フォーカスノート
IoTのセキュリティ対策12選!ガイドラインや機器を守るべき理由も解説
目次
「IoTのセキュリティ対策って、具体的に何をすれば良いかわからない」
「そもそもIoTにセキュリティ対策は必要なのかな」
IoTの導入にあたり、上記のようにセキュリティ対策に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。IoTは、利便性の向上や業務の効率化などに役立てられている技術ですが、インターネットにつながっているためサイバー攻撃を受けるおそれが高まります。サイバー攻撃を受けると、機器の乗っ取りや情報の流出などの被害を受けるかもしれません。
サイバー攻撃を防ぐには、国が作成したIoTセキュリティ対策のガイドラインに則った対策などが必要です。例えば、IoTが攻撃されにくい環境を構築したり、攻撃を検知できるシステムを利用したりといったセキュリティ対策が求められます。
そこで本記事ではIoTのセキュリティ対策方法や対策を施すべき理由を解説します。IoTのセキュリティ対策でお悩みの方は、ぜひご参考ください。
ガイドラインに則った運用など!IoTのセキュリティ対策
IoTのセキュリティ対策として以下の12個の方法を解説します。
- セキュリティに強い環境を構築する
- 初期設定から必ず変更する
- パスワードを更新する
- ファームウェアのアップデートを定期的に行う
- アプリが求めた操作内容をよく確認する
- リモートアクセス時はVPNを使う
- デバイスの異常検知や不正アクセス対策が施されている製品を使う
- プログラム改ざん検知機能がある製品を使う
- セキュリティガイドラインに則った使い方を行う
- 使わない機器の電源は切る
- IoT機器を処分するときはデータを完全削除する
- サポートや問い合わせ窓口がない怪しいサービスの利用は控える
セキュリティに強い環境を構築する
IoTのセキュリティ対策を行う際、セキュリティに強い環境を構築しましょう。導入したIoT機器によっては、機器単体への後付けでのセキュリティ対策が難しいケースがあります。
まず、多くのIoTデバイスは、組み込みシステム上で動作しており、これらのシステムは限られた処理能力と記憶容量を持っています。そのため、強力なセキュリティソフトウェアを追加でインストールすることができないかもしれません。また、機器ごとに異なるオペレーティングシステムやプロトコルを使用していることもしばしばあり、この多様性により、一律のセキュリティ対策を適用することが難しくなる可能性があります。
このような事情から、IoT機器本体へのセキュリティ対策だけでなく周囲の環境、例えばネットワークやサーバーなどへのセキュリティ対策も必要です。
この対策には、ネットワークセグメンテーションがおすすめです。ネットワークセグメンテーションとは、ネットワークを複数のセグメント(区分)に分割することで、セキュリティを強化し、ネットワークの管理を効率化する技術や手法のことです。異なる種類のトラフィックやデバイスを別々のセグメントに隔離することで、権限のないアクセスを制限し、潜在的なセキュリティリスクを軽減できます。
ただし、導入するIoTシステムによって対策できる内容は異なります。IoTシステムとの相性なども考慮しながら、セキュリティに強い環境を構築しましょう。
初期設定から必ず変更する
初期設定から必ず変更することも、セキュリティ対策の1つです。初期設定のまま利用すると、セキュリティが脆弱でサイバー攻撃を受けやすくなるかもしれません。
IoT機器の中には、利用に必要なIDやパスワードが予め設定されているものもあります。初期設定のIDやパスワードは、簡易的で推測されやすい文字列になっているかもしれません。そのため、初期設定のまま利用していると不正アクセスされるリスクが高まります。
しかし設定を任意の値に変えることで、こうした不正アクセスのリスクを抑えられます。特に推測されにくい文字列のIDやパスワードであれば、よりサイバー攻撃のリスクを低減できるでしょう。
また、機能も初期の設定から変更することが大切です。複数の機能をもつ機器の場合、初期設定ではすべての機能を利用する状態になっていることがあります。本来は不要な機能を有効にしていると、その分通信頻度や稼働が増え、サイバー攻撃を受けやすくなるかもしれません。初期設定のまま利用するのではなく、必要な機能のみ利用するようにしましょう。
パスワードを更新する
IoTのセキュリティ対策の一貫として、パスワードを適宜更新しましょう。更新することでパスワードを推測されにくくできます。
長い間、同じパスワードを使用していると、IDとパスワードの組み合わせを総当たりされた場合に認証を突破され不正アクセスを受けるかもしれません。一度不正アクセスをされると、その後何度も不正アクセスされてしまうこともあり得るでしょう。
しかしパスワードを更新することで、このようなリスクを低減できます。万が一不正アクセスに利用された場合も、すぐに変更することで被害拡大を防げるでしょう。
パスワードを変更する際には、覚えるのが面倒だからとパスワードを使い回したり簡単な文字列に変更したりするのはリスクを高めるため、NGです。パスワードを使い回すと、IoT以外のサービスからパスワードが流出したときに危険です。
パスワードを変更する際には、英数字や記号を混ぜた複雑な文字列にすることをおすすめします。セキュリティのリスクを抑えるために、推測されにくいパスワードにしましょう。
推測されないようにするには、12文字以上の英数字や記号を無作為に混ぜたものがおすすめです。大文字・小文字・記号も混ぜ、推測されにくいパスワードを設定しましょう。
ファームウェアのアップデートを定期的に行う
ファームウェアのアップデートを定期的に行うことも、セキュリティ対策の有効な手段です。ファームウェアを最新の状態で保つことで、セキュリティ面の強化が期待できます。
ファームウェアとは、電子機器内に組み込まれたハードウェアを動かすためのソフトウェアのことです。ハードウェア内部にプログラムとして組み込まれています。
基本的にファームウェアはユーザーが任意でインストールやアンインストールできるものではありません。プログラムの書き換えなどもできず、製品のメーカーが提供するプログラムに基づき更新されます。
ファームウェアが旧い状態で利用していると、脅威に対して脆弱になりサイバー攻撃を受けやすくなるかもしれません。そのため、メーカーは定期的にアップデートしたファームウェアを提供し、製品の脆弱性を改善しています。ファームウェアのアップデート情報はメーカーから通知されるため、通知が入ったらアップデートするようにしましょう。
アプリが求めた操作内容をよく確認する
アプリが求めた操作内容をよく確認することも、セキュリティ対策として重要です。求められた操作内容が、実はサイバー攻撃によって改ざんされ表示されたものであるおそれがあります。
サイバー攻撃の代表的な手口として、Webサイトやアプリで特定の操作をしたことによってマルウェアに感染させる手法があります。正規のアプリのようにふるまい、ユーザーが特定の操作をするとマルウェアに感染して情報を抜き取られたり破壊されたりするかもしれません。
このような手口に陥らないためには、アプリの求める操作内容をよく確認することが大切です。サイバー攻撃が目的の操作であれば、本来なら必要のない操作を求められるでしょう。偽の警告を画面に表示して不正なアプリやソフトウェアをダウンロードさせようとするなどの手口が代表例です。
この際、本当に必要な操作かどうかの確認が欠かせません。求められるままに操作するのではなく、偽物の可能性を疑うよう日頃から心掛けましょう。自分で判断ができない場合は、安易に操作せず、警察や専門家に相談します。
リモートアクセス時はVPNを使う
リモートアクセス時はVPN※を使うことも、有効なセキュリティ対策の1つです。
※VPNとは限られたユーザーのみが利用できる仮想専用回線のことです。道路に例えると、誰でも使える共用の通信回線が一般的な公道、VPNはトンネル状にして隠された私道と言えます。
VPNを使うことで外部からの侵入リスクを低減できます。
リモートでIoTにアクセスする際、共用の通信回線を利用しているとサイバー攻撃を受けるリスクが高まります。通信しているデータや履歴を盗み見られる、書き換えられるおそれなどもあるでしょう。
しかしVPNを使った通信では、そのようなリスクを下げられます。VPNを利用するには、専用のIDやパスワードが必要だからです。さらに拠点間をつなぐ回線はトンネル状になっているため、通信内容を横から盗み見られる、改ざんされるなどのリスクも低減できます。
ただしVPNは通信速度が遅くなる可能性がある点に注意が必要です。通信速度の低下により、業務効率が落ちたり支障が出たりするおそれもあります。そのため、通信環境や通信するデータ量などを考慮したうえで導入しましょう。
デバイスの異常検知や不正アクセス対策が施されている製品を使う
IoTのセキュリティ対策として、デバイス異常検知や不正アクセス対策が施されている製品を使いましょう。あらかじめセキュリティ対策が施されている製品であれば、セキュリティを後付けする手間やコストを少なくできます。
IoT機器はシステムがパッケージ化されているものが多く、セキュリティ対策の変更ができないことがあります。例えば、IoTデバイスは特定の目的に特化して設計されているため、ユーザーによるセキュリティ設定の変更やカスタマイズの余地が限られているかもしれません。これは、セキュリティ機能の向上やカスタマイズが必要な場合に障壁となります。
しかし、機器そのものに以下のような対策が施されていれば、後からセキュリティ対策を追加する手間やコストを少なくできます。
- 不正アクセスの検知
- 多要素認証
- 機密データの暗号化
- 異常発生時にネットワークを自動遮断
サイバー攻撃のリスクも抑えるために、セキュリティ対策にかかる負担を軽減しながら、機器そのものにセキュリティ対策が施されている製品を選びましょう。
プログラム改ざん検知機能がある製品を使う
プログラム改ざん検知機能がある製品を使うことも、IoTのセキュリティ対策の1つです。製品がプログラムの改ざんを検知できれば、早い段階でサイバー攻撃へ対処できます。
プログラムの改ざん検知機能がない場合、改ざんされた後にサイバー攻撃を受けたことが発覚します。そのため、対応が遅れてしまい情報漏洩や乗っ取りなどの被害が大きくなるかもしれません。
プログラムの改ざん検知機能があれば、改ざんをいち早く検知し管理者へアラートを発することができます。これにより改ざんへ速やかに対処し、被害を最小限に抑えられるでしょう。また、システムで改ざんを検知できることで、IoTの管理にかかる手間も削減できます。
セキュリティガイドラインに則った使い方を行う
総務省が公表しているセキュリティガイドラインに則った使い方を実行することも、IoTのセキュリティ対策に欠かせません。セキュリティガイドラインとは、サイバー攻撃からIoTを守るために行うべきセキュリティ対策の指針や対策のポイントなどを示す標準ガイドです。
ガイドラインではセキュリティ対策を行う重要性を示すとともに、セキュリティ対策における指針として以下5つを掲げています。
指針 | 要点 |
指針1 IoTの性質を考慮した基本方針を定める | 要点1. 経営者がIoTセキュリティにコミットする |
指針2 IoTのリスクを認識 する | 要点3. 守るべきものを特定する |
指針3 守るべきものを守る設計を考える | 要点8. 個々でも全体でも守れる設計をする |
指針4 ネットワーク上での対策を考える | 要点13. 機器等がどのような状態かを把握し、記録する機能を設ける |
指針5 安全安心な状態を維持し、情報発信・共有を行う | 要点17. 出荷・リリース後も安全安心な状態を維持する |
参考元:総務省|IoT セキュリティガイドライン ver 1.0|12ページ目(2024年2月5日時点)
ガイドラインでは、段階ごとに要点を示して解説されています。対策の具体例なども記載されているため、どのような対策をすべきかがイメージしやすいでしょう。
また、資料内にはIoTをサイバー攻撃の脅威から守り、安全に利用するために必要なポイントが網羅されています。製品の開発者側と利用者側のどちらの立場であっても、ガイドラインに則った使い方を守りましょう。
使わない機器の電源は切る
使わないIoT機器の電源を切ることも、セキュリティ対策として挙げられます。電源を切ればシステムが停止するため、外部から操作されるリスクを低減できます。
電源が入った状態ではシステムが稼働、つまりはネットワークに接続されているため、不正アクセスをされるおそれがあります。しかし機器の電源が切られた状態だと、システムも停止しています。そのため、外部から操作しようとしてもシステムを動かすことができません。電源が入っていないためウイルス感染などのリスクも防げます。攻撃を受ける機会そのものを減らすことで、セキュリティ面でのリスク低減につながるでしょう。
導入時に機器のリストを作成しておくと、使っていない機器を探しやすくなります。機器の設置場所や使用状況を一覧表などで管理し、使わない機器をすぐに探せるようにしておきましょう。
IoT機器を処分するときはデータを完全削除する
IoT機器を処分するときには、データを完全に削除しましょう。完全に削除することで、処分時にデータが流出するリスクを下げられます。
IoT機器にデータが残った状態で処分すると、処分後に何らかの理由によりデータが流出するおそれがあります。例えば、第三者によって機器内に残っているデータを抜き取られるかもしれません。不燃物として廃棄処分する際にも、機器ごと持ち去られて悪用されるおそれもあるでしょう。
データを完全削除していれば、処分時にデータを抜き取られる心配がありません。データ消去用のソフトを利用したり、信頼できる業者を選んで廃棄することで、情報漏洩のリスクを低減できます。
データを完全削除する方法は、製品によって異なります。処分時には製品に合わせたデータの削除方法を確認して実行しましょう。わからない場合は、事業者に相談するのがおすすめです。
サポートや問い合わせ窓口がない怪しいサービスの利用は控える
サポートや問い合わせ窓口がないサービスの利用は控えることも、セキュリティ対策の1つです。サポートや問い合わせ窓口がない場合、何らかの不都合やトラブルが生じた際に適切な対処が行われないおそれがあります。
機器に脆弱性が見つかっても、ファームウェアのアップデートなどができず、脆弱性を抱えたままで利用しなければならないかもしれません。安全性が確保できない状態で利用すれば、サイバー攻撃を受けるリスクも高まるでしょう。
サポート体制が整っているサービスであれば、トラブル発生時にも適切に対応できます。不具合や脆弱性を改善するアップデートなども提供され、安全な状態での利用ができます。IoT導入時にはサポートや問い合わせ窓口の有無のほか、サポートがある場合はサポート内容を確認しましょう。
IoT機器(デバイス)などに対策を施すべき理由
IoT機器(デバイス)などにセキュリティ対策を施すべき理由には、以下の2つが挙げられます。
- 機器の制御権限が乗っ取られるかもしれないから
- 個人情報が流出するかもしれないから
機器の制御権限が乗っ取られるかもしれないから
IoT機器にセキュリティ対策を施すべき理由の1つが、機器の制御権限を乗っ取られるかもしれないからです。事実、以下のような事例があります。
利用中のルーターや防犯カメラ等を乗っ取られ
盗撮
ウイルス拡散
他の企業への攻撃の踏み台
に悪用されるといった被害が確認されています。
引用元:宮城県警察|IoT機器を狙った犯罪が多発!(2024年2月5日時点)
攻撃者は、セキュリティが不十分なIoTデバイスを標的にし、不正にアクセスして制御を奪います。これにより、デバイスの機能が悪用されるかもしれません。例えば、スマートロックが乗っ取られることにより、不法侵入のリスクが高まります。
この資料では、それだけでなく盗撮やウィルス拡散の事例もあったとのことです。例えば、プライバシーに関わる防犯カメラが乗っ取られると、映像が不正に閲覧されるおそれがあります。場合によっては、マルウェアやウイルスの配布点として使われるかもしれません。
狙われやすいIoT機器として、ルーター・防犯カメラ・センサーが挙げられていますが、これらを利用している方はセキュリティ対策を特に行うべきと言えます。
個人情報が流出するかもしれないから
個人情報が流出するかもしれないことも、IoT機器にセキュリティ対策が求められる理由です。IoT機器に個人情報の登録や保管をしていると、サイバー攻撃を受けた際に抜き取られるおそれがあります。
IoTは一般家庭やビジネスシーンなど、さまざまな場面で活用されています。一般家庭であればIoT機器に個人情報やクレジットカードを登録している場合もあるでしょう。これらの製品がサイバー攻撃を受けると、機器内に登録されている情報が流出してしまいます。
企業で利用しているIoTであれば、従業員や顧客の情報を管理しているシステムからの情報流出のリスクがあります。万が一、機密情報が流出すれば、ビジネスに大きな悪影響が生じるでしょう。こうしたリスクを回避するために、IoT機器のセキュリティ対策は必要です。
まとめ
IoT機器を安心して安全に利用するために、しっかりとセキュリティ対策を行いましょう。IoT機器はインターネットにつながっているため、サイバー攻撃を受けるリスクがあります。サイバー攻撃を防ぐには、さまざまな攻撃を想定したセキュリティ対策を施すことが大切です。
セキュリティ対策を行う際には、起こりうるリスクを想定し、対策の方針や内容をしっかりと検討することが大切です。セキュリティ対策にお悩みの方は、ぜひ当社へご相談ください。