業務効率化と生産性向上は違う?メリット・取り組みポイント・注意点を解説

業務効率化と生産性向上は違う?メリット・取り組みポイント・注意点を解説

目次

「業務効率化と生産性向上の違いは?」
「生産性向上を目指す際に、注意すべきことがあれば知りたい」

業務の効率化や生産性の向上を目指しているとき、上記のような疑問を抱く方もいるでしょう。 結論を言うと、業務効率化と生産性向上は異なるものです。詳しくは後述いたしますが、両者は施策の目的に違いがあります。

とは言え、業務効率化は生産性向上につながる場合もあります。取り組み方次第では、業務を効率化させた結果、生産性を大きく向上させられるかもしれません。そうなると、どのように取り組むと効果的なのかが気になるところです。

そこでこの記事では、業務効率化と生産性向上の違いだけでなく、生産性の向上が求められる理由・メリット・方法・取り組む際の注意点を解説いたします。業務の効率化・生産性の向上を目指している方は、ぜひご参考ください。

業務効率化と生産性向上の違いを解説

まずは、業務効率化と生産性向上の違いや、生産性に関して詳しく解説いたします。

  • 業務効率化と生産性向上の違い
  • そもそも生産性とは?
  • 生産性を向上させる際に使える補助金

業務効率化と生産性向上の違い

業務効率化と生産性向上の違いは、施策の目的にあります。

業務効率化の目的は、業務上のインプットを削減することです。インプットとは、業務に必要な労働力・原材料・設備などの経営資源を指します。インプット削減のためには、基本的にITツールの導入やアウトソーシングの活用といった施策を取ります。

その一方で生産性向上は、インプットを抑えつつ、アウトプットを最大化することを目的としています。アウトプットとは、モノやサービスなどといった成果物のことです。具体的には生産数量・販売金額などを指します。アウトプットに対するインプットが少ないほど利益が大きくなるため、企業の成長には生産性向上が不可欠といえるでしょう。

このように、業務効率化は『インプット削減』に焦点を当てており、生産性向上は『インプットの最小化およびアウトプットの最大化』を目的にしています。そのため、両者は別物と言えるでしょう。しかし、業務効率化はアウトプットにかかるインプットを減らせるため、取り組み方によっては生産性向上の施策の1つになり得ます。

そもそも生産性とは?

生産性とは、投資した資源に対して得られるモノやサービスの相対的な割合を指します。生産性の計算式は以下の通りです。

生産性=モノ・サービスなどの産出物÷投入資源

モノやサービスを生み出すにあたり、投入資源をどの程度活用できているかを示すものが生産性です。投入資源を有効活用できているほど、生産性が高い状態と言えます。

そもそも、企業が経営を続けるには、利益の確保が不可欠です。当然ながら、少ない投資資源で多くのアウトプットを得られる方が、利益の増加につながります。そのため企業は自社の生産性を確認し、必要に応じて、継続的に改善をすることが重要です。

生産性を向上させる際に使える補助金

生産性を向上させる際に使える補助金は、主に以下が挙げられます。

ものづくり補助金

ものづくり補助金中小企業等による新商品・サービス開発、プロセス改善のための設備投資等を支援
補助額(原則)100万~1,000万円
補助率中小1/2 小規模2/3

IT導入補助金

中小企業等によるバックオフィス効率化等のためのITツール導入を支援
補助額30万~450万円
補助率1/2

持続化補助金

小規模事業者等による販路開拓等を支援
補助額~50万円
補助率2/3

引用元:経済産業省|中小企業のデジタル化に向けて|13ページ目(2024年2月16日)

ものづくり補助金とは、生産性向上に必要な設備投資に活用できる補助金です。中小企業・小規模事業者を対象としています。

IT導入補助金は、ITツールの導入を支援する補助金です。導入目的やソフトウェアによって申請できる型が異なります。

持続化補助金とは、経営の持続的な成長や競争力の強化を目指した取り組みを支援するための補助金です。中小企業や小規模事業者が主な対象であり、業種を問わず申請が可能です。ただし、補助金の種類によっては、特定の条件を満たす必要がある場合もあります。

自社にあてはまる補助金を見定めて申請しましょう。

生産性向上が求められる理由を解説

生産性の向上が求められる理由は、主に以下の2つです。

  • 少子高齢化の対策
  • 国際的な競争力の向上

少子高齢化の対策

生産性向上が求められる理由として、少子高齢化が挙げられます。生産性を上げることにより、少ない人数でもアウトプットの維持および向上が可能になるからです。

総務省は1995年以降、働き手として考えられる15歳以上65歳未満の人口が減少し続けていることを発表しています。2050年の働き手人口は、2021年の数値から29.2%減少した5,275万人になる見込みです。

少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれている(図表2-1-1-1)。生産年齢人口の減少により、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など様々な社会的・経済的課題の深刻化が懸念される。

引用元:総務省|第1部 特集 情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~(2024年2月16日)

上記データから、働き手の減少が今後顕著になる確率はかなり高いでしょう。現在よりも深刻な人材不足に陥ることが予想され、新たな人材の確保が難しくなるかもしれません。そのため、少ない人数でもアウトプットを維持・向上できるように、生産性を高める必要があるのです。

国際的な競争力の向上

国際的な競争力の向上も、生産性向上が求められる理由の1つです。そう言うのも日本は、以下のようにG7の中で労働生産性が最も低くなっています。

国名実質労働生産性※1(ドル)名目労働生産性※2(ドル)

フランス

62.9

68.2

ドイツ

62.8

69.1

アメリカ

62.0

66.5

イタリア

52.1

57.2

カナダ

49.1

51.7

イギリス

47.6

51.1

日本

42.4

45.9

参考元:厚生労働省|日本の人口・就業状況と労働生産性、新技術の導入状況等について|5ページ目(2024年2月16日時点)

※1:実質労働生産性は、物価の変動を除外して計算される生産性の指標です。
※2:名目労働生産性は、物価の変動を含む形で計算される生産性の指標です。

上記はG7に限った話です。しかし、そうだとしても日本の労働生産性は高いとは言えないでしょう。上記データに基づくと、フランスは日本の約1.5倍の労働生産性です。日本にとって、あまり好ましくない状況と言えます。

それに加えて、昨今はビジネスのグローバル化が進んでいます。今後、海外企業との競争はますます激しくなるでしょう。競争で生き残るには、フランスやドイツなどと遜色ないほどの労働生産性が不可欠だと言えます。

企業必見!生産性を向上させるメリット

企業が生産性を向上させるメリットは、主に以下の4つが挙げられます。

  • 労働環境を改善できる
  • よりコアな業務に専念できる
  • コストを削減できる
  • DXを促進できる

労働環境を改善できる

生産性の向上は、労働環境の改善につながるメリットがあります。なぜなら生産性の向上には、業務に『ムリ・ムラ・ムダ』がないかを見直し、インプットを削減することが必須だからです。

例えば、勤務時間内に割り当てられた業務が完了せず、長時間労働が続いている従業員が多いとしましょう。このままでは労働時間に対する人件費が増えるため、生産性が低くなってしまいます。業務内容の見直しやシステムの導入などで業務を効率化できれば、長時間労働や労働環境の改善につながるでしょう。働きすぎによる過労やストレスを減らせるため、従業員満足度が高まることも期待できます。

また、労働環境の改善は、職場の雰囲気をポジティブなものに変えることが可能です。結果的には従業員のエンゲージメントを高め、離職率の低下にもつながるでしょう。

よりコアな業務に専念できる

よりコアな業務に専念できることも、生産性向上によるメリットの1つです。生産性を高めることで時間に余裕ができ、それをコア業務に充てられるからです。

例えば、データ入力や照合などの業務は、人間ではなくても対応できます。システムで自動化して作業時間を削減すれば、その分時間や人的リソースに余裕を持てるでしょう。余裕ができれば、クリエイティブな思考が求められる業務や戦略の立案など、より付加価値の高い業務に専念できます。

コア業務に専念すると、企業は競争力を高めることが可能です。モノやサービスの質が向上し、市場での独自性や優位性を確立することにつながります。また、従業員のスキルを最大限に活かすことにもつながるため、モチベーションやパフォーマンスの向上にも寄与するかもしれません。

コストを削減できる

生産性の向上を図ることは、コストの削減につながります。

例えば、労働生産性が向上すると、同じ作業を行うのに必要な時間が減少します。これにより、人件費の総額が減少するかもしれません。また、生産プロセスが効率化されると、材料の使用が最適化され、廃棄物が減少する傾向にあります。その結果、廃棄コストを削減できるでしょう。

それだけでなく、生産性の向上は、設備の使用効率を高めることも意味します。設備投資の回収期間が短縮され、設備に関する固定費の割合が減少するかもしれません。

ただし、生産性向上には初期投資が必要な場合があります。例えば、新技術の導入や従業員の研修にはコストがかかります。これらの投資が将来的なコスト削減につながるかどうかは、その投資の質と実施される改善策の効果次第です。

したがって、生産性の向上はコスト削減に直接的・間接的に貢献する可能性がありますが、その達成には適切な投資と施策が必要です。また、生産性の向上がもたらす利益は短期的なものだけでなく、長期的な視点で評価する必要がありますので、ご注意ください。

DXを促進できる

生産性を向上させることで、結果的にDX※を促進させるメリットがあります。

※DXとは、データ・デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、企業風土などを変革させることを指します。DX化とは、その結果変革を遂げた状態を指します。

生産性の向上とDXは、密接に関係しているからです。

どういうことかと言うと、そもそも生産性の向上には、業務プロセスの効率化や自動化が欠かせません。例えば、クラウドコンピューティング・人工知能・機械学習などの技術を活用することで、作業の自動化やデータ処理の高速化が可能になり、生産性が向上します。そして、このような取り組みは、DXの地盤を築いていることと同義です。生産性の向上を目指すと、それに連動して、必然的にDXが促進されます。

また、DXの促進はさらなる生産性の向上を期待でき、ビジネスの持続可能な成長を実現できます。生産性の向上とDXは相互に利益をもたらし、一方がもう一方を加速させる好循環を生み出すでしょう。

なおDXに関する詳細は以下の記事をご参考ください。
DXで業務効率化!作業時間削減などのメリット・導入手順・事例を解説

ポイントは?生産性をより一層向上させる方法

生産性をより一層向上させる方法は、主に以下の3つです。

  • 不要な業務はカットする
  • 人材の再配置や教育を実施する
  • 従業員のモチベーション管理を実施する

不要な業務はカットする

生産性をより一層向上させるには、業務内容を見直し、不要な部分をカットすることが重要です。不要な業務をカットすれば、本来取り組むべきコア業務に時間を注げます。

例えば、定期的に行われている会議に目を向けてみましょう。結論が出るまでにムダな時間がかかっていたり、本来出席する必要のない社員まで参加していたりすることがあります。会議のための資料作成にも、時間をかけている場合があるでしょう。もちろん、すべての会議がムダとは限りません。しかし、会議によっては時間短縮の工夫や資料作成の省略、参加者の厳選といった対策を取れることも多いです。

簡略化できる部分を見つけて不要な業務をカットすると、新サービスの企画立案や顧客に合わせた商談内容の検討など、コア業務に取り組む時間が生まれます。コア業務に取り組める時間が増えるほど、生産性の向上が期待できるでしょう。

不要な業務がどれかを自分で判断できない場合は、現場責任者に質問してみると良いでしょう。

人材の再配置や教育を実施する

人材の再配置や教育の実施も、生産性を向上させる方法として挙げられます。従業員1人1人の適性や保有スキルを確認しながら人材配置を適正化すると、業務を円滑に進めやすくなるからです。

例えば、営業職であれば、顧客に対して自社の商品・サービスを提案することが多いものです。相手の立場になってわかりやすい提案方法を考えたり、言葉を選んだりする必要があります。

その一方で、研究職であれば、技術的好奇心や創造性が求められるでしょう。新しい技術やツールに対する学習意欲が強く、ニーズに合った新しいアイデアを創出できる能力があると、より好ましいでしょう。

上記のように、業務によって求められる特徴、つまり人材は異なります。部署内に適性が低かったり指導が必要だったりするメンバーが多いと、余計な業務が増えたり教育指導に時間がかかったりするかもしれません。スキルの高いメンバーが業務のフォローや教育指導を行うと、コア業務に時間を割けなくなり、生産性が低下するかもしれません。従業員1人1人の業務を円滑にするために、人材の再配置や教育は重要と考えられます。

しかし、人材の再配置を行うと、従業員からの反発を招く可能性があります。変化に対する不安・新しい役割や環境への適応の難しさから、スムーズな同意は得にくいかもしれません。まずは、従業員が疑問や懸念を表明できる機会や場を用意し、それに対して誠実に回答することが重要です。しっかりとコミュニケーションを取ったうえで、話を進めると良いでしょう。

従業員のモチベーション管理を実施する

従業員のモチベーション管理の実施は、生産性を向上するうえで不可欠です。モチベーションは、生産性の高さに直結するからです。

モチベーションが高い従業員は、自ら目標に向かって積極的に行動したり業務に集中して取り組んだりします。仕事の質やスピードが向上するため、生産性も高くなるでしょう。一方、モチベーションが低いと仕事に対するやりがいを感じにくくなるため、仕事の質やスピードが下がります。場合によっては、部署全体の士気に悪影響を及ぼすかもしれません。このような理由から、生産性の向上には従業員のモチベーションを高く保つことが求められます。

モチベーションを上げるには、テレワークやフレックス制の導入がおすすめです。柔軟な働き方ができると、従業員はプライベートと仕事のバランスが取りやすくなります。充実した日々を送れる環境があれば、仕事に対するモチベーションが高まりやすくなるかもしれません。

また、適切な報酬や評価が得られるように人事評価制度を見直したり、コミュニケーションの機会を増やして社内の雰囲気を明るく保つことも有効です。企業の生産性をより一層高めるためにも、従業員のモチベーション管理を怠らないようにしましょう。

生産性向上を目指す際の注意点

生産性向上を目指す際の注意点として、主に以下の2つが挙げられます。

  • 過剰なマルチタスクは避ける
  • 導入したITツールが定着するようフォローする

過剰なマルチタスクは避ける

生産性向上を目指す際には、過剰なマルチタスクは避けてください。過剰なマルチタスクは従業員に大きなストレスがかかり、かえって生産性が下がるリスクがあるからです。

例えば業界によっては、以下のような業務を同時並行で行うことがあります。

  • 複数のアプリケーション開発
  • プロジェクトの進捗管理
  • プロジェクトメンバーのアサイン
  • メンバーの業務量の調整
  • メールやチャットの返信
  • 報告書や説明資料の作成

上記のようなマルチタスクが続くと、判断力が低下してミスを引き起こし、1つ1つの作業スピードが落ちるかもしれません。さらに、作業負担もかなり大きくなるため、肉体的な疲れや精神的なストレスを抱えやすくもなります。ケースによっては、生産性が下がるだけではなく、休職者が出るリスクもあるでしょう。最悪の場合だと、退職者が増加して人材不足に陥るおそれも考えられます。

このように過剰なマルチタスクは、かえって生産性を低下させる場合があります。取り入れる際には過剰になりすぎないよう十分に注意してください。

マルチタスクを防ぐコツとしては、業務に対して優先順位を付けるのがおすすめです。1日の始めにタスクリストを作成し、それらの優先順位を決定します。最も重要かつ緊急性の高いタスクから取り組むことで、効率的に業務を進めることができます。

ただし、ケースによっては同時進行をどうしても避けられないこともあるでしょう。可能な限り1つの業務に集中できるよう、周りが協力してあげることも必要かもしれません。これに関しては、現場責任者などと話し合い、方針を定めるのが良いでしょう。

導入したITツールが定着するようフォローする

生産性の向上を目的に導入したITツールは、社内で定着するまでフォローすることが重要です。優れたITツールを導入しても、定着しなければ生産性の向上にはつながりません

例えば、チーム間のコミュニケーションを改善するために、チャットツールを導入したとします。最初の頃はチャットツールの扱いがわからないため、使いこなせない従業員も多いでしょう。そのような状態を放っておくと、使うことを諦める従業員が増えてしまうかもしれません。気が付けば誰もチャットツールを使わなくなり、生産性の向上を期待できなくなるおそれがあります。

そのような事態を防ぐため、導入したITツールが効果的に活用されるように利用をサポートしたり、トレーニングを行ったりして、定着を促す必要があります。定期的にアンケートを取り、判明した課題や悩みを解決する研修やセミナーを実施するのが良いでしょう。

まとめ

ここまで業務効率化、生産性向上について解説してきました。 生産性向上は企業が持続可能な成長を遂げるために不可欠であり、業務効率化はその一環として位置づけられます。どちらも達成するには技術の導入・スキルアップ・作業環境の最適化など、多角的なアプローチが求められます。

ただし、生産性向上を目指す際には、短期的な成果に目を向けすぎず、従業員の過度な負担につながらないよう配慮することが重要です。長期的な視点を持ち、持続可能な方法で生産性を向上させることが求められます。業務の効率化および生産性の向上を目指している場合は、ぜひ当社にご相談ください。

残してきた実績

設立から48年。
大切なものにフォーカスしてきたからこその実績があります。
公共・民間ともに多数の実績を残してきました。

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