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IoTのビーコン(Beacon)とは?メリット・GPSとの違い・活用事例を解説

IoTのビーコン(Beacon)とは?メリット・GPSとの違い・活用事例を解説

目次

「IoTのビーコン(Beacon)って、なに?」
「IoTのビーコンを活用する際に注意すべきことを知りたい」

 IoTのビーコンの導入を検討している方の中には、上記のような疑問を持っている方もいることでしょう。 IoTのビーコンは、Bluetoothを使用して近距離での無線通信を行う端末のことです。ビーコンから信号を発信し、その信号を受信できる端末に対して情報の配信や位置情報の発信を行います。小売店での販促活動やモノの紛失防止など、さまざまな場面で活用されています。

 ただし、ビーコンはBluetooth機能がある端末としか通信できなかったり、環境によって通信が不安定になったりするなどの注意点もあります。そのため、導入する際にはビーコンの特徴を理解することが必要です。

 本記事ではIoTビーコンの特徴・できること・活用時の注意点・導入事例・よくある質問を解説いたします。IoTのビーコンでお悩みの方は、ぜひご参考ください。

 IoTのビーコン(Beacon)とは?

IoTのビーコン(Beacon)とは何かを、以下3つの項目で解説いたします。 

  • ビーコン(Beacon)とは?
  • ビーコン(Beacon)の仕組み
  • ビーコン(Beacon)とGPSの違い

ビーコン(Beacon)とは?

ビーコン(Beacon)とは、近距離での無線通信ができる端末のことです。半径数メートルから数十メートルの近距離に信号を発信し、範囲内にある端末と通信します。本来、ビーコンとは『のろし』や『灯台』などの目印を意味する言葉であり、信号を出して何かを誘導する指標になるものを指します。 

ビーコンの具体例としては、道路の交通情報を提供するVICS(道路交通情報提供システム)や、雪崩に巻き込まれた際に救難信号を出せる雪崩ビーコンなどがあります。ただ、IoT分野での普及に伴って意味合いが若干変わり、近距離での無線通信による情報の収集や発信ができる端末のこともビーコンと呼ぶこともあります。

 ビーコンに搭載されているのは、基本的にBLE(Bluetooth Low Energ)という近距離無線通信規格のBluetoothです。BLEは従来のBluetoothよりも省電力での通信ができ、ボタン電池での稼働もできます。電力消費量が少なく、コストを抑えられます。

 Bluetoothでの通信が可能な機器であれば、ビーコンが発信した情報の受信が可能です。Bluetoothは、多くのスマホやスマートウォッチなどのウェアラブル端末に標準機能として搭載されています。ビーコンと通信できる端末の普及に伴い、IoTでの活用が注目されています。

ビーコン(Beacon)の仕組み

ビーコン(Beacon)は、主に以下の流れで情報の送信や位置情報の取得をする仕組みになっています。 

  1. 一定の時間間隔で信号を発信
  2. 信号が届く範囲内にいる受信端末へ情報を送信
  3. 通信した受信端末の位置情報を取得
  4. 位置情報をサーバーへ送信

 ビーコンが通信できるのは、ビーコンが発信する信号を受信できる機能がある端末のみです。先述した通り、ビーコンの無線通信はBluetoothで行われるため、スマホなどでビーコンが発した情報を受け取れます。一定の時間間隔で信号を発信し、発信したタイミングで信号が届く範囲内にいる受信端末へ情報を送信します。

 また、受信端末を感知して位置情報をサーバーへ送ることも可能です。サーバーに送られた位置情報は、施設内の混雑状況や人の位置の把握などにも活用できます。

 例えば、美術館や博物館の音声ガイドでは、専用端末を持つ人の場所にあわせてガイドを流せます。従来の音声ガイドは、再生すると利用者が観覧している作品や場所に関係なく流れるのが一般的でした。ビーコンを活用すれば、専用端末の位置情報をもとに展示物にあった内容を流せます。

ビーコン(Beacon)とGPSの違い

ビーコン(Beacon)とGPSはどちらも特定の端末の位置情報の取得ができますが、信号の発信源と範囲が異なります。 

ビーコンの場合、ビーコンそのものが信号を発信し、受信端末を感知することで位置情報の取得が可能です。ビーコンで通信できる距離は近距離に限られているため、建物内などでの位置情報の取得に向いています。

 一方、GPSは人工衛星が発する信号を利用して端末の位置情報を把握します。GPSでできるのは、広い範囲での位置測定です。例えば、屋外を移動する際にスマホなどのGPSをつけていれば、移動しながら自分の位置を把握できます。

 ただし、衛星からの電波は、屋内や地下などの障害物があると遮断されてしまい端末に届きません。雲が多く天気が悪い場合にも、電波が雲に遮断されて正確な位置情報が取れないこともあります。GPSは屋外の障害物がない場所を移動する際の使用が適していると言えるでしょう。

 このように、ビーコンとGPSは信号を利用できる距離や環境が異なります。位置情報の取得をする際には、それぞれの特徴を把握したうえで利用しましょう。

  IoTのビーコン(Beacon)を活用してできること

IoTのビーコンを活用してできることとして以下の4つを解説いたします。 

  • 店舗での情報発信
  • 紛失防止
  • 児童や高齢者の見守り
  • 人やモノの位置情報取得

 店舗での情報発信

IoTのビーコンは店舗での情報発信に活用できます。店舗を訪れた顧客が持つスマホに対して、ビーコンから情報発信が可能です。 

通常、店舗のセール情報やクーポンなどは店舗のWebサイトやSNSなどで配信されています。この場合、顧客が直接WebサイトやSNSへアクセスしなければセール情報などを把握できません。チラシやWeb広告を利用した販促であれば不特定多数へのアプローチができますが、購買意欲を持っているユーザーへ情報が確実に届くかは不明です。

 しかしビーコンであれば、店舗内の顧客が持つスマホへ情報を直接届けられます。店舗を訪れているユーザーは購買意欲が比較的高いと考えられるため、効率的な販促活動ができるでしょう。

 なお、ビーコンで発信した情報は専用のアプリで確認できるため、受信端末側のスマホに専用アプリがダウンロードされている必要があります。専用アプリがダウンロードされていなければ情報を送れません。

 そのため、情報発信を目的としてビーコンを導入する場合、専用アプリの開発や周知が必要です。ビーコン導入時には、アプリの開発にかかるコストや期間なども考慮して導入を進めましょう。

紛失防止

紛失防止にもIoTのビーコンが役立ちます。ビーコンの位置情報を感知する機能を活用することで、ビーコンと紐付けたモノの場所の把握が可能です。 

ビーコンはさまざまな種類やサイズがあり、鍵や財布などの小さなモノに対しても取り付けられます。紛失しやすいモノにビーコンを取り付けることで、スマホでビーコンの位置情報の確認が可能です。スマホへアラートを表示する仕様があれば、置き忘れや落とし物も防止できます。これにより、貴重品などの紛失を防げるでしょう。

 また、物品が不正に持ち出された際に管理者へ通知が入る設定にしておけば、盗難防止にもつながるでしょう。

児童や高齢者の見守り

IoTのビーコンを活用すれば、児童や高齢者の見守りも可能です。見守りたい対象の位置情報を取得することにより、現在地や過去の行動履歴の確認ができます。

 キーホルダー型やお守り型のビーコンを対象が身につけ、自宅や地域の施設などに受信端末を設置することで、位置情報の取得が可能です。ビーコンが取得した位置情報は連携させたスマホで確認できます。

 具体的な活用方法は以下になります。 

  • 小学生の登下校時の位置情報の把握
  • 混雑する場所での迷子防止

 例えば、小学生のランドセルにキーホルダー型のビーコンを取り付け、子どもの登下校を保護者にお知らせするといった活用ができるでしょう。商業施設などの人混みで子どもとはぐれてしまった際にも、ビーコンで位置情報を取得すれば見つけやすくなります。

 このように、ビーコンの位置情報取得機能を活用すれば、児童や高齢者の見守りが可能です。見守りやすくなることで日々の生活をより安心して過ごせるでしょう。

 ただし、見守りを目的とするビーコンを開発する場合は、受信端末を複数箇所に設置するために地域との連携が必要不可欠です。アプリやビーコンの開発とあわせて、地域や行政への働きかけを行いましょう。

人やモノの位置情報取得

これまで解説したように、IoTのビーコンは人やモノの位置情報の取得に役立ちますが、先述した店舗情報の送信・紛失防止・見守り以外にも幅広く活用可能です。

 例えば、店舗内の顧客の移動パターンを分析する際に、ビーコンで取得した位置情報を活用できます。ビーコンでは、顧客が店舗に入ってからの移動経路や立ち止まった場所などの情報が取得できます。これらの情報を分析すれば、店舗内のレイアウトの見直しや販促する商品の選定などに活用できるでしょう。

 また、工場やオフィス内に複数のビーコンを設置すれば、従業員やモノの位置情報の可視化も可能です。例えば、倉庫内にビーコンを設置することで、商品が保管されている棚や保管されている量などのデータを取得できます。場所や個数を直接確認しなくても、正確な情報を把握できるため、業務の効率化を実現できるでしょう。

 社員証や制服などにビーコンを取り付ければ、従業員の位置情報が取得できます。勤怠管理に活用できる他、行動履歴から作業を効率化するための改善策の検討などもできるでしょう。

ビーコン(Beacon)活用時の注意点

ビーコンを活用する際の注意点は以下の3つです。 

  • 相手端末がBluetoothをオンにしていないかもしれない
  • ㎝単位の細かい情報の取得は難しいかもしれない
  • 金属が多い環境ではうまく動作しないかもしれない

相手端末がBluetoothをオンにしないかもしれない

ビーコン活用時には、相手端末がBluetoothをオンにしていないかもしれないことに注意しましょう。Bluetoothがオンになっていない場合、通信ができません。 

先述した通り、ビーコンの無線通信はBluetoothによって行われます。通信するには受信端末側のBluetoothの機能が備わっているだけではなく、設定がオンになっていなければなりません。スマホを受信端末として想定する場合、Bluetoothがオンになっていない可能性があります。これにより、スマホへの情報発信ができず想定通りに活用できません。また、人やモノの位置情報を取得する場合も、何らかの理由により端末のBluetoothがオフになり、うまく活用できないおそれもあるでしょう。

 Bluetoothのオン・オフの問題を解決するには、Wi-Fiによる通信にも対応したビーコンを活用する方法があります。Wi-Fiであれば日常的に使用されている可能性が高い、つまり設定がオンになっているかもしれません。これにより情報の配信がしやすくなるでしょう。

 このように、Bluetoothがオンになっていなくても通信できるビーコンが登場しています。ビーコンを活用する際には、相手端末の設定も考慮したうえで、うまく活用できるものを選びましょう。

㎝単位の細かい情報の取得は難しいかもしれない

ビーコンではcm単位での細かい情報の取得は難しいかもしれないことにも注意が必要です。ビーコンは近距離での通信を行いますが、通信可能範囲にはある程度の幅があります。

 先述した通り、ビーコンの通信範囲は半径数メートルから数十メートルです。この範囲内にある受信可能端末と通信を行います。通信可能範囲内にある端末とビーコンの距離を正確に取得することは難しく、取得した位置情報には多少の誤差が生じます。通信状況が悪いと、通信がよりうまくできず情報の精度が下がるでしょう。こうした理由から、cm単位での細かな情報の取得は難しい可能性があります。

 なお、製品によっては通信範囲を狭め、よりピンポイントでの通信が可能な場合もあります。ピンポイントで情報を取得したい場合には、通信範囲が狭いものをあえて選ぶと良いかもしれません。この辺りは事業者に相談してみてください。

 また、cm単位での情報の取得の必要性を再検討するのも1つの手です。情報の種類によっては、細かい情報の取得が必ずしも必要ではない可能性もあります。取得したい情報の種類や性質などに基づき、ビーコンの通信範囲に注目して最適なものを選びましょう。

金属が多い環境ではうまく動作しないかもしれない

ビーコンは金属が多い環境ではうまく動作しないかもしれないことにも注意しましょう。Bluetoothは金属による電波の反射や干渉を受けるおそれがあります。

 例えば、金属が多い工場内での人やモノの位置情報取得のためにビーコンを活用した場合で考えてみましょう。金属による反射や干渉を受けてビーコンがうまく動作せず、欲しい情報が取得できません。また、金属だけではなくコンクリート壁によって通信が遮られることもあります。

 そのため、ビーコンは金属やコンクリートなどの障害になるものがない環境での使用が望ましいでしょう。障害物が多い環境で使用する場合は、障害物による反射や干渉を考慮したうえで、アンテナを設置するといった対策が必要です。ビーコンを導入する際には、周辺の環境を確認したうえで設置場所を検討しましょう。

業界必見!ビーコン(Beacon)導入事例を解説

ここではビーコンの導入事例を解説いたします。 

  • ビーコン(Beacon)の導入事例その1
  • ビーコン(Beacon)の導入事例その2

 ビーコン(Beacon)の導入事例その1

当社の事例(厳密には実証実験)の中に、以下のようなケースがあります。 

物流における在庫位置の特定

指向性機能を高めたBLE受信機により、発信機であるBLE(*2)ビーコン(FCS1301、timbe)を付帯した物流在庫が工場内のどの位置にあるか特定し、データ収集をおこないます。

 (*2) BLE(Bluetooth Low Energy)は低消費電力で近距離無線通信ができるBluetooth規格です。 

 工場内のネットワーク構築

工場のようなLAN構築が難しい環境におけるビーコンの発信データの収集は、LPWA技術を用いることで解決します。名古屋工業大学大塚研究室が開発したLPWA通信モジュール(LoRaPAN)は通信キャリアを必要としないプライベートネットワーク形態のため、LPWA通信が可能な受信機を使用することで、広範囲ネットワークをシンプルに構築できます。 

引用元:株式会社フォーカスシステムズ|BLEビーコンとLPWA技術による広域位置測位システムでの 工場内物流の効率化に向けた実証実験を開始(2023年2月8日時点)

 この事例では、高齢化した労働力・人手不足・品質管理の向上が重要な問題点として挙げられています。これらの問題に対処するため、IoTとデジタル技術に力を入れています。

 

位置情報を提供する『FCS1301』と『timbe』ビーコンは、広範囲の通信機能を備えており、工場内の物流在庫の精確な位置情報の把握やデータ収集が可能です。これにより、データ損失のリスクを減少させ、位置情報システムの正確性向上を期待できます。

ビーコン(Beacon)の導入事例その2

実証実験ですが、当社の事例に以下のようなものがあります。 

保育園の散歩等、園外活動時に園児にFCS1301を装着し、スマートフォンからアプリを開始するだけで、保育士から⼀定距離以上離れたら、離れた園児の名前がアラート通知され、園児の置き去りを防止します。

 引用元:株式会社フォーカスシステムズ|横浜市と「ICTを活用した子ども見守りサービス」の実証実験開始 ~園児・職員・保護者も安心できる保育現場へ~(2024年2月27日時点)

 保育士から一定距離離れた園児の名前をアラート通知として送信することで、監視と対応をリアルタイムで行えます。園児が迷子になるリスクや置き去りにされる可能性を低減できるでしょう。

IoTのビーコン(Beacon)関連でよくある質問

IoTビーコンに関連するよくある以下の2つの質問を解説いたします。 

  • そもそもIoTとは何ですか?
  • iBeaconとは何ですか?

そもそもIoTとは何ですか?

IoTとは『Internet of Things』の略で、日本語では『モノのインターネット』と訳される技術です。従来はインターネットにつながっていなかったあらゆるモノをインターネットにつなぎ、さまざまな場面で活用されています。IoTでできるのは主に以下になります。 

  • 遠隔操作
  • 遠隔監視
  • モノ同士での通信

 上記の機能を活用し、IoTは以下の家電製品などに導入されています。 

  • エアコン
  • 照明
  • 掃除機ロボット
  • 見守りカメラ
  • 冷蔵庫
  • 給湯器

 外出先からエアコンの操作をするなど、日常生活のあらゆる場面で利用されています。IoTを活用した家電はスマート家電と呼ばれ、消費者の利便性の向上につながっています。 

また、IoTはビジネスにおいても、以下のような分野で活用されている技術です。 

  • 製造業
  • 物流業
  • 医療
  • 農業

 製造業であれば産業用機器の稼働状況の遠隔監視や操作、物流業では荷物の入出荷管理や保管場所の温度管理などで活用できます。IoTの活用により、これまで多大な労力やコストがかかっていた業務の効率化や省人化が可能です。従業員の作業内容や現場の状況の可視化もでき、課題の発見にも活用できます。

 なおIoTの詳細は以下の記事をご参考ください。
IoTとはモノのインターネットのこと!仕組み・実現できること・導入事例を解説

 iBeaconとは何ですか?

iBeacon※とはアメリカのApple社が開発した、BLEを使用した無線通信の技術やビーコンのことです。

 ※Apple社の商標もしくは登録商標です。

 iBeaconを利用するために必要なのは、以下の3要素です。 

  • ビーコン端末
  • 受信端末
  • iBeacon対応アプリ

 iBeaconを利用するには、ビーコン端末の他にデバイスやiBeacon対応アプリが必要です。iBeaconが実用化されたデバイスには、基本的に対応アプリが標準搭載されています。デバイスを所有している顧客に対してプッシュ通知を送信したり、ユーザーの行動履歴を分析したりといった活用が可能です。 

まとめ

IoTのビーコンは、ビジネスや日常生活のさまざまな場面で活用できるものです。 ビジネスであれば店舗を訪れた顧客に対してセール情報やクーポンを配信したり、従業員やモノの位置を把握したりできます。日常生活であれば、忘れ物や置き忘れによるモノの紛失防止・子どもおよび高齢者の見守りへの活用が可能です。

 ただし、ビーコンの使用環境や受信端末の状態によっては、正確な情報が取得できなかったりうまく動作しなかったりすることもあります。ビーコンをうまく活用するには、設置場所の環境や利用目的にあった製品を選びましょう。

 ビーコンの活用方法や製品選びで悩んでいる場合は、ぜひ当社へご相談ください。

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