性の向上に貢献できます。

 さらに、作業者の位置情報や作業時間などのデータを収集することで、作業者の安全・健康管理に役立てることができます。例えば、作業者の立ち仕事の時間を把握し、休憩や体操のタイミングを促すことができるでしょう。体調管理によって、従業員の急な病欠などを防げるようになるかもしれません。

リアルタイムで在庫状況を確認できる

IoT導入により、リアルタイムで在庫状況を確認できます。タグやバーコードスキャナーなどのIoTデバイスを使用して、倉庫内の商品の動きを自動で追跡・記録できるからです。

 例えばシステムにもよりますが、バーコードリーダーが設置された棚やパレットに商品を置くと、商品の位置情報がシステムに自動登録されます。商品が保管されている間も、その状態や位置はリアルタイムで追跡可能です。必要な商品を迅速に見つけ出せるでしょう。

 そして出荷指示に基づいて商品がピッキングされると、再びタグやバーコードがスキャンされ、出荷準備の完了がシステムに記録されます。商品がトラックに積み込まれ出荷される際にも、最終的なスキャンが行われ、出荷記録が更新されます。

 ここまで正確にモニタリングをすることで、在庫状況が明確になります。もちろん、この一連の流れはほぼ自動化されているため、業務効率の改善も期待できます。人手不足の解消に役立つでしょう。

自動倉庫システムなど!物流業界にて注目されるIoT技術        

ここでは物流業界で注目される、業務の効率化を実現し得るシステムを解説いたします。 

  • 自動倉庫システム
  • WMS(倉庫管理システム)
  • TMS(輸配送管理システム)
  • RFID
  • 画像認識

自動倉庫システム

自動倉庫システムは、物流倉庫や配送センターにおいて、IoT技術を活用して倉庫内の物流プロセスを自動化するシステムです。システムにもよりますが、自動倉庫システムはセンサー・アクチュエーター(エネルギーや電気信号を物理的運動に変換する装置のこと。簡単に言うとモーターのようなもの)・制御システムが連携して作業を行います。

システムという名前をしていますが、自動倉庫システムはWMS(倉庫管理システム。詳しくは後述)のようにソフトウェア単体を指すのではなく、ロボットやピッキングシステムなども含めた仕組み全体を指します。機械・電子装置・ソフトウェアの集合体のようなイメージです。

 そんな自動倉庫システムを導入すると、作業の自動化が可能です。例えば、商品が倉庫に到着すると、各商品に付けられたタグやバーコードが入荷エリアでスキャンされます。これらのタグには、商品の識別情報(品名・サイズ・色・有効期限など)が含まれます。スキャンされた情報は自動的に在庫管理システムに記録され、該当する商品の在庫レベルをリアルタイムで確認可能です。入荷した商品の数量・種類を、正確に把握できるでしょう。商品情報がシステムに登録されると、自動搬送システム(自動搬送車・自律型移動ロボットなど)が、商品を自動的に仕分けエリアへと移動させます。

 このように自動倉庫システムであれば、業務を自動化可能です。システムによっては入荷だけでなく、ピッキング・出荷作業も自動化できるかもしれません。ヒューマンエラーを減らし、作業効率を大幅に向上させられるでしょう。

WMS(倉庫管理システム)

WMS(Warehouse Management System)は、倉庫内の在庫管理・商品の入出荷プロセス・作業指示の管理などを効率化し、最適化するシステムです。人手を必要とする作業の削減・作業効率の向上・スペースの最適化を通じて、倉庫の運用コスト低減が可能です。 

例えば、登録された商品情報は在庫としてシステムに追加されます。導入したWMSにもよりますが、商品の保管条件やローテーションポリシーに基づいて、適切な保管場所を自動で割り当てられます。各商品がその特性に応じた最適な場所に保管されるため、空間の利用効率が向上するでしょう。

 またWMSを通じて、在庫の状態や場所が常時確認できるため、管理者や作業員は必要な情報をすぐに確認できます。これにより、意思決定の速度と精度が向上するでしょう。

TMS(輸配送管理システム)

TMS(Transportation Management System)は輸配送管理システムです。物流プロセスを効果的に管理し、最適化するために使用されます。輸送計画の立案・実行・モニタリング・最適化までを包括的にカバーすることが可能です。 

例えばTMSは、出荷予定の貨物情報(重量・容積・目的地など)を受け取り、最適な輸送手段(トラック・船・鉄道・航空など)とルートを選定します。従来のように地図を広げて、貨物情報を確認しながら、自分でイチからルートを考える必要はありません。配送時間・商品特性などを考慮し、システムが立案してくれます。

 次に、契約済みの運送業者リストから、特定の出荷条件に最適な業者を選択します。設定にもよりますが、選択基準には契約内容・料金・信頼性・輸送時間などが考えられるでしょう。客観的な判断を下しやすくなり、コスト効率が高く、かつ信頼性の高い業者を選びやすくなるでしょう。

 業者を決めると、システムにもよりますがTMSは自動的に出荷手配を行い、必要な輸送文書(貨物輸送契約・積み込みリスト・送り状など)を生成します。手動で輸送文書を作成する場合に比べて、時間と労力を大幅に削減できるでしょう。その結果、迅速な出荷準備が可能となり、出荷までの時間が短縮されます。

RFID

RFID(Radio-Frequency Identification)は、電子タグに情報を格納し、専用のリーダーまたはリーダーライターを使って非接触でデータを読み書きする技術です。基本的に、RFIDタグ(電子データが保存されているタグ)とRFIDリーダー(タグを読み取る装置)の2つで構成されます。RFIDは、物流の追跡・管理・識別に利用されます。 

例えば、RFIDタグが商品やパレットに取り付けられると、RFIDリーダーでタグから情報を自動で読み取り、リアルタイムで在庫データベースを更新します。これにより、商品の入荷・保管・出荷状況の記録が自動化され、作業効率が大幅に向上します。

 そして何より、商品の移動をリアルタイムで追跡します。管理者は、在庫の正確な位置と数量を常に把握できるため、迅速な意思決定と効果的なスペース利用が可能です。紛失や盗難防止に役立つでしょう。

画像認識

画像認識とは、コンピューターがデジタル画像を解析し、その内容や特徴を理解する技術のことです。カメラやセンサーを用いてリアルタイムで物体やパターンを検知し、データとして処理できます。物流業界では、画像認識技術がさまざまな用途で活用されています。 

例えば、従来の入出庫検品はハンディターミナルでバーコードを読み取るなど、手作業で行われていました。しかし、画像認識技術を用いることで、商品ラベルや伝票の画像を自動で読み取り、検品作業を自動化できます。これにより、作業時間の短縮・人件費の削減・誤検品率の低減を実現できます。

 また画像認識を用いることで、荷物の形状・色・バーコードなどを認識し、自動仕分けを行うことも可能です。撮影された画像データはリアルタイムで解析され、AIや機械学習アルゴリズムなどを用いて、荷物の特徴を正確に識別します。自動仕分け装置やロボットアームは、受け取った情報に従って、荷物を指定されたエリアや配送ラインに正確に振り分けます。手動仕分けに比べて、迅速かつ正確に作業を進めてくれるでしょう。

物流業界は要確認!IoT導入時の注意点         

ここでは物流業界がIoT導入時に注意すべき点を解説いたします。 

  • 現在の通信環境を確認する
  • 高確率で現在の業務フローに変更がある

現在の通信環境を確認する

物流業界がIoT導入時に注意すべき点として、現在の通信環境を確認することが挙げられます。通信環境が悪い場合、IoTが機能しないおそれがあるからです。 

先述したように、IoTはセンサーやネットワークを活用して、リアルタイムでデータを収集・分析・活用する技術です。そのため安定した通信環境がなければ、データの送受信に遅延が生じるかもしれません。特に物流業界だと、倉庫が広大・商品が膨大である可能性が高く、非常に多くのデータを取り扱うことが予想されます。通信速度や帯域幅が不足していると、データの収集・送信・処理に深刻な問題が生じるでしょう。

 通信環境が悪かった場合はエッジコンピューティングを導入しましょう。エッジコンピューティングとは、クラウドやデータセンターではなく、データを収集・生成する現場にて情報処理する技術やアプローチを指します。データの処理をクラウドではなく、データが生成される現場で行うことで、通信量を削減し、レスポンスタイムを短縮できます。これにより、通信環境が悪い場合でも、効率的なデータ処理が可能になるでしょう。通信環境をある程度改善できるかもしれません。

高確率で現在の業務フローに変更がある

IoTを導入すると、現在の業務フローを変更することになるかもしれません。多くの作業が効率化・自動化されるからです。 

例えば、従来の在庫管理は、手作業による棚卸しやデータ入力が中心でした。しかしIoTセンサーやRFIDタグを導入した場合、在庫のリアルタイム追跡と自動更新が可能になります。手動入力をする必要がなくなるということです。この時点で、業務フローに変化が起きているのは明らかです。

そして何より、リアルタイムでのデータ収集・分析機能・監視などの機能を最大限に活用するために、業務フローを最適化する必要があります。単に導入しただけでは、現場にうまくフィットしないおそれがあるからです。導入するIoT機器にあわせて、業務フローや業務内容を柔軟に変更する必要があります。

 この際の注意点として、業務フローの変更は、現場からの反発を招くかもしれません。必要とされるスキルも変化する可能性が高いからです。今まで培ってきた知識やスキルが重要ではなくなるおそれがあるため、現場から反対の声が上がるかもしれません。

 そのためIoTを導入する際は、現在の課題・IoT機器の必要性と重要性を、現場にもしっかりと理解してもらうことが重要です。導入に対する同意を得て、彼らの意見を反映したIoT機器を導入するのが良いでしょう。現場の意見も反映させることで、IoTの導入に納得してくれるかもしれません。

物流業界のIoT導入事例を解説        

ここでは物流業界のIoT導入事例を解説いたします。              

  • 物流業界への導入事例その1
  • 物流業界への導入事例その2

物流業界への導入事例その1

当社の事例(厳密には工場内の物流であり、かつ実証実験)の中に、以下のようなケースがあります。

 物流における在庫位置の特定

指向性機能を高めたBLE受信機により、発信機であるBLE(*2)ビーコン(FCS1301、timbe)を付帯した物流在庫が工場内のどの位置にあるか特定し、データ収集をおこないます。

 (*2) BLE(Bluetooth Low Energy)は低消費電力で近距離無線通信ができるBluetooth規格です。 

 工場内のネットワーク構築

工場のようなLAN構築が難しい環境におけるビーコンの発信データの収集は、LPWA技術を用いることで解決します。名古屋工業大学大塚研究室が開発したLPWA通信モジュール(LoRaPAN)は通信キャリアを必要としないプライベートネットワーク形態のため、LPWA通信が可能な受信機を使用することで、広範囲ネットワークをシンプルに構築できます。

 引用元:株式会社フォーカスシステムズ|BLEビーコンとLPWA技術による広域位置測位システムでの 工場内物流の効率化に向けた実証実験を開始(2023年2月7日時点)

 この事例では、労働力の高齢化・人手不足・品質管理の改善が主要な課題として指摘されていました。これらの課題に対応するために、IoTとデジタル技術の導入に注力しました。

 使用されている位置情報ビーコン『FCS1301』と『timbe』は、広範囲にわたる通信能力を持ち、工場内の物流在庫の正確な位置を把握し、データを収集する機能を提供します。データの損失リスクを軽減し、位置情報システムの精度を高めることが期待されます。

物流業界への導入事例その2

物流に導入した事例は他にもあります。 

物流
例)リアルタイム追跡

 引用元:特許庁|IoT関連技術等に関する事例の充実化について|5ページ目(2024年2月28日時点)

 リアルタイムで荷物や車両の正確な位置を追跡することで、顧客に対してその場所を正確に伝えられます。この透明性は、顧客満足度の向上につながるかもしれません。また、輸送ルートの最適化・交通渋滞に関するアラート・迅速な代替ルートの選択を通じて、運送効率の向上を期待できます。

まとめ      

ここまでIoTと物流の解説をしてきました。IoTを活用することで、業務の効率化を実現できます。配送業務のスピード向上やコスト削減を期待できるでしょう。 特に自動倉庫システムなどの最先端技術は、在庫管理や出荷プロセスの自動化によって、物流業界の課題を解決する鍵になり得ます。

 しかし、導入にあたっては、通信環境や現場の声に注意を払う必要があります。IoT技術を導入する際は、これらを事前に確認し、慎重かつ計画的に実行することが重要です。もしIoTの導入を検討している場合は、当社にご相談ください。

残してきた実績

設立から48年。
大切なものにフォーカスしてきたからこその実績があります。
公共・民間ともに多数の実績を残してきました。

年間プロジェクト数

500PJ

年間取引先・顧客数

200

最長取引年数

47

延べ資格取得者数

1,870